日本の財政が逼迫していることは、既に多くの国民が理解しています。しかし、具体的にどのような未来があるのかについて明確な絵柄を描ける人は少ないと思います。
医療の生末や介護のこれからについても、出生率が低いまま、高齢者が増加すること、就業人口が減少していることから、国民生産は小さくなり、海外での収益を得るにしても、限界がでてくることは誰の目にも明らかです。そのようななか、どのように現状に抗えばよいのか。
まずは、足元をかため、いま行っている事業をどのように生産性の高いものにしていくのかに注力すること。さらには、国内で人口の多い地域で、医療や介護を行うことが基本的な発想になります。
規模の拡大による生産性向上をも含め、できるだけ勢力を大きくする、多様化することが必要です。もちろん、むやみに多角化を行い、採算がとれない事業に手を出すのではなく、現在の事業の延長線上にある、あるいは現事業がよりよい成果を埋める領域への進出が期待されることはいうまでもありません。
結局は人の教育と、仕組みの見直しになります。これを日々の業務に埋没し、手が付けられていない組織が如何に多いことか。我々も同様ですが、やろうということについてどうしても手をつけたり、深く行っていくことが難しい現状にあります。
結局はあれもこれもというところからは何も生まれてこないけれど、あれもこれもしなければ、新しい成果を得ることができないというジレンマがあります。結局強い意思により、1日のうち2時間は新しいことに費やすというながれをつくらなければならいのだと考えています。
我々の立場からすれば、社会保険が壊れかけていく現状において、TPPがまとまれば、すでに萌芽はあるものの、自由診療や混合診療が現実のものになること、そこにおいてはプロフェッショナルな運営主体が多くの病院を管理する要になる可能性があること、ファンドがそれらの病院に資金を出し、再生及び安定的な運営を支援すること。国交省も動き始めていますが、ヘルスケアリートにより資金を広く集め、医療介護に投入すること、などが想定されています。
これらについては、既に欧米やアジア、とりわけシンガポールやインドネシアをはじめとしたASEAN国々で行われていることであり、荒唐無稽な話をしているのではありません。
間違いなくこれからの日本の医療は、世界標準の運営形式にならざるを得ない、という思いがあります。
日本のフリーアクセスが守れるかどうか、また比較的負担なく医療を受け続けられるかどうかということについては疑問がありますが、なんとか医療を残す、そして連続したケアのなかで介護を残す試みが徐々に始まります。そのなかで何をしていくのか、大きなテーマがあります。
何れにしても、それぞれの立場により、現状を俯瞰したうえで、何をしていけばよいのかについて慎重に戦略を練り、内部戦略立案、外部戦略立案を徹底して行うことが期待されています。