よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院管理会計がなければ病院は残れない

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 管理会計とは財務会計と遂になって説明される会計の区分です。財務会計が報告のための会計であるのに対し、管理会計は文字通り管理のための会計です。

 管理とは、予算実績管理であったり、その前提となる減じ決算であたたり、さらには部門別損益計算、診療科別損益計算、患者別疾病別原価計算、そして広く云えば指標管理や制度の埒外にて行われる投資意思決定のための特殊原価調査なども管理会計の一部になります。

 これら管理会計を駆使して病院の現状を明らかにして将来を考えることが必要です。現状がうまく可視化できないとき、また分析できないときに行動を起こすことはできませんし、また問題解決を行うことはできません。そもそも何が問題であるのかわからないのですから解決のしようがないということになります。もちろん現象面として困っていることがあったとしても、その原因が分からなければ対策をとることはできません。

 管理会計は現状を把握し、分析するためのとても重要ツール(道具)であるということができます。
管理会計のスタートは月次決算です。

 まずは月次決算の迅速化と正確化を進めます。発生主義会計を正しく実施しているかどうかについて確認し、また月割り経費の設定を行うなどしてできるだけ結果が異常にならないよう対処することが必要です。この部分に誤りがあればあとがすべて水泡に帰します。

 まず月次決算を翌月10日から12日、最悪15日までに行うことができるよう体制を整備します。そのためには現場での会計処理や入力業務の簡素化、簡便化を行います。場合によれば伝票会計の見直しを行うことも必要でしょう。

 次に部門別損益計算の実施です。ここでは多くは語りませんが部門別損益計算がある病院とない病院では部門別の対応がまったく異なります。全体をただみているだけではなく、より詳細に各部門をみることにより大きく成果をあげることができます。但し、部門別損益計算は月次決算と一緒に行うことが必要で、大まかな配賦計算をしていたのでは正確な数字をつくることはできません。詳細な配賦計算のためのロジックが必要です。

 また、管理可能費と管理不能費がありますので、責任の所在を明らかにしておかなければ数字がでても意味のないものになります。さらに指標分析と併せて何をどのように分析するのかについても検討しておく必要があります。各費用の要素を明確にしたうえで、分析を行なえる体制をつくらなければ実務で役に立ちません。

 収益、費用についても指標管理とのコラボがとても重要なテーマになります。これはあるていどのノウハウが必要です。そして部門別損益計算を治療間接費の計算資料としたうえでの疾病別原価計算です。患者別というよりも初めは疾病別になるでしょう。ゆくゆく患者別疾病別というかたで展開し、大きな成果をあげている病院がでてきています。

 例えばパスのバリアンスを利益で出すといったことは医療を振り返る意味でとても大切ですし意味があります。治療のPPM(ペイシェントポートフォリオマネジメント)を行なったり、業務改革につなげたりすることができます。

 さらに、日常においては経営意思決定のための特殊原価調査です。買うか買わないか、借りるか借りないか、現金かリースか、そしてどれだけ患者さんを集めなければペイしないかといったことについてそのときだけではなく、稼働率との管理と結実させながら継続的に管理を行うことになります。

 もちろんDPC制度での医療の在り方についても、個々とのリンクが的確に行われ、DPC運用上の問題も明確になってきます。これは部門別損益計算でも一定程度は明らかになるし、DPCにおける医療が合理的に実施されているかどうかのきっかけにもなります。

 いずれにしても平均在院日数が短縮するなか、DPCの中心課題は単価アップと増患にシフトしており、この部分が達成されなければ病院は残っていくことができません。医療療養病床においてもこれは同じであり、常に管理会計を行いながら増患システムをどのようにつくりあげていくのかどうかが病院の盛衰を決定することには相違がありません。これからは管理会計を使い、問題点を抽出し、具体的な行動を起こすことが必要です。

 会計の知識がなければ管理会計を深層にまで徹底することができません。病院はどんな考え方をもつのかにより成果をあげることができたり、あげられなかったりします。確かにソフトの良し悪しはありますが、まずは政策や管理会計に対する考え方を徹底的に理解しなければ、本当の意味での病院改革を進め、ながく地域貢献していくことはできないと考えることが適当です。

 私たちホワイトボックスはながく医療に関与している会計士が運営する会社として、管理会計領域にはたくさんの成果をあげてきています。管理会計構築についてのご相談をお待ちしています。