よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

リーダーの情熱が枯渇すると組織は衰退する

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言わずものがなですが、組織は人で構成されています。なので、組織がうまく機能するためにはさまざまな分野の自立した社員が、それぞれの得意分野における技術技能を組織に提供し、相互の連携をもって成果をあげていくことが必要です。
 
組織の進む方向を決め、具体的な手法を設定し計画を立て、社員が納得しながら物事を進めていくことができれば組織力が発揮されて大きな成果を挙げることができます。
 
ここでいう納得は、個々の社員が自らの仕事を受容れるだけではなく、社員同士やそれぞれの社員が所属する小さな組織、すなわち「機能をもったチーム内やチーム間の衝突を回避させ協力して仕事を進める」ことへの受容も含めています。
 
納得のためにはとても大きな力が必要です。
 
組織には、積み上げでミドルアップの改革を進めていても、トップの一言でそれらが否定され、ミドルアップした幹部がみごとにやる気を失いネガティブな方向に進む組織や、いくら檄を飛ばしても、リーダーが信任されていないので、社員の協力を得られない組織、そして逆にリーダーが先頭に立って前に進んでいくものの、社員に能力のある者がいないので改革の進捗が遅い組織などがあり、仕事を進めていくうえで、さまざまな障害があります。
 
成功のために社員の受容を引き出し組織の活度を維持し高めていくためには、リーダーの情熱や組織をまとめる高いリーダーシップが必要となります。私はリーダーの情熱が人一倍であり、合目的的であれば、社員は力を発揮する筈だといつも考えています。
 
例えば、前述した「リーダーが先頭に立っても、改革の進捗が遅い」というケースは、リーダーの情熱が、社員の心底からの受容を獲得していないため、社員の力が発揮されなかったという考え方も成り立ちます。
 
まずはリーダーの強い情熱が必要であり、それが組織を動かす原動力になることは間違いがありません。そしてそれを受けて成果を挙げることへの喜びを感じることのできる社員の存在が必要です。
 
ただ、人が育つ組織は、まず一定程度の成果を挙げる集団がいて、彼らのなから人材が育成されるという実態があります。力ある社員が独りもいない組織からは、いくらリーダーが奮起したとしても、スタートを切るまでに多くの時間を要すると考えています。
 
「リーダーの情熱と社員の力量」が組織の活度を高めるといってもよいかもしれません。
 
いずれにしても、組織をけん引するリーダーの情熱が組織の運営及び成果獲得には不可欠です。リーダーの情熱の源泉はどこにあるのでしょうか。
 
長い間、「リーダーシップとは何か」が研究されてきましたが、早稲田大学大学院の入山教授は『リーダーシップ論の境地は、リーダーが自分のビジョンは何か、自分は何者で、何をして生きていくのかを一人ひとりが深く内省し、そのビジョンを啓蒙し合い、リーダーシップを発揮していくことなのだろう』(世界標準の経営学)と説明します。リーダーは情熱を失わないよう「自分は何者で、何をして生きていくのか」を常に問い続ける必要があります。
 
今の環境では絶対に日本の景気は回復しないといわれています。コロナではなく、それ以前から先が見えなかった日本。いずれ一度はすざましく悪化した経済環境を迎えることは明らかです。過去、懈怠のなかで積み上げてきたツケを払わなければならない時期が到来します。
 
ここから先、自分を自分たちで守らなければ、だれも助けてくれない時代になります。自分は、そして組織は何をしていかなければならないのかを考え行動しなければ、未曾有の危機に直面することは明らかです。
 
リーダーが情熱をもって自らの使命を果たすため、構成員とともに闘い続ける組織だけが存続し続けることを認識しなければなりません。
 
今、厳しい時代を乗越えるため、リーダーの覚醒、社員の自立と連携が求められています。