日本は大きく変わらなければならない。
「診療報酬が10年ぶりにやっと上がった」「病院は大変な環境のなかで経営をしてきた、いままでは大変だっただろう」ということはまやかしだ。
実は公的病院はすでに税金による補助金を使い、病院を支援し続けてきた。
例えば、ある市立病院は20億円、また別の市立病院も4億円と、税金を投入して彼らの支援をしている(それでも赤字である)。したがって、赤字だろうがなんだろうが、実際に大きな資金援助を受けて成り立っている公的病院が大半である。
もちろん、日赤にしても厚生連にしても、済生会といった準公的病院も、社福も税金を払っていない。優遇がある。それ以外の民間病院は最悪だ。
民間病院は補助金があるわけでもなく、また黒字になれば税金を払う。赤字になれば自ら手当てしなければ資金調達はできない。
赤字が続けば要注意先になり、銀行が追加資金を出してくれなくなる。厚労省大臣は、「公的病院は、残す」…と発言し、民間病院の顰蹙(ひんしゅく)をかっている。
最近、社会医療法人になりたいという相談を地域一般病床から受けるが、機能や使命ではなく税金を払わなくてもよいからという理由が根底にある。追い詰められているのである。
それに対し、赤字の公的病院は明らかにやる気がないところが多い。どこかで心配しながら潰れないと、高を括っているのだろうか。
自治体病院は夕張や銚子、その他の事例があることはあるが、いままでは、なんとかやってこれたからだろう。
独立行政法人はそろそろ、自浄能力が問われる。準公的病院も、組織が赤字病院を切り離すと心配する事務長がいる。社福で売りにでたり、社会医療法人でも倒産する時代がくる。
しかし自治体病院の一部は、まだ改革に入れないでいる。ある市立病院からは、ホワイトボックス社は、病院の経営受託はしないのか、と問い合わせを受けた。「やはり病院はプロが運営しないと」とその病院の事務の幹部が話されていた。
確かにそうであろう。医師の給料が安く、そして他の職員の給与は比較的高い。トップにはオーナーシップがなく、戦略が明確になっていない病院も多いなかで、急に固定資産税課や水道局から転勤したスタッフでの経営は酷だ。
一部の公的病院のなかには、頭抜けたリーダーがいて、大きく改革を行い目覚ましい成果をあげたところもある。
しかし大半は、自分の懐を痛めるわけでもなく、責任を問われるわけでもないためか、結局のところ、身体を張って、病院を黒字にし、地域医療に貢献する、という気概をもったリーダーが少ないと思う。
結局は経営を変えていくのは、優れたリーダーである。公的病院であれ、民間病院であれ、マネジメントが解るリーダーと、高いスキルをもち合目的に動くスタッフの存在が必要だ。適切なマネジメントにより、医師をはじめすべてのスタッフは力を出し切れる。 ロジカルなマネジメントがなければならない。多くの医師やスタッフは戦略やマネジメントの欠如によりやる気をなくしている。
翻ってJALはどうか。リーダーシップや従業員のメンタリティはどうであったのか。
挑戦や葛藤はあったに違いない。しかし、過去の経緯から公的病院に見られる動態や文化に新しいことへの取り組みを阻まれていたのではないか。
JALは民間から招聘されたリーダーがトップに就任し、以前の幹部は大半が更迭された。そしてスタッフも一部は解雇される。組織に必要か、必要ではないのか、成果をあげる人かそうではないかによって峻別されることだろう。
すべての病院は、今回のJALのように、どこに経営上の問題や瑕疵(かし)があるのかについて吟味し、そして課題を発見し、果敢(かかん)に挑戦して解決をしていかなければならない。
全体を俯瞰し、課題を山積みにしたうえで、それらを整理し、一つ一つ解き解す(ときほぐす)ように行動していくことだ。
明確な戦略のものと、医療の質を上げ、生産性を向上させる。結果として効率はあがり、患者が集まる。DPC病院も、地域一般病床も、療養病床も、どのような業態であれ、マネジメントの強化が優先的に行われる必要がある。
JALも本来のマネジメントを、更生法適用の非上場企業として取り戻していくことになる。
「がんばれJAL!、がんばれ病院!」
朝早くの空港は、清々しく美しい。
黎明の時を迎えているからだ。
すべてが明るくなる、という確かな予兆が、心に広がり、とてもあたたかい…。