よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

利益は顧客評価の証

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先日、中間管理職研修で初歩の財務会計についてのレクチャーを行いました。以下、内容の一部をご紹介します。

 

企業は永久に継続することを前提として(ゴーイングコンサーンといいます)会計を行います。中世の大航海時代には会計は財政状態だけをみており、一航海一会計が行われていました。事業開始時と清算時の(後述する)貸借対照表の比較により増えた資本の差を利益としていました。東インド会社が設立され株主が生まれ、一定期間の間に成果を知らしめるという観点から、一年間の会計を行うことを決めてその間の経営成績をみようということになりました。

 

費用をいくらかけて、いくらの収益を得たのか、結果として利益はいくら出たのかを経営成績は損益計算書により表示します。損益計算書は、収益と費用を表示し、利益を算出するための書類です。収益―費用=利益ということなので、収益は何か、費用は何かを表したものです。

 

各人の家計と比較すると、家計では現預金の裏付けのある取引しか行われないことを除き企業の会計とほとんど内容が変わらないことに気が付きます

 

家計では、労働の対価として給与や賞与をもらい、また資金運用から得られた収益があります。それから食費や教育費、被服費、光熱費、電話代、交際費といったコストが続きます。これらに支出をしたのち、最後にどれだけの損がでたのか、利益がでたか(現預金キャッシュが貯まったのか)を確認している筈です。企業においても同様の確認を毎月行います。

 

さて、損益計算書と一緒につくられる表に貸借対照表があります。貸借対照表は、貸借が対象的に示されている表です。借方(左側)に資産、そして貸方(右側)に負債と資本を表示します。

 

家計で考えると、借方には現金預金、株式や固定資産、あるいは生命保険などの権利といったものが並びます。貸方には借入など負債が並び、その差額がネットの財産です。プラスになっていると財産があり、マイナスであれば債務があるというのは分かりますよね。

 

企業もほぼ同じです。簡単にいうと出資して会社を設立した後できるだけ借入を少なくして事業を行い、資産をもち、差額(純資産)をどれだけ増やすのかを考えることになります。

 

簿記会計においては複式簿記というルールにより仕訳が行われ、損益計算から得られた利益と貸借対照表から計算される利益は自動的に一致しますが、この部分については専門的な話になるので、興味がある人は勉強をしていただければと思います。

 

現場での自部署のミッションを達成することと、そしてその結果が企業全体の求めている成果につながることを管理します。

 

どのような行動をすれば収益が挙がるのか費用を削減できるのか、結果として利益を出せるのかを常に考え行動しなければなりません。その状況を確認するものが損益計算書であり、貸借対照表であるということを忘れてはなりません。

 

正確にいうと貸借対照表は期末日現在の財政状況を示す書類であり、資産(運用)=負債+資本(当期の利益を含む)(調達)での表示が行われます。その期首の資産を使い経営を行った結果、一年間の経営成績を表す損益計算書が収益ー費用=利益をもって作成される書類です。

 

なお、利益が出ていても債権が回収できない、在庫が増えた、債務を払うことにより現預金が少なるなど、利益と現預金の増加は一致しません。期首と期末を比較して現預金が増減している理由を理解することも重要ですね。現預金の増減を営業、投資、財務の3つのキャッシュフローにより表現するで把握します。

 

貸借対照表と損益計算書とキャッシュフロー計算書を合わせた書類を財務諸表といいます。

 

管理職の方々は日々の業務がどのように処理され、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)、そしてキャッシュフロー計算書(C/F)につながっているのかについて会計を理解できるようになる必要があります。

 

いずれにしても「利益は顧客評価の証」です。利益が出ない事業は継続できません。社会貢献を以て利益を最大化するために、組織はそして自分は何をしなければならないのかを、収益や費用、そしてキャッシュフローをメルクマールとして、比較優位性を考え、的確に行動する必要があります。