よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

達成感のために、何から始めますか?

 

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 我々に与えられた時間は有限です。

 

 なので、ある期間内に複数仕事を行わなければならないとき、優先順位をつけて行動しなければなりません。

 

 例えば、5つのことを1週間で終わらせなければならないとき(似たようなことを多くの人が実践していると思いますが)使うと便利な方法があります。

 

 緊急性(Emergency)、重要性(Importance)、困難性(Difficulty)を使います。これらを基準としてやらなければならないこと、やりたいことを一つひとつ評価し、優先順位をつけて行動することで、時間を有効に使えます。私はEID(エイド)と言っています。

 

 緊急性、重要性、困難性以外の変数をたくさんつくると組み合わせや評価が複雑になるので、試行錯誤の結果、この3つに落ち着きました。

 

 仕事においては、まずは緊急性を第一とし、その後重要なものはどれか、行動が困難なものはどれかという手順で評価し、複数のタスクの優先順位を決めることが有益です。

 

 緊急性は、顧客や組織からの要請が緊急であるものをいいます。

重要性は、顧客や組織にとって重要なものであるかどうかで判断します。

また、困難性はその仕事が難しいかどうか、時間がかかるものであるかどうかを基準に選定します。

 

 緊急性はとても大事です。緊急性の高いものは、それを必要としている人や組織があり期日は決まっているからです。

 

 重要性が高かったり困難性が高いほうから先にやり、緊急性があってもすぐできるものを後回し、という人もいるかもしれませんが、後回しにしたおかげで、そのタスクが終らなかったりしたときなど、万が一のことがあり、ニーズに応えられなければ例え簡単なタスクであったとしても相手から信用を失うことがあります。

 

 なので何がなんでも緊急性を一番に考えるのが無難です。

 

 次に重要性です。これも、あるタスクを重要だと思っている人や組織があり、自分以外の他者が判断していて揺るぎのないものであり、いやいやこれは重要ではないだろう、と自分で判断できません。

 

 仕事は自分だけの考えで動いているのではなく、第三者のニーズなので、二番目には重要性を基準とします。相手にとってどうなのかを常に考え(これ大事ですね)判断基準をつくり運用すると良いでしょう。

 

 緊急性の評価をしたのち、重要性の高いものは先に処理するというながれです。

 

 困難性というのは、現状、実行が難しいだろう、時間がかかるだろう、という自分の価値観や経験による予測に基づくものであり、絶対的なものではありません。

 

 後述しますが、組織内の仕事ができる誰かや外部のプロの友人や知り合いに任せれば円滑にいくし、時間も短縮できます。

 

 自分の工夫や創造次第でどうにでもなる可能性があるということもあり、いくらでも変化しうる相対的な条件として捉えることが得策です。なので、最後の基準とします。

 

 さて、上記の考えに従って、H…高い、L…低い、と定義したとき、緊急度、重要度、困難性による優先順位の付け方は次のようになります。

一番は緊急度H、重要度H、困難性Hの仕事です。

二番は緊急度H、重要度H、困難性L

三番は緊急度H、重要度L、困難性H

四番は緊急度H、重要度L、困難性L

五番は緊急度L、重要度H、困難性H

六番は緊急度L、重要度H、困難性L

七番は緊急度L、重要度L、困難性H、そして

八番は緊急度L、重要度L、困難性L

という順番です。

5つを上記のスコアで評価し、仕事の順番を決めることが有効です。

 

 ところで、優先順位をつける前の前提をクリアーする必要があります。

 まず、自分の使える総時間を見積り、そのうえで一つひとつのタスクの総和時間を推定します。5つの仕事を行う時間をとれるのかを予測するのです。

 

 このときにはタスクの内容や困難性に注目し、全体の凡その時間を見積もったうえで、資源としての

時間と行動の時間を擦り合わせ調整を行います。

とりわけ、自分総時間<タスク総時間のときには、自分ではタスクのクリアーが難しくなります。

 

 なので、この段階で自分では賄いきれない業務については部下や仲間、上司に依頼して全体を自分の時間に収まるようにスケジュールをつくっていきます。

 

 これは優先順位ではなく、全体の見積もりと自分の時間とのすり合わせプロセスです。ここでコツがあります。全体の80%の時間で終了することを前提として考えることが大切です。

 

 そもそも、一つひとつのタスクの見積もりは「勘」に依存していて、絶対的なものではありません。20%は余裕として押さえておくのです。

 

 そして、5つの仕事を、当初はすべて100%での完成度を目指すのではなく、一つひとつをシングルタスクとして合格点の80%で仕上げ、残りの時間で相手が大切に考えている(自分が重要と考えることが相手にとっても重要とすれば、自分の重要性判断も貴重ですよね)、重要度の高いものから仕上げていきます。

 

 もうすでに合格点には到達している(この評価については第三者の眼も必要なケースも多いと思います)が、そのうえでより良いものに仕上げていく時間を20%のなかからとる、という考えです。

 この方法により、いくつかを始めから完璧にしようと仕事をしていて、残りの仕事が合格点に到達しないまま時間切れになりそうという泥沼からの回避ができるのです。

 

 ここでは1週間で5つと設定しましたが、プロジェクトや、時間をかけて達成しなければならない複数のジョブがあるときでも上記の優先順位付けは有効です。

 

 何かを始めるとき、必ず基準をもうけて意思決定し、計画を立て、行動に移すことが大切です。

 

 それこそ緊急にいまやらなければならない仕事を日々こなす毎日であるとしても、やらなければならないこと、やりたいことを複数定め、有限の時間をどううまく使うのかを考えるときの、小さなきっかけとして使ってもらえればと思います。

 

 さて、もう一つ伝えたい重要なことがあります。上記の優先順位(エイド)をつけて仕事をするときには、既にお分かりのように自分のファンをたくさんつくっておく必要があります。

 仲間にしても部下にしても、上司にしてもあなたのファンであれば、仕事を振ったときに二つ返事で助けてくれます。

 

 信頼や信用がなければ、例え部下でも指示をしっかり受け止めず、気持ちの入らない仕事をされえ後でフォローのための、とてつもない莫大な時間をとらなければならないこともあるからです。

 

 いわんや仲間や上司は、こちらの依頼や、お願いに耳を傾けることはないでしょう。

 

 日ごろから仕事に対する態度や姿勢を良いものとするとともに、積極的にコミュニケーションをとり、他者を懸命に支援することを心掛け成果を挙げて、「必要とされる人」になる努力をしておかなければなりません。

 

 人に好かれる仕事ぶりや人格形成への取り組みが、他者からの気持ちの良い支援を受けて、自らの成長や達成感を生む人生につながると私は考えています。

 

 仕事をうまく行い、成長するとともに達成感を得るため、何から始めるのを考えた時、まずは人から「好かれる自分づくり」より始めなければならないのかもしれませんね。

 

 

 

 

 

決意し行動する手法

 

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 何かをやりたいという思いの実現のため、何かを始めようとするには、十分な調査、分析が必要です。

 

 決めたことを成し遂げるために調査を行い、データを分析して、意思決定を行わなければなりません。

 

 ここで意思決定とは、目標を達成するためにいくつかの手段を列挙し,それらを分析し,そのうちから一つを選んで決定する人間の活動をいいます。

 

 意思決定を行うときには、いくつかの代替案を用意し、そのなかで何が求めるものに最も近いのかを合理的に見極めて、選択のための判断を行うことが大切です。 

 

 このようなやり方はどうか、こんなアプローチをしてみよう。始めにうまくいかないときには、こうしてみよう。この段階までいったら次はこうしてみよう、などとあらゆる事を想定して準備するのです。

 

 思い込みにより深く考えずに、また人の意見も聞かないまま、準備不足で何かをスタートしてしまっても、ときにはうまくいくことがあるかもしれません。

 

 しかし大抵の場合には、十分な準備を行い、それから行動を開始することのほうが、成果を挙げられる可能性が高くなるのは間違いありません。

 

 私も、過去さまざまなことを熟考なしに始め、痛い目に会い続けて、最近やっとこのことに気付きました。

 いままでを振り返るととても恥ずかしくていたたまれない気持ちになります。

 

 その痛みをもちながら、少しはましになったものの、それでもうまくいかないこともあり、何かをやり遂げるのは難しいと感じています。

 

 なお、行おうと考えたこと自体が適切ではないときには、いくらその達成のための方法や手段を考え意思決定しても、うまくいかないし、もちろん方法や手段が適切ではなくても成果は挙がりません。

 

 しっかりと分析、準備を行い最適な方法で事を始めるべきだと、身に染みて思います。

 

 ただ、完璧に準備をしてから何かを始める、ということも、時代が大きく変わる今では、タイミングを逃したりチャンスを活かせないことがあり、事案によっては、どこまで準備をすればよいのかも様々だと考えています。

 当初の分析や検討が十分にできたと考えても、実は網羅的であるはずがないと考えればなおさらです。

 

 ある程度の準備をしたうえで、まずは(ユーザー視点の)アイデアを出して実験し、結果をフィードバックして次に進むことが良いと言われています。デザイン思考(デザインに必要な思考方法と手法で、ビジネス問題を解決する考え方)によるものです。

 

 できるだけたくさん失敗すれば、成功に早く近づく、という発想が根底にあります。アイデアを出し、やってみて失敗したらその結果を活かしてまたアイデアを生み次にいく、というサイクルを回していくのです。

 

「うーん、あれでもないこれでもない、この角度からみるとこれで、違う視点から考えるとこのやり方かな」と言っている間に時間はあっという間に通り過ぎていきます。

 

小さく始めて実験し、うまくいけば、さらに工夫をして次のアイデアを出し、次に進む。うまくいかなくても結果を活かし、次のアイデアを考え、実験してみるという繰り返しが必要だという結論です。

 

「思いつきで行動し、失敗して諦める」ことを最低とし、「あれこれ長い時間かけて方法や手段を選択し、うまくいく」ことが最高だとします。

 

そうすると、始めからうまくいかないかもしれないけれど、「その時点でもっとも良いアイデアを出して、最善を尽くして小さく実験し、結果をフィードバックしながら次に進む」こと、というアプローチが、ちょうど中間のやり方になります。

 

過去は石橋を叩いて行動するパターンがベストであり、適切であったとしても、タイミングが合わなかったり環境変化によりチャンスを逃すことがある。 

 

それを考えれば、従来の意思決定による行動を、より効果的に廻し、「アイデア→実験→フィードバック」をできるだけ早く先に進むやり方に変えるのが時代に合う、と考えています。

 

目にも止まらぬ速さで時代が過ぎ去ってしまう今、従来の意思決定と行動の関係も、新しい行動様式にバトンを渡す時期が来ているのかもしれません。

 

 

 

 

決意と行動を考える

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 人は決意なく、習慣や惰性での行動をとることができます。これを無意識行動といいます。

 

一方、何かをしたいという意思を持って行動するのは意識行動です。

 

無意識行動では大きな成果は得られませんし、意識行動であっても、弱い意思(これを弱意識行動といいます)であれば思ったように成果を得られません。

 

ただ、目的によっては、無意識行動や弱意識行動でも一定の結果を出せます。

 

朝起きて顔を洗い、歯磨きをしてトイレに行くのは習慣であり、また、会社に時間までにいくことですら強い意思は必要ありません。

 

体調が悪くベッドから立ち上がれないときに、どうしても会社に行くんだという思いをもって意識行動をとることはありますが、その行動は短時間で終了します。

 

 毎日の慣れた仕事であれば、あまり多くを考えずに慣性で行えてしまうこともあります。

 

 朝になれば身支度をして家を出て出社し、決まったことをいつも通りに行う。判断業務もそんなに多くの選択肢があるわけでもなく、何とかこなせます。

 

 患者の笑顔や仲間の気遣いに小さな達成感はあるとしても、目的をもったこうなりたい、こうしようという強い意思なしに(弱意識行動で)、一日が終わり帰途につく毎日です。

 

 人の行動は大半が無意識で行われる、といわれていますが、意味のある工夫や改善、創造なしにあっという間に時間が過ぎてしまうのは恐ろしいことです。

 

 それは、本当に私たちにとって充実した人生といえるのでしょうか。

 

 充実した人生を送りたいのであれば、決意し、目標に向かい行動することでそれを成し遂げ、達成感を得続けていく必要があります。継続的な強い決意による意識行動をとらなければなりません(これを強意識行動といいます)。

 

強意識行動は信念に裏付けられています。私しかできない、私がやるんだという信念がなければ、合目的的(目的に合った=目的を達成するため)な行動を誘導できません。

 

自分は習慣や惰性で行動していないか、今何かをしなければならないという思いがあるか、それは信念に昇華できているか、信念をもち強意識行動をとれるかどうかを振り返ってみることが有益です。

 

あらゆる意味で厳しい時代を迎えた今、充実して生きるための大小の目標を立て、強い意思をもって行動し成果をあげて達成感を得るために、私は「決意と行動」を見直してみようと思います。

 

と言っても、いままで決意し、行動できなかったことや、行動しても決意が足りず、何処かで挫折したことがどれだけあったのか。

両手の指を折って数えても足りません。

 

しかし、なかなか成果があがらないとしても、何回でもチャレンジし、どこかでは、しっかり行動できるようになれることを期待し、懲りずに決意し続けていきたいと思います。

  

 

 

 

 

部下がみるみる変わる面談とは

 

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 私が監査法人に勤務していたとき受けた面談や、銀行員だったとき受けた面談で、面談が終ったあと、前に進むことができた面談と、そうでもないなという面談があったことをしみじみ思い出します。  

 そのときには、まだ、面談をしてもらう側としての姿勢がなっていなかった、決意ができていなかったのではないかと、とても反省しています。

 

本来、面談は、上司と面談相手の相互理解を深め、組織や上司、部下の進む方向性をすり合わすために行うコミュニケーションの場です。

 

したがって、面談は以下の要件を備えていなければなりません。

1.明確な目的

2.上司への信頼

3.結論を出す

がそれらです。

 

まずは、明確な目的です。上司の目的意識だけではなく、部下の目的意識が必要です。そもそも、自分は所属する組織で一体何をしたいのか、何を達成したいのかを持ち、やりたいことを達成するために仕事をしているという思いでは仕事はうまく行きません。

 

自分の「やりたいこと」「やらなければならないこと」と組織の目標が合致している時、人は力を発揮することができるのです。

 

上司も同じです。一人の人として自分の人生をどう生きるのか、達成感をどのようにして得ていくのかについて考えている上司が、リーダーとして力を発揮できると考えています。

 

これを解決したい、前に進めたいという双方の思いがなければ面談の時間は無駄です。目的を達成するために業務の一部として面談を行うことを理解しなければなりません。

 

そして部下による上司への信頼です。信頼がなければ、部下は真実を語りません。面談はコミュニケーションなので、一方的に何かを伝達するのではなく、相互理解を行い目的を達成しなければなりません。

 

そうであるとすれば、上司が部下を信頼するのは当然として、部下が上司に心を開く必要があります。

 

心を閉ざし、面従腹背をベースとした上辺だけのコミュニケーションからは成果は生まれません。上司は日ごろから部下に信頼される言動を行い、面談に臨む必要があります。

 

 そして、結論を出します。説明を行い、意見をもとめ、役割を明確にしたうえで、協業に同意する。予め想定した面談の目的を達成し、成果を挙げることを相互に確認し、約束する必要があります。

 

1.意向面談であれば、現状を分かり合ったうえで、部下が前に向って進むことを約束する、

2.目標面談であれば、部署でやろうと決めたことのどこを自分が担い、部署目標の達成が自分のやりたいことを達成する一番の近道であることを受容れ、役割を果たすことを公約する

といった具合です。

3.日々発生する問題解決についても同様に、面談により解決の糸口をみつけ、上司と部下が共に活動し、いつまでに結果をだそうと約束する

ことが求められています。

 

 面談を行う上司は、部下それぞれの特性や得意分野、できていないことや育成目標を念頭におき、部下がどうすればやる気を出し活性化するのか、どう支援すれば成長するのかを考えて面談に臨まなければなりません。

 

面談の場を、自らが誰にも頼りにされるリーダーとして成長する場としても捉え、日々努力することが求められています。

 

上司も部下も楽しくて仕方がない面談があちらこちらで行われ、成果があふれ出て職場が盛り上がる、そんな憧れの組織は素敵ですね。

 

仕事で好かれる人は、うまくいく

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 以前、病院間の連携強化を図るためにクライアントの連携室(一般企業でいえば、コンシューマ営業部のイメージ)の名刺をもち大学附属病院に訪問したことがあります。

大学の教授であり同院の院長にお会いしました。

 

長い時間を医療の発展に捧げ、何かを成し遂げた人だけが持つ、穏やかな達観か表情に見て取れます。

 

私は、何がなんでも多くの(患者)紹介をもらいたい一心で、たぶん目をキラキラさせながら、「先生の病院と今まで以上に連携強化をさせていただきたく(強いネットワークをつくりたく)思います。

 

どうすれば連携をもっと強固なものにさせていただくことができますか?」と、後から思うと恥ずかしいほどの猫撫で声でお伺いしました。

 

院長から、論理的で合理的な話をいただけるとワクワクしていた私に、「それは君、看護部長や事務長と仲良くなることだよ」と院長は一言だけ答えられました。

 

これが連携(ネットワーク)の本質です。私は院長の言葉に妙に納得してその場を辞した記憶があります。

 

もちろん、紹介元は患者に合った機能の病院を紹介するのは当然です。そのうえで、

1.治療に適した環境がある

2.安心して紹介できるクオリティがある

という条件があります。

 

 その要請に応えるよう、紹介を受ける病院は常に意識しながら治療やケアに当たる必要があるのです。

 

しかし、それらのバーを一定程度クリヤーするのであれば、あとは連携が人と人のつながりでできあがっていくことは明らかです。

 

1.相談に迅速に対応してくれる、

2.紹介元の状況を把握し、肌理の細かい対応をしてくれる

3.約束を守る

4.誠意をもって対応する

など、人として信頼できる連携室職員、相談員、ワーカーでなければなりません。

 

人間関係は、患者や家族、そして紹介元病院職員など相手の立場にたち誠意をもって物事を考えることでつくられます。

 

好かれる人と、好かれない人、嫌われる人の差がつくのは、ここであげた対応ができるかどうかで決まってしまうんですね。

 

もちろん、紹介元の病院も、紹介先の状況把握を行い、現状を踏まえたうえで対応することが通常です。

現状を無視した(受け入れることを強要するなどの)無茶な対応をすることは控えなければなりません。

 

とはいっても患者や家族の状況は思いもよらない、想定できない方向に進むこともあり、また自院のベッドコントロールからの突然の要請もあります。

紹介元病院の機能を最大限発揮するために、患者や家族の意向を重視したうえで退院支援を行わなければなりません。

 

そんなとき、こちらの気持ちになり紹介先病院が臨機応変に対応してもらえれば、良い関係も生まれます。

 

何れにしても紹介を受ける連携室職員は、入院ルールや医師、病棟の状況等、自院の態勢や状況を常に掌握し、それを伝えるなかで、紹介元との人間関係を強固にするよう活動しながら、連携を行う必要があります。

 

紹介元も紹介先の職員も、患者や家族の思いを軸に医療従事者としての良心をもって活動することで、両者の関係が良好になり、院長がおっしゃった、「仲良くなる」ことができるのだと考えています。

 

どのような立場であるとしても、人として何が大切なのか何のために仕事をしているのか、を常に自分に問いかけながら活動することの大切さを教えてもらう機会になりました。

 

 今日の議論は、医療機関だけではなく、あらゆる仕事において社内外のネットワークをつくりあげるときに当てはまる重要な内容です。

 

 誠意をもって顧客目線で相互にベストを尽くし、他人からあの人は仕事ができるし誠実な人だよね、と好かれ関係づくりを行うことが、仕事を円滑に進める唯一の方法なのだと気付きます。

 

 できそうでできない、常に念頭に置いて自分を高めていく、奥の深いテーマだと考えています。

 

 

 

 

 

暗黙知を活用した進化、いかがですか

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組織改革の重要なテーマとして、可視化がよく、取り上げられます。我々は、目に見えない知識(暗黙知)は、なかなか早期に習得できないし、また変えることはできません。もちろん、目に見えても変えることが難しいものもありますが、見えなければ、その変更はさらに困難になります。

 

さて、落語界で噺を覚えるためには、教科書や台本を使うのではなく、そのネタを持っている師匠に弟子入りし、師匠や先輩から口伝えで継承してもらう必要があります。

 

入門してから前座見習い、前座、二つ目、そして一人前の真打となるまで13年から16年と、大変な年月を要します。

 

伝統を重んじる芸能と、より複雑で常に進化している医療を比較することに意味があるかどうかは別として、医療においては迅速に医療の質を高めるために、ながい年月を待つことはできません。どのような職種のスタッフでも早期にスキルを身に付けなければならないのです。

 

病院職員のほとんどは資格を持ったプロですが、病院のやり方の習得や試験を経ただけでは行えないことへの対応が必要で、そのためには、目に見えない知識や経験(暗黙知)を目に見えるようにして(形式知)、伝えていく必要があります。

 

優れたスタッフの仕事のやり方のうちできるだけ多くをノウハウとしてマニュアルに落とし込みます。もちろんチェックシート化することも有効です(ただ、チェックシートではノウハウの部分、つまり、上手いやり方やコツが伝わりにくいため、ナレッジマネジメントのツールとしてはマニュアルが一番です)。

 

研鑽を行っており経験を積んだ職員は、多くの知識を持っています。

 

彼らの知識を可視化することにより、自分が経験により、あるいはマニュアルやチェックシートなどのツールがないときと比較して各段に早く能力を高めることができるのです。ツールを使うことでAさんからBさん、といった一人称ではなく多くの職員が可視化されたノウハウを使うことができます。

 

ノウハウを媒体として、こんなことをするとこうなるという疑似体験を行えます。実際に経験したことと疑似体験は全く同じではありませんが、明らかにそうではないときと比較し知識を深め、事にうまく対応出来ることにつながります。

 

手順、留意点(ノウハウ)、必要な知識・能力、接遇といった具合にマニュアルの項目を区分し、整理しながら(構造化されたマニュアルと呼んでいます)可視化を進めることが、使うものの理解をより深めます。医療の質を早期に高めるために、使いづらい従来の手順書としてのマニュアルではなく、ノウハウ書としてのマニュアルやノウハウにより作成されたチェックシートを活用しなければなりません。

 

もちろん、写真やビデオにより学習を行うことや、eラーニングを使うことも効果的です。

ただし、その場合でも単なる手順だけのマニュアルや、手順、留意点、必要な知識や能力が記載されているとしても、それらが整理されず雑然書かれたマニュアルではなく、前述したように、構造化されたマニュアルが必要です。

 

まずは手順のみを覚える、次にノウハウを習得、さらに必応な知識や能力を身に着け、そのうえで、ここでいう接遇(痛みを与えない、羞恥心を与えない、恐怖心を与えない、納得してもらう、不便を与えない、不快な思いを与えない、不利益を与えない)をキーワードに活動することが期待されています。

 

さらに一度作成したら改訂しない固定的なマニュアルではなく、業務改善提案制度とリンクさせ、常に新しい創造や工夫を織り込めるようなマニュアルを作成し、運用することでマニュアルがナレッジマネジメントの基礎として機能します。

 

暗黙知を形式知に、個人知を組織知に昇華させる活動により初めて個人や組織の成長が得られます。これは、目に見えないもの(暗黙知)を目に見える(形式知)ようにする。また、一人ひとりのノウハウ(個人知)をマニュアル化し、それを皆が学習することで組織のノウハウ(組織知)とすることをいっています。

 

誰かが作ったマニュアルをみて業務を行う(運用)なかで、改善点を発見し、それをマニュアルに載せれば(改訂)することで、さらに新しいノウハウ(個人知2)が組織のノウハウ(組織知2)になる、という流れで個人や組織のナレッジが進化する=成長するんですね。

 

10年以上前オーストラリアのメルボルンで病院見学をした時、マニュアルを見せてもらうと一番下に時系列でたくさんのサインが書かれていました。マニュアルが改訂され活用されている証です。そのあとのミーティングで海外の急性期病院では保険制度の違いから日本よりも格段に在院日数が短く、がんセンターでは3日で退院すると日本人の看護師Nさんが話してくれました。

 

短期間で退院する患者のケアが迅速かつ適切に行われるためには、皆が高いレベルでの看護をしなければならずマニュアルの進化が欠かせないのだと理解できました。

 

また、爾後、北京で循環器を得意とする北京大学附属病院を訪問したときには、女性の准教授が、看護師は毎週マニュアルの試験を受けるので大変です、と話してくれました。どの国もマニュアルを使った教育(活用)に力を入れていることが分かります。

 

医療に限らず、どの業種においても地道な改善の積み重ねが必要です。

 

物事を全て目に見えるようにして標準化し、業務を習得し易くするとともに、そのうえでより良いものに進化させること、マニュアルや業務改善制度を活用し、常に新しいものに変えていくことが今求められていると考えています。

組織を支える、すごい3つの規程

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 物事を円滑に進めるためのはルールが必要です。

 

暗黙のルールもありますが、明示的なルールがあれば、誰でも基本に立ち戻れます。

 

今日は、仕事をする上でベースとなるルールについての話です。

 

組織が小さいときにはあまり気にはなりませんが、ある程度の規模になったときには、これらがないと、あちらこちらで混乱が起こります。

 

これは俺の仕事ではないですよね、とか、えー、私に責任あるんですか?また、これって誰かに許可必要でしたっけ?のようなことが常に起こるし、君って、こんなこともできないの?とかいうことが常態になるからです。

 

ルールがあり、周知されていれば、組織がうまく回る可能性はかなり高くなりますよね。

 

ということで、何処かで必ず役に立つ職務分掌、職務権限、職務基準の3つの規程、ルールを簡単に説明するので、お付き合いください。

 

まず、職務分掌は各部署毎の業務(≒仕事)の担当を示す規程であり、権限規程はそれぞれの業務の権限をきてする規程です。

 

職務分掌により各部署の役割が明確になるとともに、権限規程によりそれらへの権限と責任が明らかになります。

 

そして職務基準は、職種や職能等級制度における資格ごとに、各業務を課業レベルに分解し、どの資格者がどのレベルまで当該課業を実行できなければならないと決める基準です。以下説明します。

 

1.職務分掌

職務の分担が明確でないと、その仕事は自分のものではないというケースが出てきて仕事ができなくなる事態になります。

 

職務分掌が網羅的かつ明確であれば、Aという仕事はA部署の、BはB部署の仕事であると決まり、それぞれの部署が連携しながらある業務ができるようになります。

 

但し、緊急時にAという仕事が発生したときに、A部署のメンバーがいないとある業務は停滞します。

 

いつでも何かあったときに対応できるように、どの部署でもできるようにしておく必要のある仕事ももありますね。

 

なお、ある部署のなかで担当が決まっているので、他の担当者の仕事はしない、職務分掌にないし、ということのないよう、コミュニケーションを取りながら業務を円滑に廻せるようにしておくことも大切です。

 

2.権限規程

権限は、起案、審査、承認、(実施)、報告の4つで行使されます。

 

起案はこれをしたらどうでしょうという提案をすることです。

また、審査はそれが業務に必要であるのか、予算内であるのか等をチェックすること、また、承認は実行していいという決裁を行うことをいいます。

そして報告は、決裁の結果実行されたことが当初の決裁通りであったことの報告を受ける権限をいいます。

 

これらがルール化されていないと、責任が明らかになりません。なお、権限は実行責任を伴います。やるからには責任とってね、ということですね。

 

3.職務基準

 職種別資格別に職務や課業を明らかにした規程です。職務(仕事)は、いくつかの課業に分かれます。

 

課業とは一人ひとりに与えられた仕事の単位をいいます。

 

例えば発注業務であれば、発注すべきものの確認、発注承認、発注ソフトの立ち上げ及び発注入力、発注後チェックといった仕事に区分されら、といった具合です。

 

場合によれば相見積りの入手、検討、値引き交渉といった仕事も追加されることもあります。

 

これらを活用することで、Aという仕事はA部署のどの資格者が(予算の範囲で)どのように仕事を進めていけばよいのかが明らかになります。

 

逆に言えば、この資格の人はこの仕事ができなかればならないですよ、という基準になります。通常、ある課業について、支援すればできる、独りでできる、完全にできる、教えることができるに区分しています。

 

評価や教育のためにも、職務基準が無いと管理が難しくなろことは間違いありません。

 

君だったら、規程上完全にできるレベルじや無いとダメだよね、と言った評価を行い、不足するところを教育の対象とするのです。

 

如何でしたか?かなり端折って話しましたが、ここでいう3つのルール、規程や基準が、業務を適切に行うために不可欠です。

 

実務においては、これらすべてを整備しなくても業務は回ることが多く見受けられます。

 

自然に出来上がったルールのなかで組織が運営され、役職による上下関係があれば、それで事足れりというケースです。

 

しかし、冒頭説明したように、権限規程がないことにより、組織内における責任が不明確になり、事が進まないことがあったり、権限なく事が進んでしまい、問題が発生することがあります。

 

組織が一定規模になったときには、生産性を担保する基本中の基本であるこの3つのルールを整備し、ムダのない運営が行われると良いですね。