よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院における災害時の行動及び安全確保

 先日、ある病院で災害時の対応についての勉強会をしました。
災害があったときに、災害本部を設置するとともに、以下を実施することが必要といわれています。
 
 もちろん、その場でできないこともあり、事前に、また日頃から準備を重ねておかなければならないことはいうまでもありません。自院の患者さんを安全に避難させるとともに、職員も護らなければなりません。さらに、病院としての機能を活かし地域住民の治療や安全確保も役割となることは明らかです。
 
 さて、災害があれば、対策本部を設置します。対策本部は、
建物設備の危険個所確認及び避難しなければならないかどうかの決定
連絡網の活用による職員の安全確認及び招集ルールにしたがった招集
避難場所の確保
医療に必要な医療機器、医薬品、衛生材料などの確認
自院患者のための医療体制の確保
患者用、職員用、飲料水、食糧の充分な確保
ボランティアの招集
病院の出入りに伴う事象への対応(盗難、負傷者の搬送、遺体の管理)
基本的ルールに基づくトリアージの実施(超急性期ではなくても、どの患者さんから他病院に搬送しなければならないのかについてのトリアージは必要になると考えています)
入院患者(場合によれば搬送患者)の状況把握及び搬送先の確保
警察や消防、行政、他の医療機関への連絡及び指示受け
これらは基本的なことであり、さらに災害時に行うべきことは多数あります。 
 
なお、病棟の患者さんへの対応をどのようにするのかについてのルールを決めるとともに、その運用を行う必要があります。
事前の建物のバリアフリー

事前のボランティアの採用及び訓練の実施
倒壊時避難先の確保(ベランダや、その時点で最も安全と思われる場所への避難を敢行)
火災時の対応及び院内避難先の確保
ストレッチャーでの移動の可能性
車いすでの移動の可能性
エレベーターが止まった時の方策
背負って避難できる患者とそうではない患者のリスト化
救助担当者の決定
災害時医療訓練の実施
避難時に必要な医薬品、医療機器の整備
家族への連絡経路の確保
 
その時にもっとも重要なことは安全な医療体制整備です。

医療安全は、医療の軸となる事項。日常業務のなかで意識を醸成し、医療の基本として徹底される必要。災害時だからと医療安全ということではない。日常医療が安全に実施されていないときに災害時医療における医療安全だけを語るのはナンセンス。但し、災害時に発生し、特別に問題となる事項についてはこれを抽出し、備えをしておく必要がある、と説明しました。
そして、災害時の混乱の中で迅速・円滑に医療を行うためには、実際に即した実用的な マニュアルを作成し、それに基づいた訓練を行わなければならないと付け加えています。
 
関東大震災南海トラフ地震の可能性が伝えられています。我々の力の及ばない事態が発生したときには仕方がないものの、必要十分な事項についてしっかりと計画し、いざというときに冷静に目的を達成できる環境をつくらなければならないことについて改めて納得した時間でした。