後者はとりわけDPC病院において必要とされるものであり、他の業態ではあまり必要とされるものではありません。病院原価計算はモニタリングのために行われます。したがって、原価計算のために原価計算を行うものではありません。多くの病院が病院原価計算を行っているというだけで満足しているのに対し、成果をあげることが基本であると主張しているゆえんです。であれば、例えば部門別損益計算をどのように行い、そして分析するのかといったことがとても重要になります。
もちろん、こうしたものは仮説をたてるためのデータであり、計算を行ったからといって何も変わるものではありません。1.どの部署が赤なのか、2.どの段階から赤なのかといったことに注目することから始まります。貢献利益が赤であれば、意味がありません。ただちに当該部門における患者数を増やすか、単価をあげるための施策をとる必要があります。要素を分析し、何がドライバーになるのかをチェックする必要があります。
コスト削減もありますが、以外と変動費が小さく、現場で行えることは限られていますので、どちらかというと収益に増加に力を入れることが基本となります。とはいっても、これらが簡単にできるものではありません。
当該部門の収益の源泉となる患者構造や医療の内容、そしてコストの現状や課題そして職員自体の課題や他部署との関係、さらにはリーダーの属性やあるべき業務とのギャップといったものが俎上にあがります。医師数や看護師数、設備的な要請もあるでしょう。ただ、病院全体として増患するといった視点よりも、よりフォーカスされているという意味からは、とても有効なアプローチであると考えます。
この部門の損益を改善する、という命題へのアップローチを行うためにも、まずは部門別損益計算を実施し、焦点を絞ることが必要です。
いずれにしても、貢献利益は一次集計をもって把握することになります。
ただ、厳密にいえば受益者負担、すなわちコメディカルマターについては自己のサービスのコストとして、認識するこも必要です。検査・撮影オーダーをしたことに対する利益、投薬による利益等は自部門が得なければならないからです。したがって、本来事務部の間接部門を配賦してから、コメディカルの損益を配賦することになっているものを、逆にしてとらえることで、損益の状態をみることも必要であるかもしれません。
間接部門については、個々の部門に対する紐付けができないものも多く、固定費のトータルとして考えれば、最後に配賦されるべきものであるとの考えもありそうです。純粋な共通費としての固定費として間接部門配賦前の利益がプラスなのか、マイナスなのかについてのチェックを行うとが有効だとの結論です。
なお留意しなければならないことは利益の極大化ではなく、できるだけ多くの利益を出すというところにあります。例えば、赤字の部門だからといってこれを排除するのではなく、どう工夫すれば少しでも利益を増やすことができるのか。
そのための業務改革や必要な教育はどのようなものがあるか、あるいは配置転換か新規雇用か、設備投資かといったことをクリエイトすることが重要です。
その場限りではなく、そのながれが組織全体の仕組み見直しや制度改革につながるときに部門別損益計算の目的を達成することができるようになります。この診療科は利益がでてない、だからだめだ、ということでは先に進めません。多くの部門別損益計算システムを導入している多くの病院においては、その点を見据えた対応をしなければなりません。