よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

リスクマネジメントの体系的変革(13)看護観察義務違反

看護観察義務違反があります。
看護過程は、観察、診断、計画、実施、記録、退院要約といった看護の仕事の中心的なながれを言いますが、この過程で発生する義務違反が看護観察義務違反です。

実際に訴訟の対象となるのは、看護診断ができていない、計画がずさんだということではありません。看護師が看護すべきところで看護ができていない、という結果が重視されます。なぜ、こうなったのか、それは看護師が正しく看護をしていなかったからだ、それはなぜか、看護師が正しく看護をするための計画がなかったからだ、それはなぜか…といったなかで看護プロセスに瑕疵がある、ということが誘導されます。

結局は正しく看護プロセスを廻していれば、防げたのにということが議論の対象となります。
あるべきアナムネ(観察)、正しい診断、正しい計画立案ができてはじめて看護が開始され、過程のなかでの観察が行なわれることで計画通り看護が行なわれていることが担保されることが必要です。

追加すべき事項は看護記録です。実施したこと、引き継がなければならないこと、患者さんの容態等伝えることが伝わらないために、事故が起こる。これもよくあります。記録が正しく作成されているかについて監査を行なっているか、といったことが問われるとともに、その前提として看護過程が正しく形成されているかどうかがチェックされなければなりません。

看護過程が正しく廻されていることによって、多くの事故が防止されると想定されます。

看護観察義務違反の事例にはどのようなものがあるのか、それを防止するためにはどのようなことを行なえばよいのか、それは…、といったかたちで看護観察義務違反を抑止するための5W1Hが決定されることが必要です。

但し、いかに看護過程が合理的に管理されたとしても、最終的には看護を行なうかた一人一人の技術技能が重要です。仕組みをうまく利用できない、疾患を理解していない、治療方法が判らない、薬の知識がないといった技術不足が事故を発生させる要因となります。他に必要な仕組みづくりと教育制度や評価制度
についても、看護観察義務違反を起こさないための体制整備が望まれます。