よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院経営のあり方について

イメージ 1

 機能分化と在院日数短縮による病院病床削減という考え方については、私たちは毎日の病院への訪問で思い知らさせることがあります。

 すなわち急性期においては、当たり前ではありますが、間違いなく手術件数が多ければ収入はあがること。また、医療療養病床においては、医療区分2とか3というよりも、治療の必要性がある患者さんが入院することで治療での加算が発生し点数があがあること。精神についても回復期についてもそれなりのしっかりとした治療を行うことで、収益があがるように点数構造ができあがっていることがそれらです。

 医療が必要な医療に資源を集中するということで保険を維持しようとしていることからすれば、当然のことではあると考えます。逆に、急性期を標榜しているけれども、医師がいない、医師がいても非常勤、また、単純に表現すれば、手術をしないといった病院は、かけたコストを回収するに足る収益を得ることができない構造になっていると考えることが適当です。

 もちろん、看護必要度についても、医療区分123についても人為的、意図的に点数をあげることができる可能性はありますが、いずれそれらについても捕捉され、本来の医療を行うことで見合いの診療報酬が支払われるという傾向にあると考えています。

 結局、改定により無駄をなくし、人為的な作為を排除し、本当によい医療を行ったところには比較的高い報酬を得ることができる環境を提供しようとしていることがよく理解できます。となると、業態別にそれぞれの病院は、自院の所属する業態が求めている診療活動はいったいどのようなもので、それを達成するためにはどのような体制を持てばよいのかについて真剣に現在、未来を考える必要があると考えます。

 手術件数が少ない、あるいは高い技術料が得られない手術を行っている病院は、近隣を調査し、自院がそれをやる必要があるのかどうかを議論したのち、自院の強みが地域で受け入れられているのかどうかの判断を行わなければなりません。ある中部地方の病院は随分前になりますが、自院の整形外科が必要ないとみるや、一気に廃止し、乳腺外科を開設し、あっという間に従来の売上を取り戻し利益を出したケースを知っています。

 医療療養から急性期への転換は言うに及ばず、チームで心臓血管外科を招聘し診療科を開設した病院もあります。地域や自院の分析を行い、未来をみたうえで過去から現在にいたる経験を捨ててでも新しい可能性にかける必要性もあるかもしれません。

 自院が存在する地域の人口が10年後に激減するのをみて、大阪や東京の病院を買収し人口の多い場所で医療を継続するとの思いを実現した医師もいます。したがって業態だけではなく地域の選択も自由に行うことも、その気になればいくらでも可能性はあります。

 現状に甘んじるのではなく、将来を見据えてどのような病院をつくれば地域医療あるいは日本の医療に貢献できるのかについて十分検討し、国が求めている=あるべき医療に向けた組織改革や戦略立案及び実行を果敢に進めていくことが求められているという結論です。

 本日国の財政難から、4兆円の地方交付税交付金の支払いを遅延すると政府が発表しました。医療介護には影響のないようにという説明ではありますが、実際のところ、こんな状況に日本の財政があることを医療関係者はよく理解しなければなりません。とりわけ公的病院の医師職員は、このようなことが一過性ではないことを認識する必要があります。こうした事態はとりもなおさず、病院への補助金支払が遅延する可能性や打ち切られることが想定されるからです。

 生産性をあげ、職員全員の力を集中して診療活動にあたるだけではなく、上記をも検討したうえで、職員の力を最大化して医療を継続する必要があります。このままの医療でよいのか。どのような医療を行っていけばよいのか。そのためには何をすればよいのか。いつまでにすればよいのか。どのようにすればよいのかといったことについて真剣に議論しなければなりません。

 大輪の花を咲かせるため、今の内からしっかりと水をやり、肥やしを与えて職員の成長を図る必要があります。