伝統と進化
新宿の高層ビルにある老舗店で日本料理をいただき、洗練されたしかし、伝統を引き継いだ日本の美しい料理に舌鼓を打ちました。窓から新宿の夜景が目に入ります。
私は新宿で生まれ育っているので、新宿の変化を小さい時から見てきています。新宿は、歴史を残しながら守るものは守り、しかし目覚ましい勢いで進化するもの進化はさせてきています。
JRの路線拡張や駅舎の再開発、さらには近隣の高層ビルや商業施設等の大きな発展、公共事業による街の整備、さまざまな視点からみても、私が生まれた数十年前とはもちろん大きく異なっています。都会の進化をここで語るつもりはありませんが、この街だけではなく、多くの街で同じながれを見ることができます。
高齢者が増加し、出生率が下がることで人口が減少するという今の日本を後目(しりめ)に、留まるところを知らない進化が日々繰り返されているのです。工夫と創造、進歩と成果、そんなキーワードが窓に映し出され溢れだしてくるイメージがあります。
ときどき今の日本に気が滅入ることがありますが、こんな活気を目の当りにすると、少し気分が楽になります。良いものを守りつつ新しいものをつくりだしていく。そうした意識をすべての者が持ちつつ生きていくことが必要なのだと感じます。
「日本人が昔持っていた心が失われた」と、お会いする経営者の方々からお聴きすることがよくあります。時代の変化とともに、確かに日本人の意識は変わり始めているのかもしれません。
しかし、環境の変化とともに人の思考や行動が変わるのは当然のこと。ある目的の達成に取り組む社会人としてや組織人としての思いや、もっといえば生き方への影響を与え続け、どのような時代であっても人として最善をつくせるようその時々での動機を喚起するのは経営者の役割です。
「日本人が昔持っていた思い」ではなく、よい文化は残しつつ、今の組織に必要な「新しい時代にあった思い」を、従業員が持てる持てないはマネジメント次第だと考えるのです。
- 夢のあるビジョンや、
- 明確な戦略、
- 個人の役割の明確化、
- 彼らを支援する仕組みづくり
等々について時代に合わせたマネジメントをしっかり行うことが必要です。
日本人の伝統を背景に時代は常に進化しても、「前に向いて進む」人の意識は変わるものではありません。守るものは守る、しかし変わっていくものを支え、そのうえで価値創造を続けなければなりません。
これからも、「伝統と進化」を意識したマネジメントについてしっかり考えていこう、夜景の向こうにあるものを見据えながらそう整理することができました。