よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

リスクマネジメントの体系的変革(14)注意義務違反

これで、説明義務違反、看護観察義務違反、そして注意義務違反と訴訟の3大要因を説明することになります。判例を分析すると、結局はこの3つの要因によって医療過誤訴訟が発生しているのを再認識するとともに、これらを事前に防止するための仕組みづくりをしていくことが必要である、ということを記事にしています。

それで注意義務違反はどのように抑止していくのかということですが、これは以外と日常の行為すべてが注意義務違反の対象となります。すなわち、すべての部署で院内で行なわれるすべての業務が注意義務の対象となると考えて良いと思います。

したがって、しごく当然のことではありますが、日常業務をきちっと決められた通りに行なうこと、そしてそれらを前提として、正しい判断や応用動作ができるよう自らのスキルを高めておくこと、が留意しなければならないことになります。

結局は、医療の質を高めるために、常に仕事の仕組みの見直しを行なうとともに、見直しを行なった結果をマニュアルに反映させ、マニュアル通りに仕事をすること、しかし、想定できない事態が発生したときには、マニュアルを超えて考え判断し、応用ができる技術技能を高めていけるための教育制度、評価制度といったものが必要となります。

その以前に、前提として組織ヴィジョンの明確化や部門を通じて個々人の役割や機能を明確にしていかなければなりません。このように記載すると前述したように当たり前のことを当たり前にすること(これが一番難しいのは誰もがわかっていますが)であり、別に意識しなくとも日々そのように動いている、と思う方が沢山いらっしゃると考えるのが普通です。

しかし、ここで説明している考え方は概念ではなく、具体的な行動として理解していただくことを想定しています。より詳細に、より具体的に注意しなければならない事を注意していくことになります。
ただ、ブログのなかでは一つひとつを仔細にあげることができないだけですので、注意が必要です。

①マニュアルを作成
②個人の知識を組織の知識に、暗黙の知識を形式の知識に転換
③注意しなければ患者さんに不利益が発生するポイントを明確化
④ポイントをはずさないために、日頃どのようなことに留意すれば良いのかマニュアルを利用して教育
⑤個人毎の課題を用紙に書き出し、ここに職場内教育の対象とする
⑥評価制度によって、あるいは人事考課制度によって上記を愚直に遂行し、そして成果をあげたものは、 評価する
⑦正しく処遇する
といったながれをつくりあげていく必要があります。

過去に発生した医療事故の分析を行なうなかで、注意力散漫、集中できていなかった、別のことを考えていて…といった理由があがってきます。つまり注意力を強化する、自然に間違いのない仕事ができるよう仕事の仕組みを改善する、そして自ら仕事を創造できるよう知識と知恵をもつことになります。

過去の事例についても明らかにしたうえで、ケーススタディとして学習することが注意義務違反に関する事故の抑制につながることになります(続く)。