よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

改善マインドがすべてを変える

 以前、ある看護部長が、リスクマネジメントの勉強会で、看護師に、あなたちゃんとやらないと訴えられるのよ、といいながら指導していたのをみたことがあります。リスクマネジメントはどうしてもネガティブなイメージをもって迎えられるものであり、心のなかで背中を丸めて行う印象があります。
 
 しかし、よい医療を志向する、すなわち仕組みを変える、個人の技術技能を向上させるといったことがあれば、自然とインシデントもアクシデントもなくなります。そう考えると、実は前向きに活動すること、すなわち医療の質向上のための取組みを行うことが、リスクマネジメントに有益であることが判ります。
 
 事故種別やレベル別、場所別、時間帯別、経験年数別の統計をとり、重要なものをテーマにつぶしていくという帰納法的なアプローチと、仕事の仕組みをすべて見直し、常によい仕組みをつくりあげるとともに、職務基準をつくり、すべての職種のすべての等級のスタッフが行うべきことを行うよう教育し、個人のスキルを高めていくという演繹的アプローチとの相違であるかもしれません。
 
 例えば、クレームには潜在クレームと顕在クレームがあり、後者がみなの目に触れることになりますが、実際には潜在クレームのほうがこわい。クレームとして露見しないけれども、クレームがあり、それが潜在化して次の行動を控えさせることになります。
 
 
 業種は異なりますが、私が指導していたアパレルで、ボタンのほつれとか、ステッチの入りかたが不揃いとか、小さなしわがあるなど商品を購入してから顧客が気が付き、しかし、それが顕在化せず、そのショップでの買い物を二度としないということにならないよう、潜在クレームを事前にどのように探すのかを販売員さんの重要なお仕事にしてもらっていた会社がありました。
 
 それがきっかけとなり、生地の織元、縫製工場のラインの改善、デリバリーや検品のシステムまでが改善活動のかで変化していったことを記憶しています。 
 
 医療と同様にみるのは申し訳ありませんが、どうすれば事前にインシデントやアクシデントを予測し、先回りして対処しておくのかということが実はリスクマネジメントであり、誇りをもって行うべき業務であると理解しています。前向きにもっともっと、うまく、はやく、合理的に医療を提供することができないのかという意識が、工夫や創造を生み、日々のよりよい医療を行うことへの原動力となります。
 
 
 このやり方はいいのか、どこが問題なのかということを無意識に意識し、自然によいやり方が頭に思い浮かぶスタッフを数多く知っています。彼らは、なにかをつくりだすこと、新しいことを考え出すことに長けているし、それを肉化している人たちです。
 
 定量化された目標をもち、期日を決め、行動し何かを成し遂げています。改善マインドを持っている人は柔軟で、思考能力に優れ、そして前向きです。ネガティブな発想はもっていません。何かが起こってもそれを乗り越える力強さをもっています。私は、彼らを尊敬していますし、また彼らと会ってとても啓発されます。
 
 当然のことではありますが、リスクマネジメントだけではなく、マニュアルの改訂やバリアンスマネジメントをはじめ、日々の仕事すべてに改善マインドをもって行動することで、大きく医療の質は向上します。
 
 日々進歩、そして成長をしていけるよう改善マインドをもつことを合言葉に、毎日の仕事に取り組んでいきたいものですね。