よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

本当にDPCの存在意義を知っているか(1)

 DPC病院が50万床になんなんとする日本の医療業界において、テクニカルな意味でのDPCを理解している人は50%もいないのではないかと思います。

 勿論、報酬請求の手法であることには間違いがなく、しかし、それは医療の在り方を変える制度であることにも疑いの余地はありません。

 そもそもDRGがアメリカでスタートして、全世界にその派生システムをもふくめ、それらが伝播したのには意味があります。医療費を削減したいという政策が基本にあります。

 しかし、さらにその根底にあるのは業務改革です。人間が楽なほうに動く慣性をもっているように、病院の運営は、良心を隠れ蓑にして、放漫経営が行われていたきらいがあります。放漫経営という経営を意識して経営する病院は、ありません。結果として、放漫だろう、という経営です。


 多くの医療従事者が一般の企業とは異なるのだから、経営経営というのはおかしいという話をよくしますが、これはナンセンスです。

 研ぎ澄まされたスキルを身につけ、そして合理的なシステムを導入し、それらをきちっと運営していけば、よい医療を行うと同時に合理的な医療を行うことが可能だからです。

 二律背反の存在ではなく、同じベクトルで方向を決定することができる質の向上と生産性向上。すなわちDPCを表現するためによく使われる「高密度で質の高い合理的な医療」は同時に達成することできることを理解しなければなりません。

 経営資源一定のうえで成果を増加させれること、それが単位あたり生産性向上であり、質の高い人はアウトプットも多い。したがってアウトプット単位のコストは低減する。これが必要です。冗費を排除することは当たり前として、こうした個人個人が力をつけ質をあげたうえで結果として生産性をあげ効率をあげるということに注目しなければならないのです。

 DPCは、診療活動が円滑、かつ合理的に、また論理的瑕疵なしに実行されるよう誘導するツールです。検査は入院前に行い、入院したらただちに手術。ミスのないパスにのっとった治療を行い、パス日通りに治療される。リスクマネジメントや感染症対策、そして場合によれば急性期のNSTが適格に実施され成果をあげる。

 同時にディスチャージプランニング(退院支援計画)が病棟で立案、関係者のカンファレンスを通じて円滑な退院が促される。そこには継続看護をベースとしたリエゾンナースが全体を取り仕切り病棟の医師、看護師、そしてMSWさんとのカンファがうまく行われ、成果をあげていきます(続く)。