よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

日本の現状とこれからの医療

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 理事長からのご依頼で、夕方からコンサルで訪問している病院の医局で医師に対するセミナーを行いました。

 十数人の医師が、経済環境や厚労省の考え方、そして自院の役割をしっかりと認識し、ヴィジョンをもって日々の業務に就いてもらえればというのが理事長の思い。

 「日本の現状と病院のこれから」という資料を作成しました。

 日本が置かれている現状は、
(1)政治が混迷している
(2)内需が拡大しない(経済疲弊)
(3)GDPが拡大しない
(4)国力は低下している
(5)債務超過国への道を邁進している
(6)経済破綻はあと5年程度といわれている
(7)増加する医療費の伸び率を抑制される
(8)高齢者社会を迎えてはいるが、高齢者の増加は2025年で勢いをなくし2035年前後からは高
   齢者すら減り始めていく
(9)介護給付が増加し介護の未来は危うい

 これらを落とし込み資料を作成しながらなんとかしなければという思いがつのりました。

 現在、日本のGDP比政府債務は世界で群を抜いて高く200%を超えています。すなわち、国内総生産の2倍の借金があるということです。これは、純粋にキャッシュの観点からいうと返済不能です。

 現在ですら歳入が40兆円で、歳出が90数兆円です。基礎的財政収支対象経費といわれる国の国債関係のコストを除くと70兆円が国に必要なコスト。70兆の税収があれば、国債の金利だけを支払い元本を増やさなくてもよいとします。
 しかし、過去税収が最大であった平成2年、3年のバブルのときであっても税収が60兆円であったわけで、この金額を生み出すのは相当大変なことは間違いがありません。というか無理です。

 で、資料をつくっているなかで、太平洋戦争の前、世界中が不況のとき、日本はGDP比200%の政府債務だった時期があったことを知りました。
 戦争があり日本の政府債務は帳消しになり、それから先達が必至になって這い上がり、世界に誇れる国をつくったわけです。
 今回仮に、国債は返せません。デフォルトします、といって日本が壊れたときに、国をつくる若者や当時存在した不屈の精神をもった人間がいないため、絶対に経済は回復しないといわれています。
 
 そもそもバブルの後、経済が成長しきれない失われた20年があったのに、これから急に何の根拠もなくV字回復があるはずもありません。

 日本はいずれ財政破たんは免れないものの、なんとか、軟着陸できないものか。

 移民政策、遅ればせながらの少子化対策、内需拡大、小さな政府を目指した活動。さらには今の内から緊縮財政をあらゆるところで打ち立てる。といった政策がとられる必要があるかもしれません。

 ただ、さらに発見した新聞記事には、次のように書いてあります。
 
 総合国力の低下と少子化の悪循環
 人口減少→経済規模の縮小→総合国力の低下→将来不安→雇用不安・女性の就業不安・長時間労働→さらなる少子化→人口減少…

 まったなしの状況であると考えています。

 まずはそれぞれが懸命に生きること、そして
(1)当院をあるべき医療ができる病院としていく
(2)地域医療のモデルをつくり易い環境であり、このチャンスを逃す手はない
(3)医師も他のスタッフも、当院の改革を通じて自らも時代を超えるスキルを身に付ける
(4)2015年の不況、2017年に予想される大不況に備え、病院を利益体質として地域貢献できる
   場を確保
(5)多様な組織をつくり、経済破綻に対する準備を始める
(6)医局及び一人ひとりの医師の多大な協力なしに、時代を乗り越えることはできない
という結論をお話しました。

 院長が最期に、話されました。私の息子はシンガポールで金融をしているが、本日のレクチャーと同じことを話していた。医療と経済は不可分である。皆さんも、日経を読むか本を買って勉強してほしい。大変な時期に、これから懸命にこの病院で頑張っていこうとまとめていただきました。

 以前、高橋泰先生が医療のリスクは次の3つと説明されました。
(1)経済リスク
(2)地震リスク
(3)制度リスク

 医療は、他の要因により影響を受ける。そしてもっとも重要な(1)は着実にそこまでやってきています。

 経営幹部は、足元を固め、日々医療の質向上にどうはげむのか、そしてどのように多くの患者さんに来院していただき、業態により期間は異なるものの、早期に退院していただくのかについて徹底的に議論、し、行動しなければならない時期が到来したと考えています。
 過去にない努力が必要となります。時間がありません。