夕暮の景色は、なぜ心をなごませるのでしょうか。
郷愁という言葉で表すと少し陳腐になってしまう、心の状態をなかなか説明はできません。
何か暖かいものに包みこまれたときのような、不思議な気持ちになります。
夕暮は、しばらくすると夜を迎え入れる世界の入り口であり、予兆です。
昼間は自らの光でその輪郭を隠していた夕日は、そのころになると姿を現し、存在を明らかにする。
そして、命あるものが最後の瞬間光り輝くように、あたりにおしまれながら西の地平に、闇を吸い込みながら姿を消していく。
そうした様を思い浮かべながら、辺りに気を配り、電車にゆられていました。
夜は一日の終わりを告げ、「生きとし生ける物」に静寂と休息を促す自然の摂理。世界から力を奪い、気持ちを安らかにする。
「よる」=寄るとすれば「どこかへ向かう途中で、他の場所を訪れる。立ち寄る」ということだし、「あてにして頼る」ことでもある。
夜空を仰ぐと満天の星があり、「よる」が腑に落ちます。
また、闇夜を味方に、自分の体を「ある物にもたせかける」という、「よる」もあります。それはやはり安心と安らぎ、信頼と自分を見直す時空…。
夜があることで、身体を休め、命をあらい、そして夜があることで新しい時を迎え、新しい活動をはじめることが、できます。
ゆうぐれは/よるを/しずかに/むかえるための/あたたかな/はじまりのあいず/なのだなぁ