よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

事業計画立案は打ち出の小槌

 病院の戦略立案のためには、理事長や院長をはじめ多くの医師との面談を基礎として、返済金額を捻出するためのキャッシュフローを得るための税引き後利益、税引き後利益を得るための当期利益、当期利益を得るためのPVC分析からの医業収益。

 そして医業収益を科別、外来、病棟別に分類し、それぞれのディパートメントにおける単価×患者数に分解することで、基礎的な事業計画が立案されます。

 単価は各部署、病院全体、各科別戦略と不可分であり、ここに具体的な加算や診療行為点数ごとに分析が行われ、どのような患者をどれだけ増やせば現状を基礎として見積もれる予算をクリヤーできるのかが決定されます。

 患者数においては単価との見合い、病院の病床稼働率や在院日数から誘導された述べ患者数のなかでのポートフォリオが決定され、そこでの科別患者数の予測が行われることになります。

 単純な事業計画=利益計画ではなく、具体的な活動や過去実績、自院のポジション、医師のパフォーマンスを考慮して実体をつくりあげていきます。必要なキャッシュフローからすべてが予想され、計画され、行動に結び付けられるなかで事業計画が立案されます。

 自院の各科別戦略に強みや特徴がある病院であればこうしたフローが容易につくりあげられるし、そうではなくてもメインの診療科が決定していればあるていどの計画を立案することが可能です。

 しかし、ベタでぎりぎりの医師数や看護師数で病院が運営されていて、患者数により医業収益が影響を受けるような場合には、事業計画=利益計画的な意味合いなりがちです。

 ここで、さらに医師の招へいや、いまいる医師のなかで新しい活動を始めることが可能であれば、次のステップに進めることができますが、そうではなければ、医療の形態を最適なかたちに変えていくことが必要なケースがあります。

 病床再編や病床閉鎖、業態転換といったなかで急性期から慢性期、あるいは介護期の医療への転換が行われることになります。

 事業計画を立案する行為やプロセスは、自院の現状を知る機会であるとともに、自院の将来や医療の在り方を熟考するチャンスでもあります。

 今後医療制度改革がどのような方向に進んでいるのか、どのような経済環境になるのか、受療率低減や消費税問題を抱え、医療を現状のまま継続することができるのかできないのかということを十分に議論する場でもあるわけです。

 もちろん、財務会計だけではなく管理会計の確立による指標管理や部門別損益計算、さらにはキャッシュフローマネジメントといったかたちをとれる病院であれば、より詳細な分析ができるようになります。
これらのシステムがあるのかないのか、機能しているのかしていないのかを知る場面でもあるということがいえます。

 事業計画を立案し、運営していく。決めたことは必ず実行するという精神性の醸成を行うための道具としても最適であり、医師やスタッフの他の活動へも大きく影響を与えるものとなるという思いがあります。
 事業計画を立案すると決めれば、あらゆることに着手せざるを得なくなり、大きく経営改革が進むという結果を享受することができる、ということを経営者は知っておく必要がありそうです。