よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院はいま何をすればよいのか

 以下は、ある法人の経営方針を病院に降ろし、病院がそれを具体的な目標に設定する過程で、病院で説明した資料の一部です。今、医療に求められているのは、医療人一人ひとりの覚醒と行動です。思いをもち、医療に自分の使命を見出し、成果をあげるために日々行動できる職員しか残れない時代になることは間違いありません。病院守り、地域を護る、何よりも患者さんを守るために何をしなければならないのか。自分が成長することをもってしか、その目的を達成することはできないと、私は考えています。

 
1.はじめに
  〇○病院においては、職員の皆さんはそれぞれ課題をもち、活動をしていることがよく分かりました。職員の
皆さんのやる気を感じました。しかし、具体的にどのように進めていくのかといった点での議論がまだできていな
いのではないかという思いはあります。
 
2.目標の設定方法
  したがって、
  (1)法人の方針を達成すること
  (2)院長を中心としてそのための具体的な活動を行うこと
  (3)病院として各部署が共通して行うべきことを行うこと
  (4)各部署がこれを解決していこうという課題を目標化すること  
 といったことが必要です。
そのための具体的なやり方がわからなければ、本部を活用すること、また本部を利用することが必要です。
   
3.法人の方針を達成すること
 法人は、厳しい医療環境を予測して、個々の病院が人材育成を行い、また生産性の向上行うなかで、社会資
である病院を最大限活用してもらうために、増患を行うといったことを各病院に期待しています。 
   
 病院は院長を軸として、職員一人の力により支えられています。職員一人ひとりが成長することでしか病院は
成果をあげることはできません。
 (1)職員全員が一歩でも力をつけ成長すること
 (2)仕事のやり方を見直して、不効率をなくす、無駄をなくす、もっとうまく、はやく、合理的に成果をあげられる
 ようにすること
が必要です。
 
 職員が力をつけるということは、①職員全員が、使命感をもち、他の誰にもまけない患者さんや地域に対する
思いを内心につくりだすこと、②各職種において他病院に負けない技術技能を身に着け、誇りをもった仕事がで
きるようになることを意味しています。
 また仕事のやり方を見直すということは、業務を一つ一つの手順に分解し、ノウハウを整理し、標準化すること
や、標準化されているものが、本当に優れた方法であるのかを常に見直し修正をかけることを言います。
 
 病院は、上記が行われるよう教育システムをつくるし、またマニュアル作成や業務改善を通じて生産性を向上
させることに尽力しなければなりません。法人もそれを支援します。さらに、自分達が優れた医療を提供すること
ができれば、さらに多くの患者さんを受け入れ、患者さんやご家族に喜んでもらうことができます。自分達の行っ
ていることを広く地域や患者さん、ご家族に知ってもらう活動を行い、誇りをもって増患を行う必要があります。
 
4.院長を中心としてそのための具体的な活動を行うこと
 法人は理事会、そして理事長の意思により動きます。最終的に理事長の決定したことは絶対です。それがどの
ような内容であれ、意思決定にしたがった行動をとらなければ組織は成り立ちません。もちろん、意見具申や議
論が否定されるものではありませんし、積極的に行われる組織が風通しのよい組織であるといわれています。
 現場のあり方や考え方を伝え、質問を行うなどのプロセスは必要ですし、それを受け入れるリーダーでなけれ
ばなりません。しかし、一旦決定されたのちはそれに応えていくこと。それが組織の理論であり、決まり事です。
それが行われなければ組織は統一した行動をとれず力を発揮できません。
 
  そして、病院は院長が責任者として全責任を負って運営される仕組みになっています。法人の意を受け、その
具体的展開を院長が決定し、院長が指示し、病院運営が行われます。
勿論、院長がリーダーとしての特性をもち、各部署の責任者が院長の指示を受けるに足る十分な資質をもち、さ
らに各部署責任者が責任をもって自部署の活動を目標達成のために一定の方向に誘導していくことができなけ
れば組織は機能しません。
 それぞれの役割を果たすことが期待されています。
 全職員が院長のもと、同じ志や目標をもって、他者のことを思いやり、仲間として共に行動し、成果をあげるこ
とで共に喜ぶことができる組織でなければ、地域に大きく貢献することはできません。
 院長の元で、利己ではなく利他の思いをもって行動できる仲間なのか、職員なのか、が問われるところです。
 
5.病院として各部署が共通して行うべきことを行うこと
 まずは、病院としての重要事項を達成する。病院としての重要事項を行う必要があります。
  (1)教育
  (2)生産性向上
  (3)増患   
です。この目標を病院としてどのように達成していくのか、具体的な方法を検討する必要があります。各部署を
超えて病院組織全体として行うべき課題です。勿論、各部署は病院が決定した目標を受け入れ各部署の目標
の一つとして達成しなければなりません。
 
6.各部署がこれを解決していこうという課題を目標化すること
 上記に絡めて、各部署がもつ課題を目標化し、達成していく必要があります。
各部署が挙げた課題は、必ず上記3つのカテゴリーに含まれます。したがって、各部署の課題を整理して、上記
のカテゴリーに含めたうえで、各部署の目標とする必要があります。
 
7.まとめ
 上記を勘案すると法人が求める病院、そして各部署の目標は、
  (1)教育システムをつくる
  (2)マニュアルを作成する
  (3)業務改善提案を行う
 ということであるし、
    また、
  (4)各部署が挙げた課題を達成するために、教育、生産性向上、増患のカテゴリーに含めた目標の設定を
  行う
 ことになります。
  (1)~(3)については法人が制度の導入を提案しますので、各病院、各部署がそれを検討し、病院としてど
のように進めていくのかを検討して下さい。
 また、(4)については、課題を整理した資料を閲覧しながら、各部署の課題を明確にしていく必要があります。
上記の(1)~(3)とまったく同じになる可能性もありますが、それはそれでよいと考えています。
職員一人ひとりが今より明日、明日より明後日というように力をつけ、皆で成果をあげて喜べる組織運営をして
いくことができれば、各職員の毎日は今にも増して
 遣り甲斐のある、満足できる日々になると考えています。悔いのない毎日を生きることができるよう、皆で力を
合せて成長していきましょう。