よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

インドネシア・ジャカルタの病院視察

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ジャカルタには何度か訪問しています。最近ではクライアントの病院の関連施設がインドネシアから看護師の資格を持つ介護実習生を6名受入れ、人口減少が急速に進む現地で希望の星として勤務するなど、インドネシアは身近な存在です。

 

今年も6名の採用が決まり、私も現地への訪問が予定されていましたがコロナ禍でかないませんでした。海外視察ができなくなってから2年。今はどうなっているのだろうと想像しながら色々な病院を思い出しています。

 

少し古いですが2013年の記事があったのでご紹介します。

 

「ジャカルタ3日目を迎えました。朝の景色は日本と同じようにみえます。ただ日本より湿度が低く、太陽の光は強いものの東京よりもずっと過ごし易い気候です。
 
さて、医療について説明します。昨日訪問した病院のCEOの説明では、インドネシアには、国立病院保険省の下、33病院があり、民間の病院も数多く存在しているとの話がありましたが、2億4千万人の国民がいるこの国で、少し病院が少ないという印象を受けました。 
 
『病院の規模は785床。職員2220人。手医師280人、外来は1800人その他、緊急が1500人、平均在院日数8日から10日、稼働率85%未満。待ち時間は3時間から5時間は当たり前で、それでも国民は何もいわずにじっと待っている。

 

その病院は貧困層が60%を占め、医療費は損益分岐点よりも20%ディスカウントの医業収益で賄うという話を聞きました。ただし、富裕層からは40%のマージンをとってよいと決まっている』とのことで、患者の所得により、病棟のクラスも変わるという日本ではあまりない運営をしています。
 
『手術件数毎日40件。しかし全身麻酔が少ない。周産期の帝王切開が多くを占める』との話でした。

 

総合病院で、整形とリハが得意というわりには脊椎間狭窄症の手術が1週間に6件、リハビリも見せてもらいましたが驚くほどの状況で、これが地域トップクラスかと目を疑いました。心臓や脳の手術はなし。
 
『カテーテルはやるが手術は別の病院』と話をお聞きして納得しました。国立病院で南部にあるのはこの病院だけであるということもあり、二次急の様子ではありながら、日本のイメージからすれば、いまいちの病院ではないかという印象です。
 
なお、この病院は審査を終わり12月にはJCII(Joint Commission International=国際医療安全基準(IPSG)認定機関)の一つを取得する予定になっていますが、JCI取得は海外からの患者を受け入れるというよりも、医療安全や医療のクオリティをあげようということでの対応といわれました。

 

日本はJCIの取得が少なくまだまだですが、英語での認定の壁が低いのでASEANでは認定病院が結構あります。
 
日本の一般的な医療の質は高いと思いますが、海外も欧米で学んだ医師が医療の質を引き上げていることは間違いありません。日本の我々のクライアント病院の運営状況を思い出し、多くの海外からの患者を治療はしているものの島国で完結している医療から世界の医療への飛躍を期待した時間でした」。
 
さて、日本の状況も随分変わりました。コロナで大変な状況に置かれたし、インバウンドの盛り上がりや医療ツーリズムへの取り組みも強制終了させられました。

 

しかし日本のJCI病院は2020年現在29施設になり、随分と増えました。とはいうものの世界では1014施設。ASEANの病院視察に行くたびにJCI病院に出くわしますが日本は先進国では少ない部類です。

 

医療の質の担保だけではなくインバウンドの患者はJCI認定病院を目安にすることもあり、コロナが落ち着き日本の医療の良さを海外に喧伝できるようになったときには頑張って多くの病院がJCI認定をとって欲しいものです。

 

日本が島国である事で、良かったことと良くないことがありますが医療のこれからを考えるときにもその視点は役に立ちそうです。海外の病院に学ぶことこれからも継続していきたいと思います。