よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

各部門が機能を果たすということ

 以前から話をしているが、病院は不思議なところで、各部署があるべき機能を果たしているのかについて、誰もオーディットをしていない。部分的には看護記録やリスクマネジメント、感染対策など質の評価をしているが、どちらかというと現場からつみあげていく帰納法的なアプローチであるといってもよい。

 その理由として職務分掌はあるものの、職務基準がないことが指摘できる。職務基準をもって各部署にはどのような課業があるのか、そしてそれは誰により実行されているのかを評価測定しなければならないと考える。一般基準からのいわゆる演繹法的な評価が行われる必要がある。

 職能等級制度における体系を整備していると必然的に人事考課制度にたどりつくが、そこでは情意考課や、業績考課、そして能力考課を行う必要がでてくる。能力考課は、職務基準をベースに考課を行うものであり、人事考課を行うときには不可欠のものである。

 そもそも大半の病院では人事考課制度が未整備であり、医療を科学的に行っているものの、人事についてはあいまいなかたちで管理される傾向がある。これは個人別のスキルに関する課題を発見する機会を失うものであり問題である。

 意外とチームではさまざまな活動を行うものの(もちろん、集合教育や上司の属性による職場内教育は行われているものの)各部署において整備された明確な評価基準と比較して評価した個人のスキルにかかわる課題に合わせて教育するといったシステムを持ち合わせていないという事実がある。

 看護部のラダーは職位別につくられているが、どちらかというと大まかな取組やマネジメントをベースとして管理されている。

(例)チーム医療においてリーダーシップを発揮し、役割モデルとなることができる[研修目標レベルⅣ]

 その欠陥を補うため、最近は病院により、従来からあるラダーを基礎として、被せるように職務基準を扱い、ラダーの各事項と職務基準の課業に対し、到達基準を定めつつ教育を行おうとしているところもでてきたが、とてもレアーなケースである。

 私の訪問先に人事考課制度を整備する前提として職務基準を整備している病院が複数あるが、まだまだ広がりを見せていない。各業態の病院は、医療制度改革のなかで、解決しなければならない、それぞれのさまざまな課題をもち、懸命に成果をあげようとしている。

 しかし、だからこそ職員一人一人に注目し、彼らの現状における技術技能を評価する。そして課題があれば教育につなげ、やりがいとプライドをもって仕事に就くことができる一騎当千の医療人をつくりあげていく必要がある。

 職務基準をつくりあげる意味がここにある。

 職員の科学的評価、そして教育の機会の提供、人材の育成、部署の機能を果たす、といったながれをつくりあげていくことで、それぞれの部署が必要十分な業務を行い成果をあげることができるようになる。

 これこそがいま、求められている病院そのものの役割を地域で果たすために必要な基本的事項であると
考えている。