この1ヶ月、複数の銀行でのセミナーや勉強会、他の機関とのコラボによるセミナー、保健・医療・福祉サービス研究会のセミナーと立て続けにセミナーや勉強会がありました。それらについてなかなかご報告することができませんでした。
先日、札幌で製薬卸会社であるモロオのセミナーを行ったことをご報告します。
このセミナーは、「医療の質向上による増患」というタイトルでした。
医療業界に警鐘を鳴らす思いで渾身の力を振り絞り伝えていきたい内容をもっています。すなわち、コンテンツとして、
・経済環境が悪化し医療福祉にコストをかけられない
・消費税は大きなコストアップ要因
・受療率は低減し、利用率は下がっている
・益々人口が減少する
・急性期、慢性期、介護期への機能分化と在院日数短
縮で、病院病床は削減される
・特徴づくりと連携ができなければ病院を維持できない
・医療の質の向上のための活動が必要
・マネジメントは、4つの領域、3つのシステムに留意
・自院をもっと知ってもらわなければ増患はできない
をテーマにあげたものとなっています。
結局のところ、医療は知的労働集約的産業であり、エビデンスに基づき科学として行われる医療ではありますが、現場では医師が自らの能力をもって、診察し、診断し、治療を行うというながれのなかで全体が形成されています。
プロセスにおいてはコメディカルの貢献があり、もちろん看護が重要な役割を果たし、そして全体が円滑に機能するよう事務部門が支援をしていく。
医療はまさに専門知識をもった医師を軸として、チーム医療が行われ、だれが欠けてもあるべき成果をあげられないことはいうまでもありません。
いま、一人ひとりの医療人が地域医療を死守するという到達点を共有し、それぞれの役割を果たすとともに、全体として最適化が図られるよう行動しなければ満足する成果をあげることができません。震災のときに、だれが指示をしなくても、現場の医療ニーズを皆が肌で感じ、体感し、危急の解決すべき課題としてとらえ、協力し合って動いたという事実を忘れてはなりません。
検査もできない写真もできないなか身体一つで現場に出て、見ず知らずの医師や看護師が、そして薬剤師たちが同じ目的のために協力し合ったことが医療の原点です。
経営手法とか、マネジメントシステムといったものを凌駕して医療従事者が一体となった瞬間だと思います。人間の良心の発露としての行動には、誰もが感動し、感謝したのではないでしょうか。なぜ、地元の病院に戻るとそれができないのか。
寝食を忘れて活動したのは期間が限られているからでしょうか。自らの役割を決め、医師やスタッフが使命感に燃えて活動したのは短い時間とわかっていたからでしょうか。
私はそうではないと思います。
「私がやらなければだれがやるのか」という、心底にある医療人の使命感やプライドがそれをさせたのだと思うのです。
日本は、震災を受ける前から、また原発問題が発生する前から、危機的な財政状態になってきたことに鑑みれば、いま各医療機関で医師やスタッフが一丸となり組織一体となって活動しなければ、地域での役割を果たす機会がなくなる可能性があることに気が付く必要があります。
震災復興を迅速に行うことはもちろん大切なことではあり徹底して政策を実行に移していくことが求められますが、自院のある地域医療を守ることに大きな意味や意義があることを忘れてはなりません。
医療の質を上げ、その内容を院内外に開示し、実患者数を増患する。
これが最も重要な戦略であると考えています。
リスクマネジメントやパス運用において発生した業務改革事項をすべてマニュアルに記載して教育をする。それを評価し、さらに詳細な教育に結実させてこそ、全職員のスキルを底上げし、仕組みを自助的に見直し、成果をあげることができるのだと思います。
医療の質向上、そしてプロモーション。それが実患者数増につなげる基本的行動です。利益は患者さんの評価の証ということもできます。医療と財政のバランスをとりながら評価される病院となることが求められています。セミナーでは、そんな思いをもって話をさせていただきました。
なお、セミナーはスキルインフォメーションズの杉本社長が来場したなか、松本氏によるマニュアル及びリスクマネジメントソフトのプレゼンテーションが同時に行われました。
いずれにしても、今(この数年間)しか時間が残されていないこともも事実。あっというまに時間が経過します。全国で懸命な病院改革が行われなければならない所以(ゆえん)です。