よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

金融機関とどう付き合うか

医療機関は金融機関との取引を避けられません。

いま日本が置かれている現状を鑑みると、金融機関との関係づくりがより重要度を増してくる時代になりました。

 

医療機関は金融機関と密接な関係をつくり、常になんらかの形で彼らの力を借り組織運営を行っていかなければなりません。ただ、業績が良ければ誰でも取引をしてくれますが、業績が悪化すると蜘蛛の巣を散らすようにいなくなる金融機関では困ります。

 

そもそも地域医療を守ることは地域住民の健康を守ること、それは地域経済の発展につながり金融機関の取引を増やします。その為にも金融機関な医療機関を支援する。なので地域医療と地域金融は切ってもきれない関係に置かれているといっても過言ではないのです。

 

随分前に内需拡大の救世主として医療や介護が注目されてから、医療機関に一層興味をもち、多くの金融機関で医療機関を担当する部署が設置されました。当該部署を通じ、融資や運用、リース、年金、保険、口座引き落とし、提携先・M&A先紹介、不動産仲介、業者斡旋等々金融機関からはさまざまなサービスを受けることができます。

 

取引を行い支援を受けるためには、金融機関の担当者に対して、毎月情報提供を行う必要があります。(私も銀行員でしたが)金融機関にはもともと親しい取引先を大切にするという文化があり、親密化すればするほど担当者が親身になって支援してくれる傾向にあります。

 

困ったときだけ連絡をとるといった姿勢では、この関係が構築できず、いざというとき助けてもらえません。財務的背景のコンディション(条件)は必要だとはいうものの取引は結局は人間関係から生まれることは間違いありません(ただ、ご承知のように金融機関では人事異動が頻繁であり人を通じた組織自体との親密な関係を誠意を持って対応する必要はありそうです)。

 

情報提供ですが月次の状況をただ説明するのではなく、患者数の変化やベッドの稼働率や平均在院日数、紹介率の数値を提示し、また患者の動向、他医療機関との比較優位の開示など、現状なぜこの状況であるのかについても理解してもらえるよう心がける必要があります。

 

なお、月次試算表や決算書だけ見ていても、現在は判るけれども将来がみえないと担当者が思うことがあります。医療制度改革や医療圏における他病院の動向、医師の去就、看護師定着率、新患率、実患者数、稼働率、平均在院日数、オペ数などの情報(動態情報)を織り込んだ事業計画を立案することで、金融機関を安心させることも一法です。

 

金融機関はそれらを閲覧、状況を聴取し納得することで、有利なサービス提供や、問題がない範囲で他病院の情報等を伝えてくれるなど、良い関係ができあがります。過去にない姿勢を以て金融機関との付き合いを強化しなければなりません。

 

ただし、金融機関と親しく仮に有利に取り計らってもらえるからといって、過大投資や冗費を発生させるののはナンセンスであり、借入は安易に増やしてはなりません。

 

BEP(損益分岐点)分析に基づく短期利益計画、投資経済計算による回収検討(投資経済計算)などによる投資を行うこと、結果として自己資本比率を30%、できれば40%以上とすることなど、財務的な要請を守らなければなりません。

 

もちろん、待つ医療から出向く医療を行うためには、医療のすそ野を広げるための、健診や在宅医療、サテライト展開、他事業とのコラボライトなどを視野に入れる必要があり、投資をしないという選択肢はありません。

 

しかし、少子高齢化のなか患者や働き手が少なくなるなかでの新病院建設などについて保守的な考えの元での投資が必要になることを忘れないことが大切です。

 

常に自院の財政状態を考え、それ以前に営業(医業)利益や営業キャッシュフロー確保のための政策を採用し、堅実な経営を行えるよう主体的な行動が求められます。

 

自己資本で全てを賄えるとしても金融機関との何らかの取引を行わないで組織運営を行わないわけには行きません。

金融機関を有効活用するためには、

・情報提供を怠らない

・静態情報だけだはなく動態情報を提供する

・未来を見据えたうえで保守的な運営を行う 

ことが大切です。なによりも常にマーケティングを怠らず何を行うのかを決め、決めたことを確実に行う、必ず成果を挙げるという姿勢でのマネジメントが必要ですね。