よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医療のこれからの在り方

 財政がひっ迫しているなか、高齢化が進み、医療費をこれからいまと同じ状況で維持することが困難な
状況になってきます。厚労省は病院病床の削減を旗印に、あの手この手で、質が高く、合理的な医療を推し進めています。従来の医療をそのまま懸命に行うだけでは、医療が成り立たない時代の到来です。

 そもそも98兆円の歳出に対して歳入は42兆円。消費税が十数兆円プラスされたとしても、焼石に水といった状況が続きます。あらゆる税金や公共料金があがっており、知らない間に自治体ごとに介護保険料も値上げされています。

 これから健康保険や医療費の自己負担、介護の自己負担にまで手をつけなければ現状を維持できない環境に置かれます。消費税は、8%の時期を経て2015年に10%になりますが、それ以前の多少の消費アップはあるものの、そこから先は今まで通り、消費が落ち込み益々景気は悪化するとみられています。

 医療機関ができるのは、改革に改革を積み重ね、いままにない質の高い医療を合理的に提供できる体制をつくりあげること。その事実を地域や患者さんに知ってもらうことだと思います。

 質の高い医療を行えば、必然的に患者さんの評判になり増患します。同じ経営資源でより大きなアウトプットが出せる組織は生産性が高いといわれています。たくさんの患者さんを短期間で治療できる病院は、間違いなくたくさんの患者さんが集まります。

 したがって、質を上げる→生産性を向上させる→たくさんの患者さん来院→早期退院→さらなる増患→利益増加といったながれができあがります。適正利益は患者評価の証といわれる所以です。
もちろん、並行して(実患者数)増患のための内外活動の実施や、制度に合致した組織体制整備といった対応は必要ですが、まずは医療の質を向上させることに執着する必要があります。

1.統治システム

2.管理会計システム

3.教育体系

をまず整備する必要があります。

4.業務改革推進

5.人事考課制度

といったものは、当然に整備されているかどうかを確認する必要があります。
とりわけ、4は重要です。パスにしても、マニュアルにしても、リスクマネジメントにしても、感染症にしても、NSTにしても、褥瘡対策にしても、さらには部署間コンフリクトの解消や、業務改善提案、そしてDPCであれば、必要な実施してはならない事項がすべて抑制される状況になっているのか、実施されるべき事項がすべて実施されるのか、さらに各業態別に同様のことが行われているかどうか、など、ありとあらゆる既存の仕組みのなかで、より高い質を求めた改革活動が計画的かつ体系的に実施されているかどうかといったことが求められています。

組織が一体となり、一定の方向に進むことができれば、必ず組織は大きな力を得て飛躍することができます。
 利益は以前から説明しているように患者評価の証であり、最終的に評価されるべき指標の一つであると考えています。利益は資金の源泉であり、利益がでない病院は時代に残ることができません。残れなければ医療を維持できない、地域に貢献できないといった帰結を得ることになります。

 勿論一番は医療の質。この病院でどれだけの患者さんを診ることができたのか、また治療することができたのか、といったことが最も重要な評価だということを理解しています。

 何れにしても、戦略の明確化→目標化→実行体制整備→中間管理職教育強化→実行→モニタリング(人、時間、情報、モノ、カネ)→行動修正→成果獲得
といったかたちをつくりあげていくことが求められています。

 病院は地域における国民健康管理の拠点です。ここを基軸として地域があり、それを支えるように、在宅療養支援診療所や介護事業者の施設があるという理解です。本来はいったいとしてこれらすべてを一つの意思決定で行うことができれば、首尾一貫した地域完結型医療が行えます。とりわけ医療過疎の地域ではこうした体制が整備されることが地域住民を守る大切な手段だったりします。

・自院のビジョンが明確になっているか
・到達点は開示されているか
・戦略は明らかか
・具体的な戦略実行のための手法は確立されているか
・そのための仕組みはあるか
・そのための人材は教育されているか
・毎月の統治は確実に行われているか
・問題点は直ちに修正されているか
といったことが検討の遡上に乗ります。

 これからの自院はどのように運営していけばよいのか、トップを中心として経営幹部は十分に議論しなければなりません。
・モニタリングするシステムはあるか