よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

クリティカルパスの機能

 ご承知のようにクリティカルパスは重要な経路という意味で、もっとも早期に治療ができる計画を、カレンザンダーが1980年代に完成させたものといわれています。
 
 多くの病院がパスを導入し、一次パスから二次パスと進化させている環境があります。当初は指示書であったものが、チーム医療の象徴として、また、在院日数短縮のツールとして、また業務改善のツールとして活用されるようになってきました。
 
 しっかりとしたアウトカムの提示や、バリアンス(標準からの逸脱。変動も含める場合あり)分析を経て、これらを医療の質向上のためにどう活用するのかが議論されています。
 
 我々のクライアントの病院では、要因別のバリアンス集計を行うとともに、4つの要因の改善を継続的に図るとともに、患者別疾病別原価計算の帰結として、標準通りに治療ができたケースの原価をモデル化し、それを基礎として、原価バリアンスをとる試みが行われています。
 
 患者別疾病別原価計算を行うことにより、パス外処方がどれだけ赤字を作り出すかといったことについても検証が行われていますが、こうしたチャレンジは、医療のエビデンス以外の財務的エビデンスとして、医療と財政のバランスをとるための材料として使われるようになりました。
 
 DPCの場合にはⅡ期間を超えると報酬が低減し、赤字になるケースが続出しますが、在院日数短縮阻害要因である、アクシデント(レベル2であっても在院日数延長要因となる)や感染、リオペだけではなく、パス外処方や手術痔における人員、時間といったものについても留意しなければならないことが明らかになります。
 
 パスと患者別疾病別原価計算情報をうまく活用することにより、高密度で質が高く合理的な医療を行うことができるようになると確信をもっています。退院日と原価のグラフをつくり、標準的な疾病別原価と比較することにより、患者さん毎の課題が明確になり、業務改革のよりどころが掌握できるようになるのは、とても有益であると考えています。
 
 いずれにしても、当院ではこの治療に対し、こうしたパスやプロトコールにより、この期間で治療を完了するとの意思を明らかにしたパスを活用し、よりよい仕組みづくりやより高いスタッフのスキルをつくりあげることができると考える必要があります。
 
 なお、赤字だからどうとか、黒字だからどうということでの判断をしているものではなく、赤字を一つのメルクマールとして、課題を発見しよい医療をできるための活動にどのようにつなげていくのかが問題であるということ、そして、そうはいっても工夫や創造により、しっかりとしたゴールを目指したうえで、改革を行い、赤字をなくすことができれば、病院としての存続や発展を図り、長く地域で治療を継続できるという考え方を全職員が認識しなければならない時代が到来していることについて理解しなければならないと考えています。