よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

意外とやってないマーケティングってどんなこと?

 

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 5、6年前のフィリピンのマニラで、弾丸三日間6病院視察ツアーをしたときのこと。

 中心から少し離れた場所にある国立心臓血管センターを、ノーアポで訪問しました。

 

 フィリピン特有の厳しいセキュリティで、ガードマンが入り口に立ちはだかっています。なかなか中に入れてもらえませんでしたが、マネージャーまで呼んでもらい、辿々しい英語で「この病院の評判を聞いて日本から遥々きたので、案内して欲しい」と懇願し、やっと見学の許可を得ました。

 

 じゃ見るだけですよ、いきなりなんだから、みたいな感じで院内に入ると、外来の壁に組織図が掲示してありました。

 

 なんと、そこに予算実績管理部とマーケティング部がありました。日本では見たことがない部署です。

 

 もちろん、一般の企業でも敢えてこの機能を単独でミッションにする企業は多くはないと思います。全社は経理、後者は企画か、営業企画にその機能があるからです。

 

 ということで、いかにこの2つの機能をこの病院が大切にしているのかが分かりました。

 

 大事だと、私も思いますが、日本の病院は自分の病院のことで精いっぱいで、市場調査(マーケティング)を継続的に行い、その結果を活動に活かしているところは少ないという印象です。

 

 DPCという制度により医療を行う病院は、地域における自院の治療内容や患者数その他の情報を入手することで自院のポジションを把握することはできます。

 しかし、じゃあどうするのか、といったところにつながらない病院も多くあります。診療情報データだけでは行動がとれません。

 

 医療は医師に依存する方が多く、ここが弱い、ここが強いといった結果を得て、行動に移すことが難し業種であると、言う事かもしれません。

 

 市場調査を行い、経営に活かす。今日のテーマです。

 

 病院の市場調査をどのように行なえばよいのでしょうか。

まず、市場調査の目的は、以下の2つです。

 

1.院外の現状把握

  自院の内外における現状の認識をしなければなりません。何をするにしても現状を明確に整理しなければ次に進めないからです。

 

 院内の現状については、日常得られる情報や、アンケートや面談によるヒヤリング、データ分析、部署毎にテーマを決めて問題抽出をしてもらうことで足ります。

 しかし院外については市場調査を行う必要があります。

 

2.戦略立案

  内外の現状の分析を完了したうえで、どのような「戦いに勝つための計画」を立案していくのかに関わる事項です。

 

 市場調査を行わなければ、適切な計画を立てることができません。

 

 市場調査項目は、(ⅰ)昼及び夜に自院のターゲットとなる患者が、どの地域に、どれだけ存在するか(ⅱ)近隣にはどのような医療機関があるか(ⅲ)自院で患者を呼べる機能はどのようなものがあるか(ⅳ)自院の競合となる医療機関はどのような動きをしているか、等となります。

 

 

 市場調査は、(ⅰ)ネット情報(ⅱ)自院レセコン情報(ⅲ)訪問(ⅳ)アンケート(ⅴ)面談

 といった手法により行います(外注もできますが高いですよ)。

 

 内閣府や専門情報チャネルにより、地域人口動態や疾病動向、競合の情報が得られます(ネット情報)。

 

 さらに自院のレセコンデータから、住所地、年齢、来院頻度等自院に来院している患者情報を把握できます(自院レセコン情報)。

 

 また競合病院への訪問を行い、駐車場の混み具合や、待合室の状況を定点観測したうえで、曜日、時間帯別、医師別診療科別の来院状況を把握することができます(訪問)。

 

 そして入院外来患者にアンケートを行い、当院の問題や日常的に通院している医療機関の情報を得られます(アンケート)。

 

 もちろん、他の病院の事務長に、公的な会において情報を得ることや、協力関係にある他病院事務長との間で、情報交換により有益な事実を知ることもできます(面談)。

 

 これらを行った結果、外部からみた自院、他院や地域情報を全体的に掌握し、課題や問題、そして自院の強みや弱みを分析します。

 

 上記の手法は初歩の初歩ではあり、当たり前のことです。

 しかし、個々には実行しているつもりても、体系的に行っていない病院が多いのではないでしょうか。

 

 自院でさらに必要な事項を追加したうえで、市場調査を実施し課題発見、解決策検討、行動誘導により、目的を達成します。

 

 市場調査を継続的に行い、厳しい環境下での増患対策を行うことが有効です。

 

 内部体制を整備し、患者や地域から評価される病院をつくり、きたるべきアフターコロナの時代、飛躍できるよう備えることが期待されます。