よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

よい仕組みの必要性について

あらゆるビジネスや業務にはいましたし、仕組みがあります。仕組みに優位性があればあるほど業務の生産性はあがります。

ここで優位性とは、仕組みがあることでそうではないときと比較して、業務に付加価値が付与されることを意味しています。付加価値とは、質の向上や時間短縮を言います。

医療においても、説明できないほど、現場のあらゆる場面で様々な仕組みが開発されています。
受付、検査、診療、入院、手術、退院、会計など外向きな部分だけではなく、内部の業務のについても、沢山の仕組みがあります。通常、どの病院でも、それぞれの機能を果たすための仕組みはもっていますが、外来で言えば、ある病院は待ち時間がながい、検査に時間がかかる、会計が早期に終了しないなどの問題が生まれ、病院ごとのそれぞれの業務の巧拙がうまれてしまいます。
 
電子カルテやオーダリング、ダイコムの整備が行われているかいないか、現場でのシステム構築ができてるかいないかによっても大きく作業時間やクオリティが影響を受けます。すなわち仕組みのよしあしにより病院のよしあしが大きく影響を受けることになります。
 
ある病院では紙カルテを使っていて、カルテをとりにくる助手のタイミングがづれると、さらに会計が遅くなるといった問題をかかえていましたし、看護師が不足しているなかで、さらに中央採決室がなく、各診療科の処置室で採血をしている病院で、看護師さんがいないために、医師が採血をしている病院があったりしますが、仕組みや仕事のやり方により、本来の医療そのもの以外のところでの問題が発生し、患者さんの印象を悪くする、あるいは実際に不利益を与えてしまいます。
 
いずれにしても、多くの病院では常に仕組みの巧拙が検討の課題にあがり、とりわけ待ち時間がながいことが患者の来院しない動機になることを避けるために、さまざまな取り組みを行っています。
 
しかし、そうした仕組みがあったとしても、
使う側に問題があり、すべてが台無しになることがあります。
例えばある医師は自分の興味のある患者が来院すると1時間をかけて診察をしていまうけれども、他の先生はしっかりと15分で一人ひとりの患者の診察をするケースがあります。

前者の医師は待ち時間がながくなり、後者は短く、評判が高いといったことがあります。電子カルテのログをみるこで管理できます。仕組みがあったとしても、それをうまく使えているかどうかについてのチェックを常に行うことが求められています。
 
なお、そもそも満患が多く、外来が混雑している。したがって医師も休みがとれない、しかし、検査数は少ない、入院比率は低い、といった事態が発生している病院であっても、医師が患者さんに逆紹介しますといえないために、自ら首をしめていている病院もあります。

基本的に業態により機能や役割、もっといえば使命、さらに自院の特性が異なるのですから、やはりみるべき患者をみて、任せる患者は任せるといった政策が必要です。あたりまえですが、厚労省が進める機能分化への対応でもあります。

もちろんこうしたレコメンド(勧告)を行うことも、病院の仕組みのなかに含まれていなければなりません。
 
整理すると、病院にはそれぞれ仕組みがあるが、それが正しいか正しくないか、効果的か効果的ではないかといったことについては大きく差があるということ。

さらに仕組みがあったとしても、それを運用する職員がうまく運用できなければ仕組みのよさは消失してしまうこと。

さらには、問題があればそうした事実を必ず仕組みのなかで解決することができるような対応がとれる組織であることが必要という結論です。
 
一つ一つの仕組みについて、それが比較優位性をもって他の病院よりも優れていることや、自院の診療科や病院の特性に鑑みて、あるべき仕組みになっているかどうかをチェックすることが必要ですし、それをうまく活用するためには現場は何をすればよいのかについてしっかりとしたノウハウをもっている、あるいは常にそれを発見し、改定する仕組みをもっていることが求められています。
 
ただ、実際には医療は、上記のようなシンプルなものではありません。病院の仕組みに問題があるために、医局内のコンフリクト、部署間のコンフリクト、職員のモチベーション低下、スキル低下といったことが生まれる病院もあります。

毎日ルールにしたがって懸命に、しかしそのときのあらゆる問題を飲み込み、医療を継続していくということがないように、すなわち、ルールにしたがった仕事を行うものの、常にそのプロセスや結果での問題点や課題を発見し、パーツパーツで業務改革を行い、創造的に仕事を進めていく必要があります。
 
よい仕組みをつくる、しかし、それはしばらくたてば陳腐化する、あるいはもとから事実に適合していないといったことがないようにすることや、さらに周辺の必要な活動を常に喚起していくことが求められています。