よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

患者としての立場から

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 ある大学医学部のエマージェンシーの教授から、石井さんの不幸は、大学病院の中をみていないことだ、といわれたことがあります。そのときには、何を話されているのかを理解できませんでしたが、今回自分がそうした属性の他の病院の患者になってみてその理由が分かったような気がします。
 
 まず、日頃我々が各病院で仕組みづくりを行っている、DPC上の、外来即入院の是非や、持参薬管理、他科受診禁止、検査や撮影のセット化やゼネリック、パス期間(私はパス上は何日ですかと聞くと、主治医からそれは患者さんの検査や治療が完了したときといわれ、耳を疑いました※)、手術日までの期間短縮が、あまり重視されていないというだけではなく、医師、看護師さん、スタッフの驚くほど高いモチベーションや人間性、システム自体がとてもうまく機能していることに感心をしています。
 
 さまざまな改善を進めていることは間違いがありません。そもそも、この病院に入院したのは近所の診療所からの紹介が基礎でした。離れた地域にありますが、連携が迅速に行われ、情報共有が的確に行われていることも、当然とはいえ感心の一つです。
 失礼ながら、私も仕事がら、毎日の病棟で行われる医療や看護、他部署との連携や、システム、一人ひとりのスキルや応対をつぶさにみさせてもらったことはいうまでもありません。そのうえでの話です。
 
※もちろん、パスは整備されているし利用率も高いレベルにあります。
 
 当院にも、しっかりとした経営企画セクションがあり、一定の評価を行っているし、高いレベルで病院改革を行ってきたことも広く公になっていることもニュースで知っていました。
 
 一方で、何年も前になりますが、「患者が減少し教授会で増患対策の話がでたんだよ」と話をしてくれた関西の大学病院の大学教授もいらっしゃることも確かですし、また、病院経営管理の教授が各病棟に目を光らせ、しっかりと利益をあげている著名な国立の大学病院も知っています(この病院の師長さんは、私のサードレベルのレクチャーを受講していただいたときに、1億円のコスト削減プロジェクトの話をしてくれました)。
 さらに、DPCを入れた当時、「教育機関としての役割に割く時間が不足した」と話す地方大学病院の教授や、「利益利益といわれて疲れます」と疲弊している医局員から利益に執着する病院の姿勢も聞きました。
 
 これからのDPC病院は三群はいうに及ばす、一群であろうと二群であろと、最終的には利益を出さなければ生きていけない環境にあることは間違いがないと思います。
 
 しかし、一つ言えることは、どこかでしっかりとマネジメントをしながら、現場では結局はそうした質の高い実績を積み上げていくことで、組織全体の医療の質が高まり、評価が増し、患者が増加するのだということです。
 「利益は患者評価の証」と、常に私が顧問先の病院でお話していることがそれです。

質が高ければ評価され、実患者数増のなか、結果として適正利益が得られる仕組みです。
 ちなみに本日、外来での検査を受けに午後4時すぎに毎日4千人をゆうに超える患者を受け入れる巨大な外来棟に行ったときに、患者さんが多く、まるで朝のような混雑具合で、驚きました。
 
 補助金や税金の問題はあるとしても、日本にこうした医療があることは、安心です。
 たぶん、マネジメントサイドからこうした大型の病院に入っても、この感覚は判らなかったと思います。
 一人の患者として10日間入院しているからこその印象だということを理解しています。その意味で、この経験はとても貴重な時間であったと理解しています。
 
 もちろん、大学病院だけではなく、同じような医療や看護、そして部署間のリレーションがとれている、質の高い病院が多数あることはよく知っています。しかし、患者の立場での経験がなかったことが今回のコメントの要因であり、無知な自分が恥ずかしいと思います。
 
 ただ、日本の財政逼迫を受けて、これからの医療制度改革のなかで、多くの病院がいずれはさらに大きな変革の波を受けることは明らかです。
 
 米国や他国での難しい医療の現状に鑑み、国民皆保険制度のもとで、多くの病院は医療と財政のバランスをとりつつ改革を徹底して行うこと、そして、医療にとても恵まれている日本人が、もっともっと自己管理を行い、健康でいつまでも人生を謳歌できるよう、しっかりとセルフコントロールを行い、貴重な社会資源としての医療を、守っていかなければならないのだとも改めて思いました。