コンサルティングを行っていると、クライアントのスタッフからリーダーの思いや考え方が理解できないことや、組織の進む方向と自分のやりたいことにギャップがあると、よく相談を受けます。
スタッフとリーダーとの間に溝があるのです。ここで「溝」とは仕事に対する考え方や思いの違いから生まれる違和感です。違和感があるのでモヤモヤしてスッキリしない。心底からやる気にならない状態です。その溝は浅いこともあるし深いこともあります。溝が少しずつ深くなり、ある領域を超えたときから人は組織で力を発揮できず、結果として成果をうまく挙げることができなくなります。
溝が生まれる原因が自分にあることも他者にあるときもあります。なのでここではリーダーだけに課題があるわけではありません。
ここで溝があると気付いた時に自分で溝を埋められる人と埋められない人がいます。自分の問題として、自分の考え方や姿勢を変えることで生まれた溝を埋めようと努力する人は優秀です。
彼らは常に感性を研ぎ澄まし課題を見つけ、自ら行動し相手の理解を得て溝を埋められる人達です。このような人は他者に溝をつくりだした原因があるときにも自ら動き他者に働きかけて溝を埋めることもできます。
しかしそのような人は多くはありません。自分か他者のどちらに原因があるかは別として、ほとんどの人は溝を解消できずに悶々とし、力を発揮できない状況を続けることになります。あるべき組織マネジメントにより現状を解決していかなければなりません。
溝が生まれる要因は、やりたいことができない、どこまで行けばよいのか分からない、どこに進んでいるのか分からない、組織がどのような状況に置かれているのか情報がなく不安、といったことに集約されますが、このような組織はたいてい情報開示がない、ガバナンスがうまくできていない状態にあるのが通常です。
組織の置かれている状況や考え方、進む方向、そして自分の力量、役割や意味を受容れて組織で動くときに、人は力を発揮できると感じます。
置かれている状況は、継続的情報開示(適時開示)により実施、考え方はパーパス、ビジョン、戦略を明らかにすることにより伝えていく。進む方向については事業計画、目標管理(MBO=management by objectives)、1on1により一人ひとりに徹底することが必要になります。
また、本人が自分のやりたいことを見つけ、仕事のなかにやりたいことの一部、全部ができることや、少なくとも「やらなければならないこと」のなかに「やりたいこと」を見いだせるよう組織が働きかける必要もあります。
自分のやりたいことは何かに気付いてもらえるようコミュニケーションをとれるリーダー育成や、しっかりと組織やお互いを知ることのできる1on1の仕組みづくりを行うことで彼らの思いをつくりあげる取り組みも必要です。
もちろん、彼らの力量を評価するシステムやMBOでの役割設定や目標達成のためのKPIのコントロールも求められます。
そして何よりも大切なのは本人が「やらなければならいこと」を受容すること。
やりたいことを内包した「やらなければならいこと」を知るだけでもなく理解するだけでもない、この仕事は自分しかできない、自分がやるんだと受容れてもらえるよう取り組みを行っていくのです。
結局はどのような組織であれ、人が軸になり成果を挙げていきます。
当たり前のことではありますが組織に帰属する人が一人残らず組織の目指すものと自分のやりたいことを擦り合わせ、自らの成長に満足しながら組織目標を達成できるマネジメントが大切です。
成果が挙がるかどうかはリーダーがスタッフとの協働でしか組織の最適解は生まれないと考えているかどうかに依存します。
- 組織の進む方向を確信したうえで、
- 相手の立場に立ち
- 自分の行動が適切かどうかを常に振り返り修正しつつ
- 最適行動をとれるリーダー
が組織に求められている所以です。
当ブログでこのテーマについて記事をいくつも書いてきましたが、厳しい環境にある日本において多くのスタッフが力を発揮できるリーダーシップが益々必要になったと改めて感じています。