よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院をけん引するリーダー

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 新橋の駅の機関車のイルミネーションがとてもきれいです。この時期になると、ジングルベルやサンタクロースの歌が駅前広場にながれ、いつもにぎわっているこの場所はさらににぎわうことになります。
 
 もともと新橋の機関車は待ち合わせの場所で有名で、人が集まってくるところです。毎時間、針が12を指すと、
汽笛が鳴り、このようなイルミネーションが点灯することになっていますが、夜になるとこのようにきれいにライトアップされ、また自らも光り輝くようになっています。
 現在はクリスマスバージョンということで、いつもよりも多少イルミネーションが綺麗になっています。
 
 さて、坂道をたくさんの客車を引っ張り煙を吐きながら登っていく機関車は、魅力的だし力づよいものを感じます。もちろん私は東京で育っていますから、実際に機関車を間近に見ることはありませんでしたが、地方にいったときに昔は機関車を垣間見ることがありましたし、また映像では十分にそれを認識しています。
 さて、機関車といえば、貨車や客車をけん引する力をもっっていてよくリーダーに例えられることがあります。まさに病院のリーダー、理事長や院長が機関車に該当します。
 
 機関車だけが駆動車であった時代から、新幹線のようにいくつかの駆動車をもち、先頭はもちろん駆動車であるけれどもそれぞれが駆動機能をもつ列車における時代に変わりましたが、もともろリーダーはどちらかというと機関車型である必要があるのではないかと考えています。
 
 もちろん、発想としては新幹線型ではありますが、やはり先頭を走る、燃料を供給しながら、速度も決める、そして自らの意志で時間や燃料の消費を考えながら走り続けるほうが、管制室ですべて管理され、多くの人が見守るなかで、ただ運転をするだけの(勿論他に行うべきことは数多くあると思いますし、運転手さんの役割は多様であるとは思いますが)運転手をもつ新幹線とでは大きくエネルギーに違いがあるのだと思います。
 
 そうしたなかで、リーダーが行うべきことは何であるのかをよく考えます。組織の規模や業態、競合、そしてその時点の業績により大きくリーダーシップは変わってくるとは思います。しかし、方向を示し徹底するということ、さらに役割を明確にして、それぞれを尊重しながら役割を果たすということについては一定の仕組みをつくりあげることが必要だと考えています。
 
 多くの病院で職員との面談をする機会がありますが、決まって方向が見えない、どこにいくのか、不安であるということを聴取します。明確な戦略を出すのは以外と難しくはなく、現状の医療環境や制度、地域の人口動態や厚労省の考えている方向をチェックすれば、ある程度先が読める現状です。
 
 近隣マーケティングも必要だと考えますが、現状ではまさに機能分化や平均在院日数短縮による病院病床削減といったキーワードや、したがって地域連携や介護期医療への参入、さらに生産性向上と、そのための教育強化といったことが大きな、かつ普遍的なテーマであるということになります。
 
 自院の現状をすべて把握したうえで、あるべき形を想定し、そのギャップを埋めるかたちで戦略を立案するし、経営方針を提示する。目標管理制度を活用し組織の役割を提示する。さらに毎月の経営会議にて、そうした考え方を徹底するためのガバナンス(統治)を行うといったこがとても、シンプルかつ実効性のたかいシステムであるということに気が付かなければなりません。
 
 あとは徹底するための教育や組織活動円滑化阻害要因を排除するための病院全体としての業務見直し、すなわち業務改善や部署間コンフリクトの解消を図る。ディスチャージやカンファレンスを含めた入退院関係のシステム整備を行うこと。
 
 そして医療の質を向上するための委員会活動を通じた改革をさらに実施するということが求められます。マニュアル、感染症対策、NST、褥瘡、摂食障害、リスクマネジメント、クリティカルパスを含めたコスト関係、薬剤、医材関係、衛生、酸素等々さまざまな委員会の運営を病院の方針のもとに運営していくことが必要です。
 
 忘れてはならないのはマニュアルを軸とした職場内教育の実施や職務基準を基礎とした考課制度の導入ですし、結果としての成果を把握することや、方向を提示するための管理会計の導入は不可欠です。
 
 ということを機関車をみながら考えました。リーダーはリーダーシップを発揮し、組織をけん引する。しかし、リーダーシップはリーダーだからといってそのまま発揮されるのではなく、部下から受容されてはじめて機能することも考えました。リーダーシップを発揮する真のリーダーとなるためには、部下からついていきたいと思ってもらえる上司になる必要があるということが、たまたま20時になり機関車が汽笛をあげたとき、脳裏をよこぎりました。
 
 真のリーダーとなるのは難しい。しかし真のリーダーとならなければ組織をあるところに誘導することは困難です。牽引することは難しい。真のリーダーが数多く輩出され、日本の医療を、いや少なくともその病院のある地域の医療を護り続けることができるよう、いつも期待していますし、私たちもできることを行っていく決意をしています。