よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医療はどこに辿りつくのか(1)

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 医療が抱える問題は多様です。しかし、その根底にある問題は、人をどう活かすのかというところにあります。医療は知的労働集約的産業であり、関与する人により成果が決定されるという側面を強くもっているからです。

 どのような業態の病院であれ、医療の本質は人間の全的治療です。もちろん生きることへの意味と執着をもったクライアントを鼓舞し勇気づけ、自己治癒力を引き出すことをも含めていることは疑いの余地はありません。生きることの意味を教えられない医療は、本来もつ機能を果たしていないと、私は思います。

 医療及び看護、医療周辺行為は人間の最後の砦であり、希望です。医療従事者は常にそのことを意識して自らを律しているのか。ときどきそう思います。医療の現場にいると、本当に彼らのスキルや献身に頭が下がります。尊敬の念を抱きます。人間と神の間にある存在であることは十分にわかります。

 しかし、だからといってその役割を強要することはできません。彼らにも人生があり、生活があり、悩みがあり、自分があり、人として生きていかなければならない現実があります。医師を神聖視するのではなく、しかし、尊重し、大切にする必要があります。看護師や他の職種の方々に対してもそうした意識をもっています。

 これは医療だけではなく、人を大切にした、活かす体系的なマネジメントができなければその組織は崩壊します。今の医療はそうした現状にあるのではないか。これが仮説です。マネジメントがうまくできなければ、人は属性で動きます。それぞれの考えや価値観で活動するのは当たり前のことです。

 うまくいくこともあり、うまくいかないこともあるというのではマネジメントではありません。どのような人、どのような価値観をもった個人であっても、組織の思想や理念のなかでベクトルを合わせ、組織そのものの価値が個人の価値を内包してさらに輝きを増すようなマネジメントが行われる必要があるのです。

 ここに思いをもてない病院経営者、そして幹部がいるために病院経営にあらゆるところでほころびがでています。本来の機能を地域に提供することができず、医療そのものの価値を落としめています。

 医療は財政の基盤をベースに成り立っています。資本主義社会のなかの社会福祉についてきちっと議論もできていません。病院経営の巧拙により医療が成り立たなくなります。地域に必要な医療を、人を最大限活かし、医療の質をあげ、生産性を向上させ、質を担保しつつ合理的に行う仕組みができていなければ、ながく地域に残ることはできません。

 日本人の属性や、人口動態、そして大きく政治に起因する経済不況を前提として、医療は原点に回帰しなければなりません。いま、何をするのか、どこに行くのか、真剣に各医療機関が自らの思想と創造性もって、動きださなければならないのです。

 この考えをとる誰でもいい。どこにいても、どのような仕事をしていても、思いのある医療従事者が覚醒し、所属する組織のあり方を一から見直し、そしてトップに諌言する。良心に従い、多くの医療従事者が覚悟しなければならならない時期がきたと考えています。私たちホワイトボックスはそのサポートをさせていただきます。