よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

コミュニケーションは活力の源泉

 医師面談をすると、看護師の課題や事務スタッフの課題がみえてきます。医師はその都度、看護部に話をしたり、事務長に課題を説明しますが、それが雲散霧消し、問題解決が行われないことがあります。
 
 医師の説明の仕方が問題、話をした相手の受け止め方の問題があります。そもそも、一つの出来事はその背景にさまざまな遠因をもっています。例えば、外来診察中に病棟看護師から指示を受けるための電話がある。これは看護側にとってみればとても重要で、やむにやまれぬ事情があり電話をかける。しかし、外来の忙しさの真っただ中にある医師は、それが場をわきまえない、対応だということになり言葉をあらげる。医師の不満も看護師の不満も増長してしまうことになります。
 
 しかし、その問題を事後にしっかりと話し合うことができていれば、指示を先に出しておかない問題があったのか、緊急時の対応のラインがあり、A先生不在のときにはB先生となっていなかったこと、さらには看護側で本来対処することができたかどうかという問題が浮かび上がってきます。それは個人の問題というよりも、システムの問題であったり、ルールの未整備の問題であったりすることが判明します。
 
 要はそれぞれの医療従事者は常に忙しく、現場で発生した事象に対して全力投球しているために、こうしたコミュニケ―ションの場を設けることができないのか、そもそも信頼を失っているので、話し合う場も持ちたくないのかといった状況もあったりすることがあります。
 
 ある病院では、外来に電話をかける前に、システムやルールを決めることや、緊急の状況の範囲を明確にすること、さらにはA医師の代わりにB医師というルールを決めたために、両者の間で生まれる問題を随分と軽減できたことがあります。
 問題解決や取決めをするためのコミュニケーションをとる。これができるよう、常に病院は場を設け調整役を立て、そして問題解決をできるだけ早期かつ迅速、そして的確に行っていく必要があります。
 
 いわゆるメディエーター(調停者)については、患者さんと病院側だけではなく、病院内部においてもその役割を果たす、発揮する存在であると考えています。

こうしたスキルをもった者を置いて、現場のコミュニケーションを喚起し、問題解決していくことができれば、病院の業務はよりスムースにかつ有効に進捗していくのだと認識しています。

なお、そのためには、定期的にコミュニケーションの場を設定するということだけではなく、常にどの部署にどのような問題点があるのか、そしてそれは何が原因であるのかについて、事務部がよく調査分析しておく必要があります。
 
 何万通りもない問題点について、DB(データベース)化し、どこかで類似の問題が発生したときにはそのなかから解決策を提示するということも役割になります。

いずれにしても事務部は、病院のすべての業務フローを理解するとともに、病院マネジメントの在り方について理論から学習する。

そして、実務に合せたかたちで当該病院そのもののマネジメントシステムに落とし込むとともに、問題解決手法を柔軟に活用しながら、現場の支援を行い、現場のスタッフが前向きにそして創造的に仕事を進めていけるようサポートしていくことが求められています。
 
 ヒューマンリソースマネジメントや組織論、管理会計等基本的なものだけではなく、問題解決技法についてもいくつかのパターンを覚えておく、あるいは実際に現場でつかいナレッジを積み上げていくことができれば、組織の下支えを行うことや、戦略を実行するための環境整備を行うことができます。
 
 医療従事者自らコミュニケーション能力を高め、時間をつくり、場をつくりコミュニケーションを図るとともに、組織としても彼らを支援する場をつくる、手法を開発する、調停役の担当者を置く、といった準備を怠ることはできません。

病院統治のための縦串とともに、組織におけるあらゆる問題解決のための横串をたてて対応することが期待されます。
 
 コミュニケーションは個人、そして組織の活力の源泉であることを十分に認識する必要があります。