よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ホワイトボックスがテーマとするアイテム(3)

 

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ホワイトボックスが病院の支援をさせていただくときに、テーマとして留意するポイントは以下のものです。

1.ガバナンス体制が整備されているか

2.モニタリング体制が整備されているか

3.優れた経営企画スタッフがいるか

4.優れた医事スタッフ、あるいは診療情報管理スタッフが存在するか

5.専門部署やリスクマネジメント、パス、提案制度等を通じた業務改善が継続的に実施される仕組みがあるか

6.教育及び評価制度が整備されているか

7.公平公正な処遇システムが存在するか

8.医師のモチベーションを高める組織、仕組みがあるか

今回は3について、説明します。

 医療は震災のときに理解できたように、どこからか医療従事者が集まり、誰かがリーダーになり、一定の目標を決定すれば、良心にしたがって彼らが行動する結果、大した設備はないとしても、診察が行われ、看護が行われ、処置が行われ、投薬が行われるという成果を得ることができます。
 
 震災により体調が悪く、また、放置されて運びこまれた患者さんにとって、こうしたボランティアの医療活動はさぞかし心強かったのではないかと思います。
 
 ここに、医療は医師を中心とした医療従事者がいれば、成立するし、医療機器が十分であればなおさら、そして病院という場があれば絶対的に、成果をあげることができます。
 しかし、その医療が正しく行われているのか、安全に行われているのか、また財務的にも組織を維持するように行われるかといったことは別の次元の話です。現場でその評価を行うことはできませんし、組織全体を俯瞰した対応を行うことはできません。
 スキルをもった事務方が存在し、それらを管理する必要があります。
 
 通常の事務方であれば、情報系、業務系、人事系、財務系といった領域で現場をサポートする必要があります。しかし、これからの医療はそれでは足りません。
 環境変化は急であり、財政的=診療報酬についても、人口動態的=高齢者増・患者構造変化があり、病院としてどのような方向に進んでいくのか、またどのように改革をしていくのか、また、現場支援をどのように行うのかについては、専門スタッフが必要です。
 
 彼らがいなければ適切な病院運営を行うことはできません。
 
 経営企画は、近隣の市場調査、病院全体の戦略立案、事業計画立案、モニタリング結果分析、戦略実行支援、現場支援、現場コンフリクト解決全般に関与します。
 
 とりわけ定量分析による可視化を徹底しておこなうことや、その結果を計画化し実行に移していくのは現場の力だけでは足りません。病院実務に精通し、財務や管理会計に熟達し、さらに組織運営全般についても一定の知見をもった人材を育成する必要があります。
 分析能力の高い、そして現場のスタッフから尊敬される人材が望まれています。
 
 病院はどのようなアイテムが経営企画室の業務であるのかを列挙し、それを習得するための教育を行うとともに、現場で訓練を開始することが必要です。
 
 なお、弊社であげている経営企画業務一覧をチェックすると概要が把握できると考えます。
 
 
・短期調査による問題発見
・会計監査及び内部統制調査
・患者及び職員アンケート収集及び分析
・医師面談による課題発見
・SWOT分析及び課題抽出
・事業計画立案
・キャッシュフローマネジメント導入及び運用
・指標(臨床指標・経営指標)管理制度導入
・DPC分析及びすべての対応
・ブリーフィングシステム(医師を中心とした経営システム)構築及び運用
・職能等級制度導入及び運用
・賃金テーブル見直し
・考課者訓練の実施
・目標管理制度導入又はBSC及び運用
・評価制度及び評価者訓練実施
・業務改善提案制度導入
・待ち時間分析及び解消のための対策立案
・本来の接遇へのシステム構築及び教育
・クレーム収集システム構築及び対策立案
・職場内教育システム構築
・集合教育システム確立
・マニュアル作成及び運用支援
・機能評価取得に向けた対応
・ISOへの対応
・リスクマネジメント全体整備及びRM業務への対応
・クリティカルパス導入及び運用(バリアンスマネジメントを含む)
・各種委員会運用支援及び再編
・会議体運営支援
・部署間衝突(コンフリクト)解決のための行動支援
・WG組成による業務改革推進
・退院支援計画推進及び円滑化
・地域連携強化
・増患プロジェクトの組成及び運営
・月次決算迅速化及び正確化
・部門別損益計算導入及び運用
・患者別疾病別原価計算導入及び運用
・診療内容調査及び診療構造分析
・医療機器購入にあたっての経営意思決定支援
・ME業務改革支援
・医療機器稼働率管理
・看護プロセス見直し及び運用支援
・個人カルテの利用による職場内教育システム構築
・カフェテリアプランに基づく集合教育システム構築
・銀行提出書類の作成
・銀行対応
・ノンバンク対応
・リースバックへの対応
・診療報酬流動化への対応
・病床再編支援
・業態転換支援
・院内セミナーの企画提案・実施
・その他、日常的な調査及び質問事項への回答等々
 
 いずれにしても、これからの病院経営は、経営企画スタッフの力量で成果をあげられたり、そうではなかったりという状況に置かれます。早急な育成のための活動を行わなければなりません。