よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院原価計算を導入したけれども使えない病院続出

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 現状、病院原価計算というと、部門別損益計算(診療科別損益計算)及び患者別疾病別原価計算を指すと思われます(本来は、特殊原価調査といわれる経営意思決定のための正規の簿記の埒外で行われる原価計算もあります)。

 これらを扱うさまざまなソフトができていますが、うまく使えていない病院が多いようです。

 フト会社すなわちソフト開発する側がこれにより何を得ていくのか、どうすれば改善ができるのかについて理解しないまま、一人当たり損益を出したり、赤字か黒字化を表現しているからです。

 原価計算を多くの業種で行ってきた我々公認会計士が見ると、誤解を生むことを恐れずに言えば、とても可笑しな結果になっています。

 本来、部門別損益や科別損益であれば、一次集計でみるのは当該部門の管理可能損益。これが赤であったら収益が不足するか費用が多すぎるのかしかありません。

 単価や患者数を見ることが当然必要だし、どのように増患するのか、単価アップするのかについて科別の戦略や病院政策を照らし合わせ外来と入院についての患者構造や入院比率、手術比率をみながら個々の退院支援や連携活動、そして広報やプロモーションへとつなげていくとことや、もともととして医師招聘や看護師トレーニングといった企画が生まれることになります。

 また、コストの使い方にももちろんメスは入りますが、意外と変動費は多くないので、コスト面でいえば、結局は職員のの配置や生産性の問題に帰着することになります。

 病棟であれば、患者の構造や複雑性の状況を見るとともに、時間外や有給取得率のチェック、経験年数や看護師一人ひとりの能力を評価します。また、アクシデント数や内容、クレーム件数及び内容をチェックすること、医師からの情報を収集しつつ配置や教育を徹底して行うことが必要です。

 ここの段階が赤で、配賦をしたら黑になるといったことはほとんどないとみてよいのではないかと思います。潤沢な黑があり、そこから補助部門や間接部門のコストをどのように負担していくのかといったプロセスが見えてきます。

 もちろん、二次集計では間接部門、そして三次集計で補助部門を受けたときに、どのような損益になるのかをチェックし、間接部門の生産性向上やコメディカルのコストリダクション(原価低減)が行われるという構造になっているわけです。

 もちろん、オーダーが少ないとか多いとかについては指標管理とパラレルにチェックしていくわけだし、役務提供を受けるに当たり、受け方に問題があるのであれば、自部門の行動を変えていくといったことも行われます。ABC(活動原価計算基準)とはいかないまでも、重みづけを行ったり配賦基準を精緻にしたりしながら本来の課題を発見していきます。

 プロセスを管理できていない部門別損益計算ソフトは利用を辞めなければなりませんし、また、部門別損益計算の分析ができないソフトを購入された方は、考え方をよく理解する必要があります。
 いずれにしても、KPIといった指標を活用しつつ、部門別損益計算を使うというスタンスで、より高い成果をあげることのできる分析及び対策が立案できると考えています。

 こうした考え方はいずれ整理してみたいと思っています。
DPC病院だけではなく、あらゆる病院業態で求めらえている部門別損益計算をうまく活用し、業務改革を徹底して実践していっていたければと思います。くれぐれも結果だけみて、どこが利益がでている、いないといったことでの結論だけを得るといったことは行わないでいただきたいというのが、我々がもつ思いです。

 なお、業務改革は、リスクマネジメントやバリアンスマネジメント、マニュアルの作成や運用時にも行われる必要があり、また教育が行われることにより、より進捗があるということについては自明の理であり、部門別損益計算をモニタリングとして、これらへの注力もより行う必要があることを捕捉しておきます。

 疾病別患者別原価計算の課題は別途提示します。