よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

人が創り出す美しさ

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日本にはどこにでも山があり川があり、木々が無秩序に又は整然と生え草花が群生しています。自然の創り出す造形美には目を見張るものがあります。自然は美しいですね。

人はその景色をみて心を動かします。それは、遺伝子レベルで身体すべてが受ける感動といってもよいでしょう。その思いを人は綺麗であるとか、美しいという言葉に置き換えて表現します。ほとんどの山河は意図されず造られていて自由で奔放です。

しかし、人のつくった造形物のなかには明らかに一定の意図をもち秩序立てて、人に美しさを感じさせようとする試みがあります。色具合や形状から作者の思いが伝わってきます。

また、表立った人工的な美しさはないけれど、自然との調和をつくりだす意図をもちながらも、できるだけ人の手を意識させないで目的を果たそうとする物もあります。

新宿のビルやホテルが立ち並ぶ、レストランの前にあるモニュメントは、機能的には何の意味を持ちませんが、よくみると統制された美しさのなかに、はっきりと店のコンセプトを明らかにしようという設計者の思いが見え隠れしていました。

普段道を行きかう人や店を利用する人々が気がつこうが気がつくまいが、まったく構わないといった落ち着きをもって、しかし確実に店への誘導や、その店が客の目的を達成するに足る場所であることを主張していました。

その精緻なデザインには目を見張ります。小豆色の石が普段みかける石に挟まれていることで、清潔さやが規律が示されているし、安定と安心が物語られています。それは店の軒まで伸びて店の壁と一体となり、建物自体をその思想により統制しているようでした。

一見不必要なこのモニュメントが実は店の哲学であり、店の環境であり、また空間であることを教えてくれています。

無機質なビル街にありながら、木々の緑の横にひっそりと客を待つ、くつろげるけれども刺激のあるレストランとしてのけじめをつけているのが分りました。

そしてもうひとつ、店の前から広がる緑の淵には、自然に見せかけながら一定の規律のなかで、人工的な美しさを露出する木々の根本を覆う輪が並んでいます。横にはビルにつながる川に模した流れや、池を模った構築物があり、そこにつながる水路を水が静かにながれていました。

このエリアをつくりあげた誰かが、これは私がつくった統制され、姿勢を正している物だけれど、この路にフィットする意図された「自然」なんですよ、と伝えているようでした。

人が歩いているとき、人工でありながらもいつでも自然らしさを感じ続けられる、工夫された造形美がここに存在しているのです。

さて、人は誰でも意思をもち何かを成し遂げようと活動しています。

人に気付かれようと気が付かれまいと、自分の能力を最大に発揮し、価値のある何かをつくりあげようと努力しているのです。こうしてみると、ありとあらゆるところで人が成果を上げている場面に遭遇します。

大がかりな仕掛けのときもあるし、そうでもないときもあります。しかし、どこにでも気付くと人の命が息づいているのだなあと感じられ、とても心が温かくなった時間でした。

私も、こんなに目立たないとしても思いを持ち、有形、無形の成果を挙げて毎日生きていることを実感できるよう、日々精進していきたいと思ったのでした。