よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

これからの医療の方向と行うべきこと

 機能分化と平均在院日数短縮により、病院病床を削減するということが医療制度改革の軸とすれば、どこで医療を行うのかといったことになります。
 
 その答えは居宅です。住んでいる家。すまいを居宅といいます。それは自宅が自分生活本拠となっている家。自分の家と定義されているのとあまり相違はないように思います。
 
 自宅は所有していても、賃借していても定義は同じであると考えられるからです。施設とは一部住所地を変更することで概念的にはかぶります。ただ、これは間違いなく病院ではありません。
 
 すなわち、病院病床数を少なくしても、在院日数を短縮すれば、従来診ていた患者数を診ることができるという認識です。変動費は逆に増加する可能性もありますが、固定費は削減される、そんな目的がそこにはあります。
 
 
 
 診療報酬自体については、DPC(急性期における診療報酬請求制度=実質急性期病院の大半はこの制度に移行しています)になって医療費が削減されたのかとの検証は必要です。
 23年度は37.8兆円となり、22年度の36.6兆円と比較すると全体としては増加していることがよくわかります。 これは高齢者医療に関わる医療費が増加したということではなく、未就学者を除き、まんべんなく各年齢で増加しているという結果となっています。
 
 ただ、一人当たりの医療費の伸びは3.9%から3.5%に低減しているので、その意味でいえば一人当たり医療費は減少傾向にあるということができ、少しは工夫がされてきたのかという感触のあるマクロのデータはあります。なお、未就学者に対する医療費についていえば、一人当たりの医療費は増加しているので、対象人口が減少していることの結果です(少し怖い結果です。子供がどんどん少なくなってきていることの証左だからです)。
 
 さて、話を元に戻しますが、国民皆保険制度を護るためには、病院からでて居宅で医療を行うという傾向については病院側の問題は解決される可能性があります。
 しっかりとしたマネジメントをしていない病院は経営が厳しくなり、 結果として淘汰されることをも含め、急性期のベッド数が削減されることで医療費削減をしようという意図は目的を達成することができるという結果です。
 
 もちろん、急性期から退院した患者さんは医療療養病床や回復期病床を経て在宅に移動するのであり、医療療養病床や回復期においても、ながれからすれば在院日数は短縮され、早期に在宅復帰ということが考えられていることは文脈からして当然のこととなります。
 
 医療療養病床においても、2018年からは長期急性期病床が用意され、急性期の一部の医療を担うとともに、長期慢性期病床に30日から45日で転棟することを意図しています。さらに、長期慢性期病床(従来の慢性期病床)においても在院日数を短縮し6ヶ月程度のしばりが行われる可能性も議論されています。
 
 となると、ここで在宅医療に力点が置かれたかたちで医療が継続されることになります。
 
 懸念するのは、従来のある意味病院という専門的な組織や機能をもった建物で行われる医療の内容を変え、在宅で医療を行うことにより、医療側の負担が大きくなるということです。一戸一戸間の移動時間の影響が最たるものです。
 
 医療の内容については絞り込みがすすみ、的確かつ適切な医療に焦点が絞られてくることや、従来行っていた処置を見直していくというながれができあがりつつあるものの、医療を提供する側の明らかな生産性の低下があるということを言っています。そのことは患者さん側にとっても、不利益です。
 
 結局のところ入院により必要とされるコストの削減とは別に、本当に医療を受けなければならない患者さんにとって、医療を受ける機会が低減してしまうことを避けることができないという考えです。
 
 そこで、すくなくとも共同住宅が必要だ、という結論になります。介護保険の原資が不足するなか、地域包括ケアシステムによりそれを乗り越えていこうというながれと、医療費削減のなかで地域に医療を委ねようというながれが一体化し、高齢者住宅としての位置づけがうまれた経緯があります。
 
 集合住宅を活用し、病院の門前の高齢者住宅、そしてその受け皿としての高齢者住宅を基礎として、医療の場としての役割を付与したという事実をしっかりと認識しなければなりません。
 そうであれば、住宅の運営は介護事業者ではなく、医療法人がこれを行うことが望ましいと考えています。
 医療依存度のあるていど高い患者さんも居宅での治療を余儀なくされるケースも多くなることだと思います。 慢性期の医療を行う医師からはそうした考えをよくお聞きします。
 一方、在宅医療のクオリティを高める努力をされている多くの医師もいて、そのバランスのなかで集合住宅での医療が進捗していくのだと理解しています。
 
 日本の財政が逼迫kしている現状において(前述したように医療費自体が国の歳入とほぼ同じ額になっている、あるいは介護給付も入れれば超えているという現状を打開するために何をしなければならないのかを抜本的に考えていかなければならないと思います)、これからの医療をどのように支えていくのか。
 
 借金大国である日本がどこまでこの借金を減らすこと、あるいは増やさずに国の運営を継続していくことができるのかについて、私たちは目をやる必要があるし、現場で工夫をしながら、いまの医療や介護のながれを理解し、そのながれに合致した医療や介護を実践していく創造性を身に着けていかなければならないと考えています。
 
 国民一人ひとりの認識や行動の変容、さらには医療、そして介護そのものの生産性向上への対応が求められる領域だと理解しています。
 
  写真は、株式会社ココチケアのケアリビング(1階グループホーム2ユニット、2階以上は高齢者住宅)です。
 グループの医療法人明正会で在宅医療を行っています。
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