よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院活性化のポイント

 病院の優劣がついてきた。常に強いリーダーシップを発揮するリーダがおり、すぐれた経営幹部がいる病院は、間違いなく成果をあげている。しかし、その逆は淘汰される。
 
 よい病院は、当たり前ではあるが、スキルの高いスタッフに恵まれた医師がしっかりとした医療を行っている病院である。急性期にしても、回復期にしても、そして医療療養病床にしても同様である。そして、さらにスタッフがしっかりと連携を拡大している病院が増患していることも条件の一つである。
 連携室が増患している病院の特徴は、スタッフが地道に病院や診療所を廻っていること。そしてそれだけではなく、双方の医師の調整を図りながら医師と医師をつなげていることが特徴だ。
 
 先日訪問したある病院で、連携を担うスタッフがこういった。私は、あらゆる診療所を廻り、紹介の話があると、当院の医師に電話連絡をとり、情報を提供し受け入れのための準備を怠らない。
 
 だから紹介元から紹介の依頼がくると快く受け入れてくれるし、医師同志の会話も進む。しかし、他の担当者はこの作業をしないので、院内の医師との疎通がとれず、そんな話は聞いていないとなり、タイミングが合わないこともよくあり、結局紹介を断るはめになる。紹介先の医師は気分を害し、次には紹介をくれない。
 
 もちろん、件の彼は返書や手術後の手紙、退院時の情報提供についてはしっかりと管理する。そうではない担当者は、いったいどうなっているんですかという質問を紹介先の医師から受ける。後手後手に回ることは命とりになる。
 
 救急車も同じだ。消防署を廻り、救急救命士とのコンタクトをよくとっている担当者は明らかに救急車搬送患者数が増加する。その担当者の医師との連携のおかげで、消防署も安心できるとの結論だ。
 
 もちろん、連携活動のなかで自院の医師に対する情報は伝えるし、場合によれば直接医師同志が会話できる環境を常につくりだす。
 
 こちら側の医師を知っていれば、紹介先も無茶な患者は送ってこない。この患者はここ。この患者はあそこという判断基準があるからだ。その前提として、やはりもっとも大切なのは医療の質。医師やスタッフ全員が患者から常に感謝される医療を提供していれば、病院の評判は驚くほどあがる。とりわけ地方であればなおさらだ。
 
 たった、10分の立ち話ではあったが、常に真摯な姿勢でなんとか増患し、自院の機能を提供したいという思いが成功をもたらしていることは間違いがないと、確信した。

彼が連携を強化したこの病院の診療科は、常に一定の患者数を確保し、手術件数も増加しているため、医師やスタッフは益々経験を積み、早期に退院支援を行うことができている。
 それが医療の質向上につながり、評判を高め、患者を呼ぶことになる。善のスパイラルがつくりあげた本来の連携のあり方だ。
 
 当然のことではあるが、正直で誠実、そして医療に対する思いがある担当者とそうではない担当者でこんなに結果が違うのかということを思い知らされた、当たり前の活動ではあるが、勉強になるエピソードであった。