よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院マネジメントのシステム化

 需要があるから供給がある。供給があるから需要が生まれる。厚労省は後者に医療を当てはめている。ベッド削減を行う政策の根拠である。

 実際急性期ベッドの質をさらに高め、ベッド数を削減することは可能だとしても、回復期や維持期の患者さんは増加する傾向にある。急性期病床を削減し、回復期や在宅医療を増加させようとする方向は概念的には間違っていない。

 ただ、そのプロセスでは多くの病院が自助的に転換を図らなければならない。どこに進むのかは各病院の戦略に帰責される。自助努力で自分たちの思う医療をつくだしてくれ。というのが厚労省の政策だと考えている。

 であれば、大学からの医師の派遣や、医師の配分、さらには医師数を需要に合わせて一定の方向で誘導していくことが必要だ。看護師についても同様である。マーケットに合わせた医療従事者の育成を、マクロで行う政策が必要だと考える。積極的な診療科別医師育成計画や、配置計画について明確な政策を出さなければならない。
 
 自由経済であるとはいえ、公的病院と民間病院は当初からハンディのところでギャップがある。公的病院は驚くような収益構造により税金でキャッシュを補てんしている。地域住民のためであるといいながら公務員として、毎年10億円も、20億円も資金を補てんし経営を成り立たせている公的病院が多いのはどういうことか。もちろん、民間病院であっても銀行がいわゆるリスケを受ける、債務免除を行う、場合によっては医療福祉機構が莫大な貸付を回収できていない、といった病院も増加してきている。これも税金から支出されているとすれば、民間病院の一部も同様の状態になっている。

 医療政策に大きな問題があることは間違いがない。

 ただ、現場にいると当たり前のマネジメントができていないため、医師やスタッフがうまく生かされえていないケースも散見される。理事長や院長のマネジメント能力が問われるところである。邪魔をしないという理事長や院長もいるが、明らかに私利私欲に走る理事長や、マネジメントを放棄している院長がいる。こうした病院は不幸である。ヴィジョンも提示されない。戦略も場当たり的、仕組みが整備されていなくても解決できない、といった事務長を含むトップマネジメントがいる病院は不幸だ。

 公的病院、民間病院問わず、医療従事者の力を引出し、成果を上げ続けている病院も数多くあるのも事実であり、そうではない病院は厚労省の政策ミスや国民の医療に対する意識に問題を自院の業績悪化の原因とせず、マネジメントのフレームワークをつくりあげていくよう努力しなければならないと思う。

 目標をつくる→支援する→目標を達成する→次の目標をつくる→支援する→目標を達成するといった活動を組織及び個人レベルで継続し、成果を上げ続けていくことが求められている。そのためのヴィジョン、戦略、事業計画、教育、組織改革、制度構築が必要となる。

 病院トップは、病院マネジメントに目を向けなければならない。組織全体の戦略実行、病院固有の業態に合わせた政策実施、部門の機能を果たす、各部署の機能明確化及び課題強化がシステマチカルに行われる必要がある。