よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

意外とやってないマーケティングってどんなこと?

 

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 5、6年前のフィリピンのマニラで、弾丸三日間6病院視察ツアーをしたときのこと。

 中心から少し離れた場所にある国立心臓血管センターを、ノーアポで訪問しました。

 

 フィリピン特有の厳しいセキュリティで、ガードマンが入り口に立ちはだかっています。なかなか中に入れてもらえませんでしたが、マネージャーまで呼んでもらい、辿々しい英語で「この病院の評判を聞いて日本から遥々きたので、案内して欲しい」と懇願し、やっと見学の許可を得ました。

 

 じゃ見るだけですよ、いきなりなんだから、みたいな感じで院内に入ると、外来の壁に組織図が掲示してありました。

 

 なんと、そこに予算実績管理部とマーケティング部がありました。日本では見たことがない部署です。

 

 もちろん、一般の企業でも敢えてこの機能を単独でミッションにする企業は多くはないと思います。全社は経理、後者は企画か、営業企画にその機能があるからです。

 

 ということで、いかにこの2つの機能をこの病院が大切にしているのかが分かりました。

 

 大事だと、私も思いますが、日本の病院は自分の病院のことで精いっぱいで、市場調査(マーケティング)を継続的に行い、その結果を活動に活かしているところは少ないという印象です。

 

 DPCという制度により医療を行う病院は、地域における自院の治療内容や患者数その他の情報を入手することで自院のポジションを把握することはできます。

 しかし、じゃあどうするのか、といったところにつながらない病院も多くあります。診療情報データだけでは行動がとれません。

 

 医療は医師に依存する方が多く、ここが弱い、ここが強いといった結果を得て、行動に移すことが難し業種であると、言う事かもしれません。

 

 市場調査を行い、経営に活かす。今日のテーマです。

 

 病院の市場調査をどのように行なえばよいのでしょうか。

まず、市場調査の目的は、以下の2つです。

 

1.院外の現状把握

  自院の内外における現状の認識をしなければなりません。何をするにしても現状を明確に整理しなければ次に進めないからです。

 

 院内の現状については、日常得られる情報や、アンケートや面談によるヒヤリング、データ分析、部署毎にテーマを決めて問題抽出をしてもらうことで足ります。

 しかし院外については市場調査を行う必要があります。

 

2.戦略立案

  内外の現状の分析を完了したうえで、どのような「戦いに勝つための計画」を立案していくのかに関わる事項です。

 

 市場調査を行わなければ、適切な計画を立てることができません。

 

 市場調査項目は、(ⅰ)昼及び夜に自院のターゲットとなる患者が、どの地域に、どれだけ存在するか(ⅱ)近隣にはどのような医療機関があるか(ⅲ)自院で患者を呼べる機能はどのようなものがあるか(ⅳ)自院の競合となる医療機関はどのような動きをしているか、等となります。

 

 

 市場調査は、(ⅰ)ネット情報(ⅱ)自院レセコン情報(ⅲ)訪問(ⅳ)アンケート(ⅴ)面談

 といった手法により行います(外注もできますが高いですよ)。

 

 内閣府や専門情報チャネルにより、地域人口動態や疾病動向、競合の情報が得られます(ネット情報)。

 

 さらに自院のレセコンデータから、住所地、年齢、来院頻度等自院に来院している患者情報を把握できます(自院レセコン情報)。

 

 また競合病院への訪問を行い、駐車場の混み具合や、待合室の状況を定点観測したうえで、曜日、時間帯別、医師別診療科別の来院状況を把握することができます(訪問)。

 

 そして入院外来患者にアンケートを行い、当院の問題や日常的に通院している医療機関の情報を得られます(アンケート)。

 

 もちろん、他の病院の事務長に、公的な会において情報を得ることや、協力関係にある他病院事務長との間で、情報交換により有益な事実を知ることもできます(面談)。

 

 これらを行った結果、外部からみた自院、他院や地域情報を全体的に掌握し、課題や問題、そして自院の強みや弱みを分析します。

 

 上記の手法は初歩の初歩ではあり、当たり前のことです。

 しかし、個々には実行しているつもりても、体系的に行っていない病院が多いのではないでしょうか。

 

 自院でさらに必要な事項を追加したうえで、市場調査を実施し課題発見、解決策検討、行動誘導により、目的を達成します。

 

 市場調査を継続的に行い、厳しい環境下での増患対策を行うことが有効です。

 

 内部体制を整備し、患者や地域から評価される病院をつくり、きたるべきアフターコロナの時代、飛躍できるよう備えることが期待されます。

 

コミュニケーション、大事ですね

 

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 組織においては、コミュニケーション(ヒトの間で行われる感情や思考の伝達)がとても大切です。コミュニケーションが仕事の軸になるからです。

 

 コミュニケーションが活発に行われる組織では、1+1以上の成果を挙げることができます。

 

少なくとも、

1.連携により円滑に事が進む

2.ある業務を相互に補完し合える

3.何かあったときに支援し合える

4.他者から啓発される、学べる機会を持てる

5.一人ではないという意識が自分を鼓舞する

と言った効果が考えられます。

 

 振り子が逆に振れると大変なことになります。

 じゃまする、協力できない、助け合えない、けなし合う、排除するなどの行為は明らかに生産性を阻害します。

 

 ヒトが重要な資源である医療機関では、明らかにコミュニケーションの良し悪しで、成果が大きく異なります。

 

 職員が、たった数人しかいない診療所でも、コミュニケーションがうまくいかず、職場がギクシャクし、生産性が落ちてしまうことがあります。人間関係が悪くなると物事が進まないのは明らかです。

 

 院内コミュニケーションをどのようにとればよいのかを考えてみる必要があります。

 

 なくてはならない事項は次のものです。

1.組織のビジョンが明確である

2.具体的な実行スケジュールが決定されている

3.各職員の役割が明確である

4.組織トップが常にものごとに執着し、うまくいくよう気配りをしている

5.職員一人ひとりの業務が、計画通りに進んでいるのかがチェックされている

6.うまくいかない理由があれば、組織全体でそれを支援し、修正している

7.成果をあげる職員を評価する

8、成果をあげていない職員を教育する

9.何よりも職員が相互に信頼し合っている

 これらが一つでも欠けると、本来のコミュニケーションを円滑に行うことが難しくなります(なお、ここでのコミュニケーションは社会的活動を前提としており、単に仲が良いということだけを対象としているのではありません)。

 

 仕組みがなくても、コミュニケーションができている組織は、特定の職員がリーダーとして高い意識をもち、コミュニケーションをとれるよう行動し、結果を出しています。

 ほんの数人が業務を円滑に行うため、まとまることで、組織が成果をあげているのです。

 

 しかし、リーダー頼りのマネジメントは長続きしません。リーダーシップをとっている者が異動したり退職すれば、コミュニケーションは悪くなる可能性があるからです。

 仕組みがなければなりません。

 

 中期経営計画立案、目標管理制度やBSC(バランストスコアカード)による年度目標の管理、指標管理や管理会計による現状の可視化、さらには業務マニュアルの運用や業務改善提案、教育システム、評価制度が整備されていることで目的を達成します。

 

 完全でなくてもよいのですが、小さい組織であったとしても、上記を整備していこうという方向や具体的な指示が必要です。

 

 徐々に、共通の目標が自院や各部署のコミュニケーションを活発化し、職員の覚醒を促すからです。

 

 なお、職員間の関係性を改善するために、組織で一体となった行動がとれるよう、地域イベントやボランティア、そしてときには飲み会などを行うことも有効です。

 

 私は、飲み会でのコミュニケーションは無駄と思っていて、自分は好きではありませんでしたが、メリハリの効いた機会に食事をすることは必要かな、と思っています。

 

 コロナの時代、緊急事態宣言の前でしたが、会計事務所の所内で10人程度の食事会をしました。一切話をするのを禁止にしたので、ちょっと豪華な食事を黙々と皆が食べているだけで、奇妙な光景ではありました(終わってからは、マスクをしたうえで話をしてましたよ)。

 

 しかし、皆満足した顔をしていたので、一緒にイベントをする事は明確な理由があればそれぞれの気持ちに一体感を生むと、改めて気付いた時間でした。

 

 ただ、基本は組織内の仕組みづくりが徹底して行われなければなりません。

 

 この部分を忘れることなく、院内コミュニケーションを活性化し、各職員や各部署の機能が最大限発揮できるよう、リーダーの日々の活動が望まれます。

 

 我が身に置き換えると難しい事ですが、あるべき形にできるだけ早くしていきたいと、私は小さな決意をしています。

 

繁栄する診療所、10の戦略とは

 

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 外来診療を生業とする一般診療所が毎年、微増しています。傾向は、有床診療所(ベッド19床以下の診療所)の廃止を超えて、無床の診療所の新規開業が多くあったことを意味しています。

 ただ、医療の必要な高齢者がこれから増加していくとしても、彼らは在宅での医療を受ける機会も多くなり、皆高齢者が通院するものでもありません。

 

 なので、開業が盛んになれば既存の診療所と間での競争が激しくなることは必至です。

 

 さらに、今回のようなコロナ騒動があればなおさらですが、コロナ中、来院を控える傾向があるのは言うまでもなく、コロナ後も日本経済回復の遅れから、家族の所得が減少したり予想される医療費の自己負担が増加することで、受療回数(患者が来院する回数=日本は医療機関にかかる回数が世界一です)低減も予想されます。

 

 このような環境下において診療所が繁栄し続けるためには、比較優位性をもつ活動をしなければなりません。

 

 以下のポイントに留意して診療所運営を行う必要があります。

 

1.朝早くか、夜遅くまでの診療を行うなど、他の診療所の診察していない時間に診療する。また土日や祭日にも診療日を設定する

 

2.連携を強化することや、新しい治療や診療科を設置することで新患を増患する

 

3.地域住民のため診療所固有の健康倶楽部を組成し、会報を発行。役立つ情報開示で地域住民の健康管理とともに来院促進を行う

 

4.日常的に診療所において休日や夜間、あるいは昼間の時間を利用して、セミナーを開催し病気の不安をできるだけなくす

 

5.HPやパンフ、チラシ等の媒体や営業活動によりプロモーションを行い、自院を地域により浸透させる

 

6.訪問看護ステーションやケアマネと組んで、外来だけではなく、やはり在宅にも興味をもつ

 

7.事業計画と年間目標を明確にして目標から現在の行動を決定する

 

8.経費を無駄にせず計画的な資産形成を行うなど現金を増やすことで次に備える

 

9.マニュアルやチェックシートにより仕事の手順やノウハウの整理をしっかり行う

 

10.ビジョンをしっかり定めたうえで、一定の基準(マニュアルや職務基準)による職員の公平公正な評価と継続的な職員の教育を行う

ということがそれらです。

 

 これらをひとつひとつ積み重ねることで必ず診療所は活性化し、ながく地域で繁栄する診療活動を行うことができるようになります。

 

 まとめると、明確な外部戦略や内部戦略としての内部統制整備、職員教育による質の担保が必要ということです。

 

 マーケティングの5P、すなわち場所、価格、製品、販促、非凡なものについて検討し、他診療所に負けないもの、地域住民から信用、信頼、安心される診療所をつくりあげていくことが繁栄の要諦(ポイント)ということになります。

  

 書き終わって眺めてみると、繁栄する〇〇の戦略とすれば、ここに書かれている多くのことは診療所以外のあらゆる業種にも該当するな、とつくづく思います。

 

 少子高齢化、未曽有の出来事、米中関係悪化、ブクレジットを含めた欧州問題、世界的景気低迷など心配事は絶えませんが、上記をアレンジし、何かを変えることに、私も果敢に挑戦していきたいと考えています。

組織のなかで、紫の牛を見つけよう!

 

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マーケティングの5Pの観点から自院を分析し、その結果を戦略に活かしている病院は意外と多くはありません。

 

 もちろん、自然に近いことをしている病院はあるとしても、継続的に敢えて5Pの切り口から自院を分析してみることが必要です。

 

 5Pとは、place(場所)、price(価格)、product(製品)promotion(販促)といったマーケティングの4Pと、purplecow(紫の牛)のPを加えたものをいいます。

 

 Purplecowは、絶対なる非凡さということです。辺り一面に緑の絨毯が広がる牧場のところどころに茶色のジャージー牛が牧草を食んでいます。

 

 初めは、生きている牛を間近に見て、「ワオ、牛だー、マジでかい!」と心のなかで叫んでしまうかもしれません。でも、見慣れてくると、なんてことはない、見分けがつかない単なる牛じゃんと気付いてしまいます。

 

 そのなとき、もし紫の牛がいたらどうでしょう、超目立つ。「なんだー」「おーい」といったときのPurplecowです。牧場に来ると何時も目立っちゃう奴ですよね。

 

 ということで、このキーワードで、継続的に自院を分析し問題を発見するし、競合病院をベンチマークし、良いところを真似る、といったことから改革を進めていきます。

 では、これから5Pの説明をします。

 

(1)場所

 病院を建設してしまえば、場所は既に決まっています。なので、従来の考えでは、立地が悪ければダメ、取り返しはつかない、ということになります。

 

 ある地方都市で、街中から山の上に移転したある市立病院について、「なんであんなところにいったんだろう、あれでは患者はいかないですよ」とタクシーの運転手さんが漏らしていたことを思い出します。

 

 しかし、「待つ医療から出向く医療」(待っていても患者は来ない。こたらから患者のところに行こう、という医療)を標榜すれば、また、地域住民の健康で豊かな生活を守るというコンセプトで地域医療を行なうと決めた病院は、自院の活動範囲を広げ、地域に広く医療を展開します。

 今ある病院は拠点の一つでしかありません。

 

 地域に出向いての疾病予防活動や、在宅医療や看護、サテライト(他に開設したクリニック)の運営がそれらです。

 

 患者が来院するのを待つという箱物医療は一部の急性期機能を持った病院以外、既に時代遅れです。

 

 国の政策(病院病床削減、病院から地域へ)を体現する必要があり、「場所」をフレキシブルに考えれば、間違いなく自院の機能を活かすことができます。

 

(2)価格

 日本の医療の場合、一部の自由診療を除き、価格はどの地域のどの病院でどんな医療を受けても同一です。国民皆保険制度で守られているからです。

 

 しかし、医療の質が高く結果として早期治療が完了することで、患者や家族が負担する医療費全体は大きく影響を受けます。

 

 また、ジェネリック(後発品)を使うことや、無駄な検査をしないといったことは価格引き下げ要因とはなりますし、例え、治療を行うときに、他の病院と比して多くの検査や処置が行われても、医療の質が高く、再入院の必要が少ないと評判の病院は、生涯医療費が低く、価格を抑えているということができます。 

 

 なお、新患が多い病院は単価が高くなる傾向があります。そのような病院はブランド診療科があったり、病院自体への訴求力が高いので、患者は多少検査が多く、自己負担を多くしても、それを凌駕する、信頼や安心のために当該病院を選び続けます。

 

 医療の価格は実は病院の医療の質により異なる可能性がある、ことがわかります。

 他の医療機関と価格競争力をもつためには、仕組みの見直しと、技術技能向上により医療の質を上げる、ということも一つの方法です。

 

(3)製品

 病院にとって製品は医療サービスです。医療サービスは病院のなかで提供される役務提供すべてを言います。(2)でも説明したように医療の質が高い、ということが最も重要なポイントです。

 

 医療の質が高く、そして合理的に提供できる病院は地域から尊敬され慕われ、ながく地域医療を推進することが可能となる病院です。

 

(4)販促

 プロモーションはとても大切です。できもしないことを喧伝することはナンセンスですが、実態を十分に説明していない病院がいかに多いことか、と思います。

 

 優れた点を常に開示し、自院がプライドをもって治療ができる状況をつくりあげているかを検証してみることが有益です。

 

 また、プロモーションは口コミでの展開もありますが(実はこれが一番で、よい病院は広告しなくでも患者は万来します。でも、それだけだと網羅的ではないので話を続けます)さらに積極的にあらゆる媒体やセミナーを活用し、これを行う必要があると考えています。

 

 患者を多く集める、質の高い著名な病院は、院内セミナーを毎日のように開催していますが、自院が地域医療に貢献したいという思いが、そのままプロモーションになっている事例です。

 

 とはいうものの、デジタルマーケティングも含め、日本の病院はもっと自院を知ってもらう対応をしてもよいと考えます。

 それが地域住民が健康で豊かに暮らすために不可欠であると、自信をもつのであれば、是非、実行してもらいたいものです。

 

(5)絶対なる非凡さ

 最後のPです。絶対なる非凡さです。自院のこれがすごい、誰にも真似はできないといった絶対的な優れた点をいくつもった病院であるのかについて、調査し、自院はpurplecowをどれだけ持っているのか。

 

 比較優位性こそが、これからの地域で信頼され、訴求される病院であるのかを明確にしておく必要があります。

 

 もちろん、意図的にどのようにPurplecowをつくり、増やしていくのかは病院トップの戦略であり、常に考え実行しなければならないアイテムだと理解しています。

 

 「それってPurplecow?」とか、「君のPurplecowって何?」のようなやりとりがある病院になれるといいですね。

 

 今日な話はどんな業種でも同じです。まとめると

1.打って出る

2.コスト戦略の明確化

3.仕事の質を上げ合理的な仕組みづく

4.相手を想い、自分たちが必要なことを伝える

5.誰にも絶対に負けないものをつくる

ということでしょうか。

 

 コロナの今だからこそ、臥薪嘗胆、捲土重来の思いをもち、新たな気持ちで5Pをベースにマネジメントを行っていく必要がありそうです。

 

「皆んな、仲良くしようよ」の力が生産性を上げる

 

 

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 どの業種でも言えますが、病院には、さまざまな機能や役割をもった部署があります。

 

 それぞれの部署が協力し合い、連携したうえで医療が提供されています。

 

 しかし、一方でそれらの部署は縦割りで管理されていることで、セクショナリズムや自己利益優先という考え方をもっています。

 

 そのため多くの病院では部署間の連携(部署毎の人の連携)がうまくいかず、調整を繰り返さなければならないという意味で、蛇行しながらことが進むため、非効率や無駄が発生しています。

 

 これを部署間コンフリクト(衝突)といいます。

 部署間コンフリクトの解決を行い業務の生産性を向上させなければなりません。

 

 部署間のコンフリクトなは、さまざまな原因があり、それぞれの部署では対応できないことが多いことが通常です。

 

 結果、部署間の関係がこじれると益々意思疎通がうまくできず、さらに業務が円滑に進まなくなることがあります。

 

 コンフリクトの解決は、部署ごとではなく病院として行う必要がある所以(ゆえん)です。各部署を横串にできる病院トップと各部署の幹部が話し合い、問題を解決することがもっとも有効です。

 

 コンフリクトの発生する原因を分析すると、

1.嫌い、気に食わない、(相手が)仕事ができない奴だ、こちらが損だ、とか、面倒とか、とても感情的でシンプルな、話し合いをすれば解決することの話し合いができていない

 

2.話し合いをしても、なかなか解決策が生まれない

 

3.解決策が生まれてもルール化できないため解決できない

 

4.ルールが現場のルールというよりも病院全体の制度に起因するものであれり、制度改革が必要となる

 

といったものに類型化されます。

 

 これらを病院としてどうするのか考えることでコンフリクトを解決します。

 

 まず、病院トップや各責任者は、病院全体にどのようなコンフリクトがあるのかを探し山積みにしたうえで、

1.コンフリクトを整理して、優先順位を決定する

 

2.優先順位に応じて、毎月のテーマを決定する

 

3.一つひとつについて事前に課題を整理し議論する

 

4.毎回必ず一定の方向を示し、次回にその進捗状況を把握して必要があれば、さらに対応のための指示を出す

 

5.必要に応じてルールをつくり制度を改定して問題解決を行う

といった対応を行います。

 

 部署間コンフリクトを解決することで、関連部署の関係は改善し、現場の生産性は飛躍的に改善します。

 

 ある病院では、外来処置室で検査科ばかりが採決を行い、看護が手伝ってくれない、という理由から外来看護と検査科の仲が悪くなり、いがみ合っていました。

 

 院長に介入をお願いし、検査スタッフの増員を図ったところ、あっという間に仲が良くなったという事例があります。

 

 また、看護師が医師に連絡を取りたいとき、医局事務に医師の所在を管理してもらうよう依頼していましたが、忙しいと断られていたので、看護師は自分たちで医師を探して用を足していました。

 

 院長から医局事務員に日報をつけるよう指示を出したところ、アイドルタイムがたくさん見つかり医師の居場所を常に管理するよう指示され、問題が解決されました。

 

 つまらない話に聞こえるかもしれませんが、現場はこんな事が沢山あり生産性を落としているのです。

 

 該当部署だけで問題解決をしようとするのではなく、必ず院長を交えた病院幹部間で議論し、どうすれば解決できるのかを検討し、組織間調整を行うと、見違えるように組織のコミュニケーションが行えるようになります。

 

 ただ、本質的には、職員本人にとって受け容れられる組織目標を明確にすることと、協力して目標達成することに職員が必死になれる環境やリーダーシップが有効です。

 

 他人ではなく自分が変わろうと能動的に動く職員で溢れる組織は強靭で、負けません。

 

 職員一人ひとりが、前に進もうという意識を以って感情や軋轢を超えお互いに協力すれば、よい結果が生まれて合理的な組織活動が行えるようになると信じています。

 

 これって、どの業種にも該当することですが、仲良くすれば生産性が上がる、ということに他なりませんよね。

 

誇りをもって相手に優しくできるようになるために

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 自院のスタッフ仲間や患者、患者家族に優しくできる、ということは医療従事者の永遠のテーマです。

 

ここで優しく、ということは単に礼節をもち笑顔、挨拶ができればよいという分けではありません。何かの取引を行うとき、取引の目的を達成することを相手側は求めています。

 

商品を購入するときに、丁寧な販売員がいて気持ち良くお買い物ができたものの、よく見てみたら不良品や品違いだったとき、顧客は満足しません。

 

サービス業でも同様です。返事や態度は良いのに、仕事が予定通りに進まない他部署の職員には、当初は仕方がないと思ったとしてもその思いはながく続きません。

 

礼儀は大切でビジネスの基本ですが、仕事の本質ができていなければ、顧客が納得することはあり得ません。

 

例え謝罪の仕方がうまく、一瞬は許したとしても何度も続けば、二度とその施設は利用しないでしょう。

 

いわんや命に関わる医療であれば患者や患者家族の求めるものはより高くなるのは明白です。

 

初診のとき受付が丁寧で外来に座ったものの、何時間も待たされる医療機関の印象は悪くなります。

 

診断や治療の過程で問題があれば、なおさらそれまで良い印象があったとしても、その気持ちは雲散霧消してしまうのです。

 

職員同士が同じ理念や目的を共有し、中短期の目標を掲げ、よい医療を行うための改革に着手する。

 

自分の役割を果たすための努力を怠らず、「仕事に対する思いや人間力、必要な技術技能を身に着け、その発露としての礼節をもって周りに対応する」。

 

どの業種においても同じことが言えますが、心から仲間を大切にしつつ上記プロセスにて、自分のできる最大限の仕事を行うことができる職員は、力をつけて自信をもてます

 

彼らは自分の仕事に誇りをもてるし、先も見通せ、どのような問題も解決できるため、感情的にもなることはありません。

 

なので仲間の職員にも、患者や患者家族にも優しくなれるのです。

 

組織は、本当の意味で相手に優しくできる職員を育成するために、仕組みをつくり、適正利益をあげて、彼らが育つ環境づくりや適切な評価・教育・処遇を行うことにマネジメントの軸を置かなければなりません。

 

皆がプライドと自信を持って仕事ができる組織。つくるのは難しいですけれど大事ですね。 

 

コロナの時代、誰にも負けない組織を作る機会と捉え、まずは自分から変わっていけるようにしたいものです。

 

  

 

 

問題指向型教育のツール、「教育カルテ」って何?

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 今回は、少し専門的な話もするので、一般の方には読みづらいところもあると思いますが、許して下さいね。

 

 医師のカルテはSOAP(ソープ)と呼ばれる記載の形式になっています。

 

 これは問題指向型診療録(POMR=Problem Oriented Medical Record)の一つです。

 

 問題志向型医療(POS=Problem Oriented System)の考え方によって得られたデータを内容ごとに分類・整理した上で、S(Subject)、O(Object)、A(Assessment)、P(Plan)の4つの項目に分けて考える分析手法です。

 

 患者の主訴(訴え)や状況・病歴をみて、診察や検査を行いデータを集め、評価します。その結果治療方針を決め治療に入る、という医療活動を記録するのです(看護師の記録も経時[時間軸で誰が、いつ、誰が、どうなったかを記録]やフォーカスチャ―ティング[焦点を絞った経過を系統的に書く]記録方式のほかにSOAPの形式になっているものがあります)。

 

 これは患者の治療の記録であり、治療を円滑に行うための考え方です。

 私は10年以上前、病院で看護とともにSOAPの仕組みづくりをしているとき、職員の教育体系構築の支援も行っていました。

 

 ふと気づいたのは、患者の治療に使うSOAPの考え方は、職員の教育にも使えるのではないかということでした。なんで、職員の治療をするのにカルテがないの?というノリでした。

 

 当時職務基準やマニュアルも作成しており、教育の立系をつくっていましたが、どうも今一歩日々のOJTの記録方法が確立されていないこと、プリセプティング(プリセプターシップ[プリセプター制度]で、新人[プリセプティー]を先輩[プリセプター]が現場で指導する「現場教育訓練」[OJT]をすること)のときのように、チェックシートにいろいろ記載するだけでは、新人以外の看護師には通用しないと考えたのです。

 

 病棟では、日々の看護プロセス(観察、診断、計画、実施、記録、退院要約)のながれ以外に、山のように看護業務があり、仕事の姿勢や態度を情意考課、能力を職務基準、そして業績を個々人の目標管理やBSCで管理したとしても、統括してそれらを記録しておく媒体がなかったのです。

 

 なので、職員の教育カルテを開発しました。

 

 ここではフォームを表示できませんが、「教育カルテ」は、以下の手順で作成します。

 

  1. 本人の氏名、作成日を記入する
  2. 職務基準やマニュアル等に照らし合わせ本人の課題を列挙、本人の考えや意識を評価しながっら課題選択
  3. 優先的に修正すべき問題を選択する
  4. 選択した習得目標やスキルアップの課題を記入する
  5. 現状のレベルを確定する
  6. 目標レベルを決定する
  7. 期日を決定する
  8. 教育担当者を決め、サインをしてもらう
  9. 教育を行う
  10. 到達レベルを記入する
  11. 到達した日を記入し、コメントを記載しサインをする
  12. 次の用紙を用意してレベル未達及び新規課題を抽出する

     上記を使い、OJTを開始したのです。

結果、

  1. 教育の可視化ができた(本人の問題、そして何を教育したのかを可視化できる)。
  2. 相互確認ができた(教育カルテを各部署でファイルしておくことで、誰でも、職場内スタッフの課題を理解することができる)。
  3. 相互教育(教育担当者以外でも課題を相互にみることが可能であり、自分の得意な分野についてのアドバイスができる)→これは恥ずかしいから止めて欲しいとの意見も多くあります。
  4. 教育側の教育巧拙が確認できる(教育担当者は教えることでスキルもあがるし、また教育の巧拙を確認できるため教育担当者となった職員のスキルも向上する)。
  5. 振り返り 本人が振り返りを行える(できなかったことができるようになったポイントを確認できる)→読者は「2年前に自分は、何ができず、今はできるようになった」ことが分かりますか?多分半年前のことも覚えていないことがあると思います。教育カルテがあると、組織も振り返りができるので、客観的な評価にも使えるなど結構役に立ちます。
  6. 自信が醸成される(できなかったことができるようになった用紙の分だけ成長したことが把握できるので、本人に自信が生まれる)

 という効用を得ることができました。

 

 今回はこの程度にしておきますが、教育カルテを管理することで上長も部下も常に教育の課題を掌握できるし、期日を決めた教育が行われることも含め、前回のブログで紹介した一人ひとりに光を当てたOJTが確実にできるようになります(いま教育カルテのweb化を行なっています)。

 

 教育カルテは、教育の計画、実施、チェック、修正行動を誘導するので教育のPDCAを実現するツールでもあります。

 

 自分でいうのもなんですが、以外と画期的で、さまざまな病院で使われています。

 

 もちろん、考え方は普遍的なので、どの業種でも活用できますし、使うと便利です。

 

 というか、コロナの時代にあって一般の企業においても、生産性向上のための教育が持て囃されていますが、本当に必要なのは、集合教育ではなく職場内教育です。

 

 OJTのためには、教育カルテのweb化やアプリでの活用が有効で、早期に科学的な根拠をもって、これらの構築を行うことが必要です。

 

 職務基準やマニュアルがない会社であっても、上司と部下ができないことを話し合い、本人の意見を取り入れつつ、組織の要請に応えるかたちで記録を残しながらOJTを行うと、見違えるように成果がでます。

 

 まずはOJTにおいて、教育カルテを導入する事が有益です。

 

 またいつか、どんな業種でも使える、教育カルテを活用した実際の事例研究事例をご紹介しますね。