よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

診療報酬改定とその先にあるもの

イメージ 1

 診療報酬改定の内容がほぼ出そろってきました。各病院は、診療報酬がどのように変わるのかにより、大きく収益構造を変えることになります。
 診療報酬の改定の結果をみながら、自院は急性期でいくのか、7:1を維持できるのか、地域包括ケア病棟や病床をどのように活用していくのか、在宅復帰率をどのようにクリヤーしていくのか、あるいは医療療養病床を長期療養型にしていくのか、在宅復帰型にもっていくのかといったことを考えなければなりません。近隣の病院との役割分担や自院の強みを活かしどのような方向に進んでいくのかを決めていかなければなりません。
 
 戦略立案が重要な意味をもちます。何かに拘泥したり、意地をはるのではなく、できる範囲で最大限、自院の成果を高めていける病院方針を提示していかなければなりません。
 外来についても逆紹介を行う、外来をとる、さまざまな方針が打ち出されるし、介護期医療を充実、あるいは新規に進出するなどの政策が必要となることでしょう。
 
 しかし、マネジメントとして重要なことは、診療報酬を得るために行わなければならない事項を徹底して検討し、そのための道筋を組織につけていくことです。こちらの方向に進んでいこうというときに、それを阻害することが必ずでてくるし、それを実施することができないことをもって、何かを明らめてしまうということがあるからです。
超短期、短期、中期で行うことを明確にして、いまはだめだけれども、このようにしていこうとうつところをつくり、そのために時間をかけてもやり抜こうという意志を組織に貫き通すことが求められています。
 
 人は楽な方向にどうしても進んでしまいます。何かをすることは骨の折れることですし、また面倒な何かをしないkとおが許されるのであれば、何かをしようと思わない傾向にあることもありえます。何かに対する思いが強くなければ、何かを続けていくことができない現状をしっかりと認識して、改めて思いを強くする誰かの存在が必要な理由です。
 
 自院は何をする病院なのか、ということについては医師が入れ替わったり、看護師の入退職があるなかで、なかなか難しいところもあります。とりわけ総合病院的な病院で、いくつかの実質的な診療科が病院を支えている
場合には外科が悪くても、整形外科があるし、消化器内科がよくなくても循環器がある、といった免罪符的な発想がある傾向にあります。
 確かに病院の医業収益は、多くの診療科があり、それぞれの毎月の医業収益が上下しても、必ず同じような水準に収斂することが一般的であり、組織のなかで自然な各科の結果としての調和が保たれていることが多いのも事実です。しかし、そうであったとしても気を抜くことなく、自院の進む方向をより鮮明にし、そのための行動を地道に行っていくことが大切です。
 
 この部分を外すと、診療報酬改定のたびに、自院の構造を変え、重点活動を変え、そして成果を挙げづらい組織が生まれる結果を出すことになります。
 
 今回の改定からは、定められた平均在院日数の観点から、病院病床は削減するか、増患する。そしていわば中継基地を経たとしても、在宅に戻すといったことを国が目指していることが容易に理解できます。そうであれば、よほどの医療資源をもっていない組織であるのであれば、そのながれをどのようにうまくつかみ、そのなかでの自院の医療看護サービスをどのようにつくりあげていけばよいのかに焦点を当てた戦略を立案することが有効です。
 
 病床を転換し、その病床を維持するために必要な医療資源を集め、自院の各部署が連携をとり、円滑に業務が進められるよう指導していくことが当然のように行われることになります。
 これらが円滑に進むよう、マネジメントが徹底して現場とあるべきかちの乖離をなくす調整を行い、期日までに
成果をあげる体制をつくることが求められています。
 
 人、情報、時間、カネ、モノといった経営資源一つ一つが活性化できるよう、仕組みをつくり教育を行い、リーダーシップをもって成果をあげていかなければなりません。
 
 人には何が必要なのか、人と人が衝突なく関係性を高いレベルでもつためにはどうすればよいのか、情報とは何か、どのように収集するか、またそれら得た情報をうまく管理する方法は何か、時間をどのように活用すればよいのか、カネはどのように調達し、運用していけばよいのか、キャシュフローはどのようにコントロールするか、さらにはモノはどのような設備投資が必要なのか、既に投資した設備はどのように活用していくのか、そのためにはどのような活動が必要なのか…。考えれば考えるほど、詳細かつ仔細な活動が必要となります。
 
 各部署のそれぞれの行動が病院の胆であり、最重要な事項です。しかし、それらをどのように目標に向かって勝翔していくのかはマネジメントの巧拙に依存しています。診療報酬改定を受けた、組織活性化について議論する必要があるし、そのための仕掛けをつくっていかなければなりません。
 
 質が高く合理的な医療を行い、多くの患者さんに来院していただき、しっかり治療を行ったのに、早期に退院していただく。これは、受け皿づくりをも視野にいれた行うべきkとを行うということでもあります。
 急性期だけではなく、精神科医療も、高齢者医療も同じです。病院病床削減を志向するながれを止めることはできません。
 これから1年が正念場です。皆で熟考し、地域医療をそれぞれの地域でどのように護っていくのか真剣に議論すべき時代がきたと理解しています。
 
写真は、二子玉川メディカルクリニック、の伊井先生です。