よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

これからの医療、介護の進む道

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 医療環境が益々厳しくなってきました。7:1の看護必要度の厳格化をはじめ、大型病院とそれ以外の病院との峻別が進み、急性期のなかでも役割分担がより鮮明になりました。
 
 このようななか、多くの病院は戦略の見直しを行う必要があります。
 
 とりわけ急性期で地域密着型医療を展開する中核病院は、これからどのように生きていくのかについて十分に検討しなければなりません。
 
 DPC病院の生き残りをかけた闘いも視野にいれつつ、地域のニーズにどのように応えていくのかを考える必要があります。
 
 優れた医師がいるとしても、病院は組織で動いているため、病院の方針やそれに基づく戦略が、日本が置かれている現状にそぐわない医師だよりの医療サービスを提供し続けると、取り返しのつかないことになります。
 
 自院の経営資源をしっかりと分析し、求める病院像を設定し、現状との乖離を埋めるために、何をしていくのかについてしっかりとしたスケジュールを立案したうえで、組織一丸となって真剣にその対応を行っていく必要があります。
 
 ある地方の元厚生局長が、「診療報酬の改定に目を奪われて、それに追従することだけを考えているのではだめだ。日本の少子高齢化の現状、介護保険のこれから、財政、社会保障に対する取り組み姿勢をみれば、医療がこれからどのようになっていくのか、容易に想定できる。そこにターゲットを定めた活動していかなければ、生き残っていくことはとても難しい」と話をされました。
 
 介護保険のこれからを考えてみても、このままの状況で介護保険が維持できないことは明らかです。
 
 介護給付の減少や保険者の年齢引き下げ、保険料アップ、さらには介護報酬自己負担増という傾向はこのまま益々拡大していきます。
 
 消費税増税、年金削減といったことが明らかになっており、介護給付の切り捨て、対象者の引き上げといったことをも含め、多くの課題があり、介護保険と医療保険の一体化の議論も始まっていると、前出の元厚生局長は、話をしてくれました。
 
 そうした意味から、地域包括ケア病棟の出現が、介護期医療や介護一体化のながれを受けた病床であるということが容易に想像できます。
 
 今回の改定は、まさしく急性期医療と在宅医療までの橋渡しの領域をより鮮明にしたながれであり、その流れを受けて、医療サービスをどう展開するこかについて、介護事業をも含めたながれをもって病院戦略を決定していくことが求められています。
 
 介護事業は、医療法人が行うことが適当であるものとなりつつあります。大規模介護事業者は残ることができたとしても、医療、看護、介護の全体をしっかりとトータルで管理する事業体が最も、有効なサービスを提供できることになります。
 
 中小規模で介護を行っている事業者は、介護保険の動向に大きく影響を受ける経営を行わざるを得ず、また介護スタッフを雇用することや、看護師を採用することが困難となり、事業を継続することがとても難しい状況となります。
 
 医療から入るにしても、介護サービスから入るとしても、訪問看護や、訪問調剤をも含めた一気通貫での患者や利用者をしっかりみる組織として医療機関がもっとも適切な機能を提供することができますし、合理性をもって事業継続を行うことが可能です。
 
 医療機関が行う一連の事業は、サービス付高齢者向け住宅や介護施設、在宅での医療看護介護を組み合わせることで、より地域ニーズに応えられるトータルサービスを提供できます。
 
 医療だけに固執せず、どうしたら地域住民を守ることができるのかを考えたとき、これからの中核病院の戦略は、その方向をもってより鮮明になることが明らかです。
 
 総合的な医療、看護、介護を行うために、まずは、日本はどうなるのか、地域はどのように変化していくのか、日本の医療や介護はどのようになっていくのか、自院はどこを目指すのか、伸びしろはもちつつ自院の経営資源をもってどこまで目指すことができるのか、をしっかりと考え、明確な戦略を立案し、先をみた取り組みを、いままでにない勢いをもって、早急に行っていくことが必要です。

写真:大角医院の中島医師