よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

認定看護師サードについて

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 本日、国債医療福祉大学大学院でのサードのレクチャー終了しました。

 財務管理と経営分析です。今回は3度目の講師をさせていただきました。毎回、全国から看護部長クラスの看護師の方々に受講していただきます。いわゆる病院の経営幹部であり、病院職員のマジョリティをもつ看護部のトップまたは近い方々です。

 彼女たちは看護に関してはみな高い見識と経験を積んており、したがって各地有数の病院の看護部を担う幹部として、しっかりと実績を残されてきた、そしていまも現場でバリバリ成果をあげているリーダーです。みな、真剣でかつ明るく、そして前向きな魅力的な女性たちです。

 もちろん、現場では多くの看護スタッフのリーダーとして日々指導を行い、教育を徹底し率先して、そして懸命に活躍している幹部です。

 そのうえでファースト、セカンド、そしてサードと看護管理について学習し、経営幹部としてさらに見識を深め、現場での指導に理論的裏付けをつけて、より高いリーダーシップを発揮することを目的としてここに来ている方々です。

 財務管理や経営分析は、会計を基礎とした管理手法の一つであり、病院が計画し行動した結果をモニタリングするだけではなく、まさにヴィジョンをたて戦略を立案するための情報を提供する源泉となるものです。会計により組織は可視化され、次の行動のための基礎となります。
 計画立案機能や測定機能をもつ社会科学であるということができます。

 今回は、戦略が経営方針となり、経営方針が目標に落ち、指標化され、日々の行動により達成されるということを説明し、日常の行動が結果として財務諸表とつながっていること、したがっていかに日常の改善活動や教育が重要であるのかについて説明をしました。

 財務会計と管理会計の相違、管理会計の内容、すなわち部門別損益計算や患者別疾病別原価計算が、いかに現場の課題や利益阻害要因を炙り出していくのか、そしてそれらを改善することにより、適正利益を得ることができるのかについての紹介を行いました。

もちろん、簿記についてルカパチオリが15世紀に複式簿記を発明し、一航海一会計の時代からゴーイングコンサーンとしての継続企業を前提としたワンイヤールールがうまれ、病院の決算が年一回おこなわれること、そしてそこでは期末日現在の財政状態を表す貸借対照表が作成され、また一年間の経営成績を表すための損益計算書が作成されること、さらにキャッシュフローマネジメントのためのCF計算書についても紹介し、財務諸表全体の連関、そして借方、貸方についての説明を行い簿記のレクチャーに入りました。

 簿記は彼女たちにとって未踏峰の世界であり、なかなか困難な世界であったにもかかわらず、仕訳、すなわち、会計事象を簿記により表現するところについても学習を行い、簿記の初期の問題もいくつもチャレンジしてもらうことになりました。簿記を理解することは経営を理解することの唾一歩であると、サードの教科書にも書いてあったことをあとで知り、胸をなでおろしたのですが、やはり仕訳はかなり苦しい修行のようであったのではないかと申し訳なく思っています。

 もちろん、2日間、12時間のレクチャーですべてが完了するものでもなく、また簿記や財務諸表の読み方を講義後現場で使えるまで、知識を深めることができるものでもないと理解しています。

 しかし、この2日間を基礎として、会計や経営、さらにはあらゆる現場における活動が定量化できる、という部分について興味をもってもらえるのであれば、必ず病院において欠落しているマネジメントの基本的領域に、しっかりと根を下ろした活動をしていただけるようになると考え、あえて簿記から財務諸表、管理会計、そしてマネジメントそのものについての説明をいくつかさせていただきました。

 損益分岐点分析からの短期利益計画や、安全性や収益性、成長性に関する財務分析も、本稿の目的のひとつでもあったため、一定の事例による分析も行いました。

 いずれにしても、病院に入れば、電気はついているは、自動受付機はあるは、派遣会社のスタッフによる受付は行われるは、電子カルテはあるは、CTはあるは検査機器はあるは、もちろん、土地建物はあるは、看護師量の敷金はあるは、賞与のための借入は行うは、壁の修理はするは、書籍は購入するは、交通費の仮払いは行うは、といったように、すべてのものや取引はすべて会計の対象であり、仕訳の対象となることについても説明し、できるだけリアリティのあるイメージをつかんでもらいました。

 こうして整理していても、あまりにも多岐にわたる領域について、したり顔で説明してしまったことに恥ずかしさでいっぱいではありますが、何かをつかんでもらえればと今でも思い考えています。

 サードの看護部長やその予備軍の方々が、経営そのものについても興味をもち、また現場の活動と経営そのものを連結させ考えることができたり、現場を改善することで病院全体の収支や利益に影響を及ぼすことができるようになっていくことが日本の医療を護る大きな要因であると、私は考えています。

 あれこれ大騒ぎしてレクチャーを進めましたが、みなさん結局は最後までついてきていただき本当に感謝しています。これからのそれぞれの現場での活躍を期待しています。なお、高橋泰教授も途中で教室にきていただき、飛び入りでDPC下における管理会計や、新しい管理の在り方についてレクチャーをしていただきもしました。みなさん本当に、ありがとうございました。