よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医療の3つの戦略

増患、単価アップ、生産性向上が病院戦略の基本です。病床によっては、これにDPCの有効活用が追加されます。これらは全て、医療の質を基礎として初めて成し遂げられるものです。

急性期において在院日数が短縮されようとしている現状では、ベッドの稼働率を維持しようとすれば、患者を増やさざるを得ません。患者が来院しない病院は淘汰される方向に誘導されることになります。

そもそも、医療の質の高くない病院に患者は来院しません。医療の質は多様ですが、医療従事者の技術技能や仕事の仕組みに依存しています。ただ、比較可能性が担保しづらい領域であるため、絶対的な評価をしずらいものではあります。
 
DPCであれば得意な疾病や、件数、見ようと思えばさらに詳細なデータをみれますが、主治医がそのままを反映する対応ができるかどうかは別として、かなり信頼を得るための資料になります。
 
いずれにしても医療の質を高め増患を図る。外来、紹介、救急の3つの経路から病院への来院を促すことになります。もちろん、よい医療をしていてもそれが地域や患者に伝わらなければ誘因となりません。したがって、常に自院の治療内容を開示する。そのためのプロモーションを欠かすことはできません。セミナーや媒体を通じて外部にどのように自院の強味をつたえていくのかを検討する必要があります。
 
単価アップは外来では、必要な検査や医療を行うことを意味しています。包括医療が大半を占めるようになった現状では、入院してからは業態により変化します。急性期で出来高でなければ、DPCの有効活用を行う必要かあります。手術をやリハビリテーションを行うこと、もちろん検査は高額検査を行う体制整備や院内における医学管理をしっかりと行うことが必要です。慢性期や回復期、精神であれば、それぞれ包括でありながらいくつかの国が求める対応により単価アップを行うことができます。
 
病院の機能分化と連携が医療制度改革の大きな柱になっていますが、まさに、そうした役割分担を業態別に実施しながら得意な医療を行うことができるように質を高めていくことがどの業態にも求められている時代が到来しています。単価をあげる=利益を得るではなく、必要な、あるいは必要と考えられる医療を行う帰結として単価があがるという見方をする必要があります。
 
そして生産性向上。これも医療の質を高める帰結として得られる成果です。経営資源一定において、高い成果を得ることを生産性が高いといいますが、医療の質が高くなってはじめて得られる結果です。ミスをしないやり直しがない、無駄がない、早く治療が完了するなど、生産性向上=医療の質が高いということだと理解しなければなりません。また、逆に医療の質(個人の技術技能の向上、仕事の仕組みの見直し)の向上を行うことで生産性向上をはかるという意識をもつことが求められています。なお、その場合、コストが自動的に低減します。
 
コスト絶対額の削減は、まさに無駄がなくなることや、合理的な利用が行われること、アイテムを整理すること、集約されることなど、管理の質や個人の質が高くなることで達成されることがわかっています。

また単位当たりコストの削減は、1時間で8の仕事をしていた医療従事者のスキルがあがることで1時間で10の仕事ができるようになることを意味しており、生産性をあげた=コストを削減したということを証明するものです。

もちろん、個人の技術技能が高まり、このような成果を得る背景には、仕事の見直しが並行して行われることが一般的であり、業務フローの最適化や動線の変更など業務改善が同時に得られる結果です。
 
詳細になるので、これ以上説明しませんが、いつも話ているように業務改善のツールは、リスクマネジメントであったり、感染対策、褥瘡対策、NST、パスの活用、マニュアル改定であったり、看護プロセスにおけるオーディットであったり…。さまざまな医療で日常行われている活動はすべて業務改善、すなわち常によりよい医療をしていこうという目的のための活動に収れんしています。

実際、生産性向上というキーワードは医療の質の向上を別のインディケータでくくる言い方であり、まさに医療に必要な、あるいは営々と医療が積み重ねてきた裏概念であったということができます。
 
ただ、こうした概念でくくらないと常に多様なアプローチにより医療を変えて行こう、進化させていこう、チーム医療を進展させていこうとすることが、あまりにも多岐にわたるため、それぞれの目的がややもすると個々の定義に囚われることになるため、連続性や連関性が見えなくなる懸念があります。
 
あるときには、生産性向上という概念に医療の質向上が代替して語られることにより、医療の質向上は、まさにさまざまなツールやアプローチによる日々の地道な活動における業務改善により成し遂げられるものであり、また、それらは同じ方向を向いていること。
 
そして、例えばリスクマネジメントの業務改善の帰結はマニュアルに反映され教育されたり、パスを変えたり、他の活動を見直したりする連関性をもつとともに、すべてがつながり、一つが進化すれば他も機能するといった関係にあることも理解されるようになるという効用があります。
 
なお、指標管理や部門別損益計算、場合によれば患者別疾病別原価計算などのモニタリングツールも、生産性向上の測定をしたり、方向付けを行うという意味で、生産性向上のためのツールになります。もちろん、表では医療の質向上が図られることになります。
 
ここだけの話ではありますが、まさにDPCの有効活用を行うことで、モニタリングが実施できるだけではなく、一定の規律のなかで医療の質が向上することが多くのDPCの実践者により証明されています。高密度で合理的な医療を志向することは、医療の質向上を行うことと同義であったといまさらながらに感じることができるのは私だけではないと思っています。
 
一気に書きなぐったので分りづらいところもありますが、いまさらながらに3つの戦略はもっと奥深く、ここでは語り切れない詳細かつセンシティブな問題を数多く抱えています。
 
多くの部署が関与して多くの手続きやルールがあって病院が運営されていることや、組織が縦割りであること、そしてシステムがいかに整備されたとしても、医療従事者個人、そして人間関係が大きく組織運営に関係していることも無視できない事実です。病院によっては常に部署間にコンフリクトが生まれていることを理解していく必要もあります。
いずれにしても個々の事情を呑み込んで、どの病院にも必要な戦略をあげるとしたら上記になるというこで理解してもらえればと思います。