よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

多様な人材との協業について

自分の才能は限定的です。才能は「生まれつきの能力や、それによって物事を平均以上にこなせる素質(いわゆる得意分野)」をいいます。

 

その客観的評価法にはここでは言及しませんが、ある者が自分の意思で何かの仕事を始めたとき、自分の得意分野だけで物事を進めていくのは間違いなく困難です。

 

自分であればなんでもできるという思いや意思は必要ではあるとしても、実際上自分一人でありとあらゆることを期待値レベルで行うことはできません。

 

例えばどのような事業でも、マーケティングや戦略立案、事業計画立案、ガバナンス体制整備や実務や営業、組織開発、HRM、財務会計等、さらにそれ以上の分野においての対応が必要です。

 

仮にラーメン店一店舗を開業する場合であっても、間違いなく狭い範囲で上記が行われます。お店を繁盛させるためには、マーケティングとして出店の場所、商品の特性、価格、プロモーションを明確にするとともに、来店客数の見込みや仕入れ、変動費や固定費の分析、目標設定や目標管理、そして自分やアルバイトのシフト管理、マニュアルづくりやOJT、日々の段取り、時間管理や評判づくり、資金調達や漏れのない金銭管理、毎月の採算分析等がそれらです。

 

いわんや二号店を出店する、チェーン化するといったときにはより慎重な対応を行う必要があります。ラーメン店に勤務した経験を積んだ者であれば、おおよそのノウハウを持っている可能性はありますが、それでも成功体験の再現は環境変化により変動し、過去のやり方対応できる確証はありません。一人ですべてをやれると考えるの危険です。うまくいっていると思っても抜けていることが必ずあるのです。

 

試行錯誤を行いながら活動を行う多くの事業では信頼できる自分以外の才能(得意分野)をもった社内外の者との協働が必要な理由です。

 

ビジネス上、なぜ“仲間(協働者)が必要なのかを明らかにする理論には以下があります。

1資源依存理論(Resource Dependence Theory)

企業は単独では重要資源(人材・資金・知識・販路・許認可など)を完結できず、外部との関係で生存・成長する。仲間(提携先・共同創業者・キーパーソン)は「資源へのアクセス」を作り、依存リスクを分散する装置になる。

 

2リソース・ベースト・ビュー(RBV)/コア・コンピタンス

競争優位は希少で模倣されにくい資源・能力から生まれるが、それはしばしば“個人ではなくチームの集合知”として成立する。仲間は能力を補完し合い、「強みの束」を作ることで優位性を厚くする。

 

3関係的ビュー(Relational View:Dyer & Singh)

競争優位は企業内部だけでなく、企業間関係の中で生まれる(関係特有資産、知識共有、補完性、ガバナンス等)。仲間とは「関係そのものが資産になる」相手で、単独では出せない成果(共同価値)を生む。

 

4戦略的提携論/アライアンス戦略

不確実性が高いほど、提携・共同開発・販売連携などでスピードと範囲を確保するのが合理的。仲間は“時間を買う”存在で、学習・市場参入・規模拡大を加速させる。

 

5ネットワーク理論(Network Theory)

企業や個人はネットワーク上の位置(中心性、構造的空隙など)で情報・機会・影響力が変わる。仲間が増えるほど「情報の早さ」「紹介」「信用の移転」が起き、機会が増える。

 

6社会関係資本(Social Capital)

信頼・規範・互酬性・ネットワークが、取引コストを下げ、協力を引き出し、成果を上げる。仲間の本質的価値は“信頼の貯金”で、ピンチの時の支援や交渉力にも効く。

 

7ステークホルダー理論

企業は顧客・従業員・地域・行政・取引先など多様な利害関係者の支持で成り立つ。仲間は「支持基盤を形成する存在」で、正統性(レピュテーション)と継続性を高める。

 

8取引コスト理論(Transaction Cost Economics)

市場取引は常に最適ではなく、探索・交渉・監視・機会主義リスクなどコストがかかる。仲間(信頼できる長期パートナー)がいると、そのコストが下がり、取引が速く安全になる。

 

9ゲーム理論(協力ゲーム/反復ゲーム)

単発取引だと裏切りが合理的になりやすいが、関係が反復されると協力が合理的になる。仲間がいることは「協力が成立する制度(未来の反復)」を作り、長期利益を最大化する。

 

10探索と深化(Ambidexterity:両利きの経営)

新規探索(探索)と既存深化(深化)は求める能力が違い、1人/1チームで両立しにくい。仲間がいることで役割分担が可能になり、“攻め”と“守り”を同時に回せる。

 

11組織学習論(Exploration/Exploitation、知識創造)

知識は対話・共同作業・試行錯誤のプロセスで生まれやすい。仲間は視点の多様性を持ち込み、学習速度と失敗の質(検証の精度)を上げる。

 

12変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)

人は理念・意味づけ・一体感によって高い内発的動機づけを持てる。仲間がいると「共通の目的」が立ち上がり、個人の限界を超える推進力になる。

 

13心理的安全性(Psychological Safety:Edmondson)

チームで失敗や疑問を言える環境があるほど、学習・改善・事故予防が進む。仲間は単なる“人数”ではなく、安心して挑戦できる土台(再現性ある成長環境)を作る。

 

14チーム役割理論(Belbin など)/補完性

成果には多様な役割(推進、調整、分析、創造、実行、品質管理など)が必要。仲間が必要なのは、人は得意不得意があり、補完しないと“抜け”が必ず出るから。

 

15共有・分散型リーダーシップ(Shared Leadership)

複雑な環境では、リーダー1人が全て判断するより、権限と知性を分散した方が強い。仲間がいることは“判断の分散”であり、スピードと精度を両立させる。

 

結果として分類すると、

  • 資源足りないものを補い、依存やリスクを分散する(資源依存/RBA=リスクベーストアプローチ)
  • 価値関係そのものが優位性になる(関係的ビュー/提携)
  • 機会情報・信用、紹介でチャンスが増える(ネットワーク/社会関係資本)
  • 実行役割分担で両利き/スピード・品質が上がる(両利き/チーム理論)
  • 継続信頼が取引コストを下げ協力を成立させる(取引コスト/ゲーム理論)

ということになりそうです。

 

私毎で恐縮ですが、社会で経験を少し積んだあと傲慢にも信満々で一人で何でもできると思い込み、事業を始めました。長い間、さまざまな仕事を行うなかで真実を少しずつ理解し、なんとなく感覚をつかみ、上記の考え方のように行動しています。

 

事業を始めるときに、こうした考えを始めから知っておけば、先ずは謙虚に仲間づくりを率先して行い、もっと早く事業に必要なリソースを確保し、協業できたと考えています。そうすることこそが楽しくやりがいのあることだと心底感じています。

 

事業は彼ら信頼できる多様な仲間(人材)と共に作り上げるものであり、成果を共有することだと意識して行動すればよかったと、いまさらながらに残念な思いになります。

 

限られた時間ではありますが、今手掛けている事業について上記をより一層胸に深く刻んだうえで日々の業務に取り組みを続けていきたいと考えています。

医師がマネジメントを学ぶ意味

日本の医学部教育には医療マネジメント(経営・管理)に関する体系的な講座がほとんど用意されておらず、医師がリーダーシップやマネジメントを担う場面に対応しきれていないのが現状です。しかし、医療の質向上・効率化・持続可能性を目指すうえで、医師が経営知識を身につけることは極めて重要です。

 

医師がマネジメントを学ぶ意味は、単なる「経営スキルの習得」にとどまらず、医師がマネジメントの知識を習得することで、医療機関全体の運営力が向上し、医療の質の維持・向上や組織全体の持続可能性が強化されると期待できます。いくつかアイテムについて説明します。

 

1.  医療現場におけるリーダーシップ

医師は診療だけでなく、多職種チーム(看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、事務職員など)を統率する立場に置かれます。チーム医療の重要性がますます高まる現代において、医師には、高い専門性に加えて、組織をまとめ、人を動かす「マネジメント力」が求められています。ここではリーダーシップが必要となります。リーダーシップとは、組織目標の達成に向けて、チームを鼓舞し、方向性を示し、メンバーをまとめていく力のことです。

 

 医師として豊富な経験を持つだけでは、必ずしも優れたリーダーになれるわけではありません。ここで必要なのがリーダーシップ理論や人材マネジメントの理解です。目標管理(MBO)やバランストスコアカード、1on1、フィードバック技法などを活用することで、

  • 個々人の能力を引き出し達成感を得る機会を提供する
  • チーム全体のモチベーションを高める
  • チームのパフォーマンスを上げる

ことができます。

 

2. 経営的視点の導入

医療機関の経営は保険診療であれば、社会保障制度や診療報酬に強く依存しており、また自由診療においても、安定運営を行うためにはマーケティングや戦略、財務会計・キャッシュフロー等の理解が不可欠です。マネジメントを学んだ医師は、

  • 医療機関の収支改善や資金調達
  • 医療機器導入の費用対効果分析
  • 新規サービスの導入判断

を主体的に担うことができます。

 

3. 医療資源の最適配分

病床数、医療スタッフのシフト、手術室や検査枠の稼働管理など、医療は「限られた資源のマネジメント」が不可欠です。財務や部門別損益計算、患者別疾病別原価計算や指標管理マネジメントを学ぶことで、

  • 診療報酬制度を踏まえた経営判断
  • 患者ニーズに応じたベッドコントロール
  • 診療科間の人員配置調整

といった意思決定を合理的に行えるようになります。

 

また、医療機関だけの課題解決ではなく、医師のこれからを考えた時、医師自身のキャリア開発についてもマネジメントを理解することには大きな意味があります。

 

勤務医に限らず、開業、企業勤務、研究・政策、起業、海外展開など多様なキャリアを選ぶ医師が増えています。多様なマネジメントを学んでおくことは、医師がどのようなキャリアを選択しようとも、

  • 自分のキャリアを主体的に設計する
  • また計画したことを戦略的に実行する
  • 思い通りの成果を挙げる

ことにつながるなど社会で新しい価値を生み出すための基盤となります。

 

ここにすなわち、医師がマネジメントを学ぶ意味は、医療の質を高め、医療機関の持続可能性を支え、患者や社会により大きな価値を提供するためであり、同時に自身のキャリアの選択肢を広げるためでもあることが分かります。大げさな理論ではなく、実務に即した手法やフレームワークを理解することで上記をクリヤーすることが可能です。

 

日本の保険医療は大きく変化してきており、医療機関は厳しい環境のなかで医療を継続していかなければなりません。勤務医として、開業医として、また海外での医療を選択しても、企業のなかで力を発揮するにしても組織マネジメントのスキルを身に着けておくことには大きな意味があるという帰結です。いわんや経営者として医療周辺事業での起業を目指すのであればなおさらです。多くの医師の積極的な取組みが医療にも個人にも、そして社会にとっても有益です。

 

多くの医師が組織マネジメントを習得する機会を得られることを期待しています。

代替案の選択

私たちは何かを行うときに何らかの決定(意思決定)をしなければなりません。意思決定を行うときにはいくつかの代替案を持つ必要があります。代替案とは「目標達成のために取ることができる他の選択肢や方法」をいいます。

 

意思決定の質は「どれだけ良い選択肢を検討したか」に左右されます。代替案を決めるプロセスは、

  1. 意思決定の目的を明確にする
  2. 現状と制約条件を確認する
  3. 発想を広げて代替案を創出する
  4. 代替案の評価軸を設定する
  5. 代替案の比較・評価
  6. 最終選択または複数案の組み合わせを検討

です。

 

ただ、ここで選択肢は無限であり、選択肢をどのように絞り込めば良いのかに迷うことがあります。どのような代替案や方法があるのかを決めるのが難しく難儀します。

 

なので、この段階で代替案を決める目安となるフレームワーク(枠組み)をもっていれば、それをきっかけとして、代替案が生まれやすくなると考えています。

 

何かを決めるときの代替案の5つのモデルによるフレームワークをつくりました。それらは、

 

  1. 山道
  2. 坂道
  3. 階段
  4. エスカレーター
  5. エレベーター

です。

 

このモデルのイメージをより理解するために、コスト、時間、人材、法規制から分析した表が次のものです。個々の説明はしませんが、コストであればAが最も安く、時間であればAが最も早い、また人材はAが最も少なく、また確保しやすく、法規制はAが容易というシンプルなイメージです。評価軸は増やしても良いと思います。

 私たちは、決めたどこかに行くときに(何かの意思決定を行うときに)少なくともいくつかの選択肢(代替案)をもち行動します。

 

何かをしようと決めた時にそれは、険しい道なのか、容易な道なのか、険しい道だけどそのままいくのか、もしくは容易な道を選択し当初の目的は達成できないけれど、それで満足するのかなど、さまざまな検討を行うことができます。

 

もちろん、簡単な方法と思って行動したら実は簡単ではなかったことや困難な道に挑戦しようと決めたけれども、いろいろな人が助けてくれて思ったよりも難しくなく到達できたということはあります。

 

しかし、まずこの道を、この方法を選ぼうという決意をするときに、例えば上記の5つのモデルによるフレームワークをきっかけにして代替案(選択肢)を議論することも一法と考えています。

 

事例でみてみましょう。自分は自社で新しい事業を立ち上げるために、○○の技術を身に着けたいとします。

 

選択肢として、一から勉強し道なき道を進みながら研鑽し、目標を達成しなければならないのか(山道)。

若しくは、〇〇の技術を実際に研究している研究機関に入職し、そこで学ぶ可能性もある(坂道)。

またそれを1から教えてくれる大学院に入学し、一歩いっぽ学びながら目標目指して登っていくこともできる(階段)。

またさらに、本業では競合しないA社がその技術をもっているようなので自社が製品開発を行うときA社と連携し、業務提携をしながら製品開発をしよう(エスカレーター)。

いやそれでも時間がない自社としては、その製品を既に保有しているB社を買収し、一気に必要な技術と製品を得る方法が最適だ(エレベーター)。

 

といった具合です。

 

何かを得る、何かを達成するときに得られる選択肢を多数用意し、その特徴や、必要な資源(リソース)や、得られるもの、失うものを勘案したうえで代替案の選択を行うことになります。今回は先ほど提示したコスト、時間(時間はコストの一部ですが敢えて独立掲記しています)、人材、法規制の評価軸を使っています。

 

そうは言っても上記の事例は5つの示すマトリックス通りにはいかないことが大半です。

エレベーター戦略であれば、買収自体に結実するまでのプロセスはそれこそいばらの道で、山道を蛇行しながら進まなければならない可能性は高かあります。

 

また、資金調達の困難性や、技術者の引き留めら取引先の維持などM&Aの後の対応にも大きなリスクがあり、果たしてエレベーターモデルがそのまま該当するのかどうかは分かりません。

 

とはいえ繰返しになりますが、意思決定を行うときの代替案の選択をするには一定のフレームワークをもち、それを活用し、どの方法やどの戦略を選択するのかを考えるのが比較的容易であることも確かです。

 

実務は複雑ですが、まずはシンプルな考え方をモデル化し、それらを活用して代替案検討のきっかけとし次に進むのです。

 

何か新しいものを掴みにいくというテーマで代替案を整理するため、分かりづらかったかもしれません。ただ自分のなかでいくつかこうしたモデルや考え方の枠組をもって、日々活動していくことが合理的だと考えます。

 

なお、ハーバート・サイモンは、人はすべての代替案を列挙して最適な選択をすることはできず、情報処理能力や時間的制約のために満足できる案、十分よさそうな案を探索すると言っています。

 

なので意思決定権者は全知全能ではなく、意思決定患者の経験や知識、発想や着想、価値観や考え方により、その都度都度の意思決定が行われることになります。絶対的に優れた意思決定はないというのは至極当然ですね。

 

設定されたことは実行され、目標や目的が達成されなければ意味はありませんが、結局は自分を鍛錬しつづける人がよい意思決定をできるという結論になり、私たちの成長がよい社会や時代をつくるという帰結です。

 

これからも飽きることなく、また満足することなく、様々な考えの整理や、新しい着眼について議論していければよいと思います

 

 

比較による成長

今回は比較を考えます。経営学では「比較」が盛んに行われています。馴染みのあるものは以下のものです。

  1. 競合他社との「比較優位」を持つことで持続的に利益を上げるポーターの「競争戦略」
  2. 業界内外の「ベスト・プラクティス」と自社の現状を比較して改善点を発見し、業務を最適化する「ベンチマーク」
  3. 強み、弱み、機会、脅威について企業内部と外部の要因を比較・整理し、戦略立案の基礎とする「SWOT分析」
  4. 他社と自社は「何が違うか」「何を強みとできるか」という比較を通じて、企業の戦略的資源を特定するリソースベースド・ビュー(RBV)と「コア・コンピタンス」
  5. 複数のプレイヤーが相互に影響を及ぼす状況で、各プレイヤーが他者の行動と自らの行動を比較・予測して最適戦略を決定する「ゲーム理論」

「自他の比較」によって、自己の強みやポジションを認識し、最適な行動や戦略を導き出すことを目的としていて「比較」は経営学の核心的な要素の一つになっています。

 

さて、今回のテーマは経営学ではなく人を対象としようと思います。人の「比較」を考えます。

 

人は一人では生きていません。多くの人々の中で生きる「社会的存在」であり、自分の何かと

  1. 他者の何か
  2. 自分の何か

を比べて(比較して)生活しています。

 

組織行動論における「社会的比較理論」のなかで、レオン・フェスティンガーは人は自己評価のために他者と比較する傾向があり、この比較がモチベーションや満足度、離職意図などに影響を与える、と説明しています。

 

自分と他者と比較することにより自分を良い方向に誘導できる可能性はあるものの、一方で、慢心したり劣等感を感じたり、やる気を失ってしまうなどのデメリットもあります。

 

そもそも、自分の何かと他者の何かを比べるとき、自分からの他者の見え方は主観的な思いや感情に左右されることがあり曖昧です。他者を知悉していない状況では、他者がどのようにその状況に至ったのかの背景も、他者の絶対的な価値も実は分かっていないからです。他者のすべてを総合的かつ客観的に判断できないとき、必要のない驕りや嫉妬、無駄な不満足をもつことは意味がありません。

 

自分の何かと他者の何かを比較するときには、自分にとってメリットとなる比較を採用しなければなりません。

 

他者が自分より優れた点をみつけ、あんな行動を取りたい、あんな風になりたい、あんな成果を挙げたいという前向きな方向で、自分を鼓舞したり目標設定のきっかけにします。

 

ポジティブな思考性のある人は、はなから比較によるデメリットを遮断しており、そうした考えすらもたないことは明らかですが、敢えて言えばこの点の留意が必要ですね。

 

私が考える重要な比較は「自分と自分」の何かとの比較です。私は、

  1. 自分の過去と現状(の自分)
  2. 自分の現状と未来(の自分)

という区分をしています。この比較の根底にあるのは自立です。

 

「自分が何をしたいのか、またどのようになりたいのか」というベクトルが前提になります。この2点があれば、これらの目標に向かい、自分はどのように計画し行動しているのかといった評価を行えます。

  1. 過去決めた方向に進んでいるのか、
  2. 過去と現状にどのような乖離があり、
  3. 合目的的な活動が行えた帰結が今なのか、
  4. 不足したところは何か、
  5. どのような課題があったのか、
  6. 解離をなくすためにはどのように行動すればよかったのか、

を振り返ることができます。

 

もちろん、経過のなかで当初予想しなかった環境変化や自分の経験、社会の関係性などが経時的に変わり、過去に自分が何をしたかったのか、またどのようになりたいと考えたのか、と現状は異なっている可能性があります。なので、振り返りの後は、未来に向けた活動を開始します。

 

自分の現状を認識したうえで、再度未来の自分を想起し、自分はどうなっていたいのかについて検討します。過去と現状の相違を認識し、そこを踏まえたうえでプランニングを行い、未来に向けた行動を開始するのです。

 

結局ものごとはすべて仮説→検証の繰り返しです。こうなろうなりたいという計画を立て、そのために必要な事項について仮説を立て活動し、その検証を行いながら修正し次に進むというフローを繰り返すことにより、行動が徐々に自分の到達点に収斂していき成果を挙げます。

 

ところで、自分にしても他者にしても何かを比較する何かの「何か」は何を表すのでしょうか。拙著サクセスキューブで提唱したように、人が成功するための要件は、思い、信念、技術・技能、人間力、コミュニケーション力、達成感の6つです。ここでは詳しくは説明しませんが、人が成功するためにはこれら6要件を順番にあるいは並行して身に着けていかなければなりません。

 

これらについて自分が求めているものと現状はどうなのかという比較を自分の中で行うときに、その形成に役立つ情報を得るために自分や他者と比較する。自分のこうなりたいという思いはどうなのか、信念に昇華されているのか、必要な技術・技能は身についているのか、人間力は備わってきているのか、コミュニケーションはできているのか、そして何よりも達成感を得られているのか、について自分の時系列の変化を認識するとともに、優れた他者から情報を得て啓発され、未来に向けて能力を高めたり成果を挙げて行けます。

 

  1. 「自分が何をしたいのか、またどのようになりたいのか」を常に念頭に、
  2. 自立して他者との比較、自分の過去や現状、現状と未来の比較を連続的に実施しながら、
  3. モチベーションを高め、
  4. 生活していくこと

を自分の成長のための一つの方法として行動していくことが望まれます。

人事考課制度の本当の意味

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さまざまな組織からの依頼で人事考課制度導入を行うケースが増加してきています。以下は最近の医療機関のレクチャーで使った資料です。

「人の評価は賞与の評価と人事考課に区分できます。人事考課は、

  1. 情意考課
  2. 能力考課
  3. 業績考課
  4. 日常活動
  5. 勤怠管理

に区分されます。もう少し詳細に人事考課の項目を説明します。

仕事に対する姿勢や態度、身だしなみや責任感や協調性、部下をもっているレベルであれば教育、患部であれば経営に対する意見具申などが情意考課の対象となります。また、能力考課は職務基準、そしてその背景にあるマニュアル等により技術技能を考課するものです。発揮能力を以てこれを考課することになります。業績考課は年間を通しての賞与2回分の成果を評価します。賞与支給時には業績評価といいますが、人事考課においては業績考課となります。

 

さらに委員会活動や外部講師、学会での発表、論文投稿といったものを基礎として、日常における活動をすべて加点で考課します。これらはプラス要素として捉えており、積極的な成果を期待するものです。勤怠管理は、遅刻や早退、公休や有休を超えた休暇などについての評価を行います。上記5つをもって人事考課とし、職位のカテゴリーにより割合を異なるかたちで評価することになります。

 

多くの組織の場合、賞与は一律、給与は年功序列といった形で行われることが一般的ですが、それでは本当に成果を挙げた者に不公平感が生まれ彼らの力を引き出すことができなくなります。個人の活動をつぶさに評価し、処遇に反映しなければなりません。また、上記評価や考課により課題を発見し教育の基礎とするための評価制度を導入することで体系整備を行っていくことになります。

 

ここでは、賞与や昇給昇格昇進にどのように評価を反映させるのかについてのビジョンを視野にいれておかなければなりません。年齢や職位を分析し、等級や号俸に落とし込み(職能等級制度)、賃金テーブルをつくるとともに、モデル賃金を決定します。このような能力を持つ者は、こんなかたちで昇給、昇格、昇進していきますという形を見せることにより、働く者のモチベーションを上げます。

 

そして前述のように仕事の姿勢や態度の評価、資格や職位に合った能力の評価、そして設定した目標の達成状況による評価、日常評価や勤怠管理により人事考課、すなわち全体的な評価を行います。目標の達成状況による評価は半期ごとに賞与の対象になるという帰結です。

 

目標管理制度の評価をどのように行い、部署と個人の業績をどのように教育、そして賞与に反映するのかについての議論をおこなわなければなりません。賞与総額のどの割合を目標達成により変動させるのか、結果として総額に対しどれだけの差をつけていくのかといったことについても段階的な導入を検討し、スケジュール立案を行うことも大切です。通常は、目標達成の比率を2割から3割に設定するところが多いようです。

 

組織一律ではなく部署や個人の業績を目当てに評価を行います。業績は目標が達成できたかどうかを基礎とするため、

  1. 目標管理制度における「評価」の質的向上
  2. そのための評価者訓練の継続的実施
  3. 発見事項に対する恒常的な教育体制の整備
  4. 賞与のどれほどの割合を評価の対象とするのかの決定(例:80%は固定、20%について差をつける)
  5. 目標管理制度による評価を活用した賞与支給

といった活動が必要です。

その他人事考課においては、少なくとも、

  1. 情意考課のための情意考課表
  2. 能力考課のための職務基準やその詳細を説明したマニュアル、チェックシート等
  3. 日常活動の集計表                       

といったものが作成されなければなりません。

 

上記をいつまでにどのように実行するのかを議論する必要があります。明確な目標を持ちスケジュール立案を行い、導入までのおおよその期日を決定しなければ、なかなかうまく作業が進みません。それぞれのプロセスにおいて必要な資料を整理したうえで、院内でWG(ワーキンググループ)を組成するなどの活動が必要となります。早急に全体像を把握し、どのように作業を行っていくのかについてのスケジュール管理を行わなければなりません。

 

なお、これらは本来処遇のために行うべきものではありますが、前述したように同時に教育の基礎でもあります。間違いなくいえることは、人は評価されて動くということです。無関心のなかでは人は動かないし成長できません。逆に積極的に動いている人が、無関心という環境のなかでやる気を削がれているということに気が付く必要があります。無関心は、やる気のない人の格好の餌食であり、やる気のある人の墓場のようなものです。

 

人を多面的に評価し、成長機会を提供することこそが組織の役割であり上司の機能だということを忘れてはなりません。そうであるとすれば、組織的に評価の多角度的な実施を行う必要があり、そのための人事考課であり賞与の評価だ、と理解することが適当です。

 

多面的な評価を行える組織が、多面的に人を育成し、成果をあげる組織であると私は思っています。とりわけ病院は労働集約的知的産業であり、であるとすれば人が医療の質を左右することは明らかです。医療崩壊が叫ばれる大変な時代であるからこそ、人材育成を図らなければなりません。

 

厳しい医療環境を迎えて、まずトップマネジメントが考え実践しなければならないことは、こうした多様な評価制度をつくり課題を発見し、教育につなげていくことであることを強く認識する必要があります。」

計画性の発揮7要件


計画性とは、目標を達成するために、事前に必要な手順やスケジュールを立て、着実に実行する能力をいいます。計画性があるとないときでは目標達成の質や速度が異なることを誰もが理解しています。つまり、計画性があることのほうが、ないときより物事をうまく進められることを皆が知っているのです。

 


しかし、計画がなくてもその場その場の課題をクリヤーしていけば一定のところまで到達できるという意見も正しく、目の前のことを先ずは懸命にこなしていくことで成長できることも否定できません。

 


とはいうものの、比較的後で気づくことですが人生は短く、時間をうまく使うことが人生にとって有効だという考え方に立てば、計画性を身につけた生き方が優位性を以て受け入れられると考えます。

 


さて、私は三日坊主のタイプです。計画を立ててもすぐに挫折して、当初決めた計画を最後までやり通せないことが多くあります。細切れの計画を随時達成しながら、積み木のように何となく譲歩されたゴールに飛び込む、ような人生を歩んできました。なので、計画性を発揮するためにはどうすれば良いのかを今更ながらに意識しています。以下列挙します。

 


はじめに、計画性を発揮するためにが達成すべき「目標」があることが前提になります。当たり前ですが目標がなければ計画性も必要なく、やりたいことがなくて日々を過ごしていることも特に問題はありません。計画性を語るときには短期、中期、長期の目標を待ち生きているかどうかが問われます。

 

なお、目標があってもその目標がすぐに達成できるものであれば計画性はさほど重要ではないかもしれません。あっという間に達成できる目標には、例えば段取りは求められても高い計画性は影響しないからです。ここでの議論において目標は計画しないと達成できないレベルに置く必要があります。

 

また、目標があっても具体的な達成のための手順や方法が曖昧であればいくら頑張っても目標に到達しないかもしれません。自分は何を達成したいのかどこにいきたいのか到達点を決め、現状を認識した上で、到達点と現状のギャップを埋めるための解決策を徹底的に検討し計画に結びつけます。適切なKPIを設定しPDCAで管理していきます。的外れなやり方や行動では成果を得られません。

 

もちろんPDCAを廻していくなかで、当初立てた計画に課題があれば途中で修正し、再度修正した計画(仮説)に基づき行動(検証)し、さらに課題があれば次の仮説を立てて検証活動を行う、そして、というように当初の計画は常に環境適合できるよう仮説→検証→仮説→検証という行動を継続していかなければなりません。

 

さらに、目標達成の手順やスケジュールがあっても目標に執着していなければ目標は達成できません。手順通りに進まないことやスケジュールをこなす意欲が喪失し途中で諦めてしまうことがあるからです。背景にはさまざまな理由があるとしても何が何でも目標を達成するという強い意思がなければ計画性は維持できないのです。

 

そして極め付けは自分を取りまく有益な環境が計画性を効力あるものにするためのポイントです。目標に向かい努力する自分を鼓舞してくれたり支援してくれる先輩や共に活動してくれる仲間、そして場合によれば家族や自分の健康も目標達成の要件になります。

 

目標に自分一人で立ち向かわなければならない、他に心配事があり目標達成行動に身が入らない、という状況では目標達成はおぼつきません。周りの誰もが助けてくれて自分がうまく活動できる環境をつくるためには、家族をも含めた良好な人間関係を積極的につくれるよう自らを律することが求められます。

 


こうして考えると計画性がうまく機能して成果を挙げるためには

  1. 時間は有限だとの認識
  2. 目標の存在
  3. 背伸びしなければ達成できない目標の存在
  4. 適切な手順や方法
  5. 目標への執着
  6. 目標達成のための環境づくりといった要件が必要になりますね。このほか自明の理として
  7. 目標に関連する知識や知見、経験

が求められるのはいうまでもありません。なお、組織において一定成果を挙げるときにも上記の要件は不可欠です。意外とルーチンの中での目標設定が行われている場合には上記への取組みが脆弱になることがあるからです。

計画性を発揮するための7つの要件に留意しながら、より一層の努力をしなければまずいという結論です。

思いやりの源泉

思いやりは人を思いやるという場面で使われます。しかし、もう少し敷衍化して自分が接するもの全てに思いやりを持つことが本質であると考えています。思いやりは他人の気持ちを理解し、その人の立場や状況に配慮する心のことをいいますが、本質を捉えると、思いやりには相手を大事にすること、大切にすることが背景にあると考えるからです。

 


会話がなく他人の気持ちを理解することができなくても、相手を慮ること、相手の立場や置かれている状況を想像することができます。こうなんだろう、こんな状況なんだろうという感覚を常に持つことにより、相手の現状を推測するのです。

 


となると、モノでも動物でも思いやりの対象になります。動物と会話できる人も稀にいるようですが、モノや動物と会話できないまでも状況を推定し、対応の仕方やそうできなかった場合にはどのような結果になるのかを想起することはある程度できます。

 


卑近な例ですがPCやスマホであっても、それをどのように扱うのかにより、さまざまな結果が惹起されます。大切に使えばよく働いてくれるし、雑に扱って、ほぞを噛むことが多くありました。

 


もちろん思いやりは自動的に対価をともなわないことはわかるものの、大事に、大切も含めた広義の思いやりを持って接しなかったことにより大きなマイナスや代償を払うことがあります。いや、大抵の場合に大なり小なり有形無形のロスがあります。

 


そうして考えると人でもモノでも動物でも同様であり、大事にする、大切にする思いで思いやりの範囲を広げて、向かい合うすべて対象に接していくことが必要です。

 


自分の生活に流れる時間についても大切に考えて活用することや、情報についても、カネについても同様に考えることができます。つまり、人は広義の思いやりで組織の経営資源そして「人生の資源」であるヒト、時間、情報、モノ、カネに接していくことが大事だと気づくのです。人が常に向かい合う、自分の資源を大切に思いやりを持って行動することにより多くの成果を得られるし、ロスをなくすことができます。広義の思いやりを以て触れ合うものに全てに接していく、向かい合っていくことが人生成功の要諦だという結論です。

 


なお、人生資源において有限なのは時間だけです。もちろん時間も有効に使うことにより価値を最大化することはできるのは周知の事実ですが、他のヒト、情報、モノ、カネという資源は自分の意思や行動により、どのようにもなり得ます。脆弱なものにも強大なものにもなるのです。

 

自分を大切、大事にしながら、これら人生の資源に広義の思いやりを持って積極的に関わり、どのように価値を高めていくのかを考えて行動するなかで人に対する思いやりが生まれているというロジックです。

 

そうでなければ「思いやり」という言葉に普遍性がなくなることに気づきます。接する人全てに(狭義の)一般的な思いやりだけで対応するのでは人生は完結しません。自分の人生を豊かで、あるべきものとするために自分や資源を大切に、大事に思いやりを持って生きていくことが、他人に対する思いやりの本質であり源泉であると考えます。

 


「相手を思いやりましょう」ではなく、自分自身に真摯に向き合う生き方として相手を思いやるのは当たり前であり、その行動は自分の接する全ての資源に向けられた自然に生まれる意識の発露なんだという帰結です。

 


多くの素敵な人々の行動を見て、改めてそう生きられる自分になれるよう精進したいと思いました。