組織における権限と責任を明確にしておくことはとても大切です。
多くの企業においては、上位者が命令したり、何かを決めるという暗黙のルールになっているなかで、業務が行われていることがあります。支払いを行うときに伝票に押印するということも権限行使の一部ですが権限規程が整備されていなくても何等かの形で役割が決まり、仕事が進みます。
しかし、それだけでは漏れもダブりも生まれます。
例えば、誰にも許可を得ずに金額が小さいので勝手に取引を行ったり、あることについては課長にも承認を得て、部長にも承認を依頼しそして仔細なことまで社長が決裁するといったことがそれです。
仕事を合理的に進めるためには、役割を決め権限を委譲し責任を明確にする、という仕事のルールを明確にする必要がある所以です。
役割、権限や責任とは何かを説明します。
Ⅰ役割
まず、組織を動かすための組織における役割について説明します。
役割とは、社会生活において、その人の地位や職務に応じて期待され、あるいは遂行している働きや役目をいいます。組織で役職が決まり、あなたを課長に任命します、と辞令がでたとたん、役割が付与されることになります。
当然ですが、役割には責任が付随します。責任のない役職はありません。これをすることが任務、という職務が決まり管理職として成果を挙げなければなりません。
Ⅱ責任
責任とは立場上、当然に負わなければならない任務や義務をいいます。会社で何を行うときの義務を負うことですね。
任務や役割は責任が伴うので、期待される任務や役割が果たせなければ責任を問われることになります。ただ、責任には権限が付与されます。権限がなく、
任務や役割を果たすことは困難です。
Ⅲ権限
権限とは、個人がその立場でもつ権利・権力の範囲をいいます。
権利や権力というといかつい感じがしますが、権利・権力とは、ある物事を自分の意志によって自由に行ったり、他人に要求したりすることのできる資格及び他人を強制し、服従させる力をいいます。
会社のなかで命令したり、指示したりするのは、つきつめると役割をもつ者の権利・権力なんですね。
ここまでで、役割や責任、権限については理解できたと思います。
それぞれの関係を再度整理してみましょう。
- 役割を果たすためには、権限がなければならない
- 権限を行使する前提には、責任がある
- 役割を果たせないということは、責任を果たしていないこと
- 構成員が責任を果たせなければ、組織目標が達成されない
- 責任を果たすことは管理者・監督者の使命
結構、奥が深いですね。
これらの役割や責任、権限を明らかにしたものが(職務)権限規程です。なので、権限規程がないと、組織があるべきかたちで動けないことが分ります。
とはいっても、人数が少ない小規模の組織では、社長に全権限と責任があります。
なので、社長が権限規程そのものである、ということができます。社長がすべてを背負い事業が行われます。
しかし、規模や人数が大きくなると、そうはいきません。
社長一人では手が回らなくなるのは明白です。役割をもった管理職が任命され、権限と責任をもって業務が進められます。権限の委譲です。何でも自分で仕切りたがる、権限移譲ができないトップは自分の限界を超えたときからどこかに不効率が生まれ、問題が多発し墓穴を掘ります。
組織に任せるけれど責任はとる、という姿勢で権限規程をつくることが事業成長のポイントに気付かなければなりません。
なので、事業拡大の時点でのルールを決める、そのための規程です。組織が一定規模になっているのに、権限規程がなければ、前述した混乱が生まれます。
自社の権限規程の有無、その内容が適切かどうかについての検証が必要です。