よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

業務の見直しは、改善の基本

 先日、病院の中間管理職セミナーでの話です。常に、業務改革をすることが、これからの医療の進む道。仕事をルーチン化しないで、見直しをかけ続けることが大切であると話ました。


マニュアルの作成と運用を通じて、現在の仕事のやり方が正しいのかどうかを確認する。
(1)今の仕事の業務の棚卸を行う
(2)仕事のリストを作成し漏れをチェック
(3)マニュアルを手順と留意点、必要な知識、本来の接遇に区分し作成
(4)作成時に問題発見、運用時にマニュアルの改定を通じた業務改革

マニュアルの効用
Ⅰマニュアル作成時
 暗黙知形式知=個人知を組織知

Ⅱマニュアル運用(+教育)時
 組織知を個人知

Ⅲマニュアル改定時(←業務改善)
(1)個人知の拡大
(2)個人知を組織知

問題点発見の段階
(1)マニュアル作成時
  こんな仕事の仕方をしていたのか、という気
 づき

(2)マニュアル運営時
  もっとこうすれば、うまく、はやく、やすくでき 
 るのに…という気づき(改善提案)

うまい、はやい、やすい、にこ!
これが業務改善の基本的姿勢(吉野家理論)。
(1)うまい
  質の向上、質は同じだが量を増やす
(2)はやい
  同じ量を早くやる
(3)やすい
  価格を安く、同じコストで高い収益
(4)にこ
  利己ではなく利他

医療の質の要素
(1)仕事の仕組みの見直し
  ・常に適切な仕事のルールがあれば容易
  ・他部署との連携がうまくいけばやり易い
  ・パス・マニュアルが整備されていれば円滑
(2)個人の技術技能向上
  ・高い技術技能を身に付ければ仕事は早い
  ・相互に指摘し合えば相乗的に成長
  ・仕事ができる人は自信があり他人に優しい

実際のケース
(1)マニュアルを整備し教育し個人の技術技能を高め、一つの仕事をうまく、早くできるように
 する
(2)平均在院日数をパスⅡ期間に合わせたパスを作成するとともに、標準からの逸脱(バリアンス)や変動があれば、その原因を探り、診療内容の見直しを行うし、パスも改定する(正バリのケース)

四位一体
 アクシデントが発生すれば、仕事の見直しを行い、こうすると失敗する、こうするとうまくできるというノウハウを業務改革にて実施、ルールや手順の変更をマニュアルに反映。パスのバリアンスも原因分析、対策立案、業務改革へとつなげる。そして、個別教育。個々のスキルを向上させるためのマニュアルを使った個別教育。すなわちここに、リスクマネジメント、パス、マニュアル、そして教育は4つがリンクして動くもの。これを四位一体という。

日々心がけること
(1)現状の仕事のやり方を業務改善により、常に見直す  
(2)うまいやり方はマニュアルを作成したり改定したりして反映する
(3)常に目標を決めて学習し、力をつける
(4)他部署との連携をうまく行う

これをスタッフとりわけ、中間管理職であるリーダーは忘れてはならない。

ということでした。

 いずれにしても、質の高いものしか残れない。残らない。ということを肝に命じる必要があります。なお、医療の質は仕事の見直しと個人技術技能向上の2つしかありません。

 どのようにこの2つを組織に展開するのかが大切。方向づけ→具体的行動→支援→評価→教育といったながれが求められます。70近くの病院をみてきた私の意見として、具体的行動のところを多くの病院が間違えています。バラバラにそれらが展開されることにより、成果が一定の方向に収れんしない。そのことで一生懸命しているけれども成果がでないといった事態に陥ります。

 組織全体を管理する経営企画が進捗を一つひとつ管理するとともに、部署間コンフリクトを解消し続けていくことが求められていますし、そこには管理会計を軸とした病院経営を可視化するための道具、部門別損益計算や指標管理(DPC病院であればEFファイル等のDPCデータ)がなければならないことになります。

 ということで、これからの病院はすべからく、上記が理解できなければ、また実践できなければ本質的な改革を行うことは困難であると理解しています。一握りの革命の騎士だけが活動して一定の成果をあげたとしても、その成果を敷衍化させるのは個々の職員の意志であり意識であるということを、失念してはなりません。

 さらに厳しくなる環境変化にどう抗うのかについて各病院は徹底的に議論しなければなりませんし、そのときに業務改革という思想をすべての仕組みや活動に織り込めなければ成果を大きくあげていくことができないということに辿りつく必要があります。