よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

組織活動の持続性について

 

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 常に、決めたことを達成するまで実行できる組織は成功する組織といえます。もちろん、組織は人の集合体であり、何かを成し遂げるのは人です。

 

 組織の決めたことを人がどのように達成していくのかを考え、実効性を高める必要があります。今回は、組織活動の持続性について説明します。

 

 組織活動は合目的的に行われるため、組織活動=目標達成のための活動ということができます。目的を持たない組織は継続できる筈がありません。また、決めた目標をいつも達成できない組織もいずれは淘汰されることでしょう。

 さまざまな目標を決め、それを達成することが組織活動継続の基本ということができます。

 

 さて、前述したように、組織には人がいて、他の経営資源があります。いうまでもなく、経営資源は、ヒト、情報、時間、カネ、モノですが、人が他の経営資源をどのように活用し成果を挙げていくのかが、マネジメントの課題であり目的です。

 人が組織活動を持続させるためには、

自分

リーダー

部下・仲間、ネットワーク

のプレイヤーが用意されます(二役のケースも多いですね)。

 

 その元で、組織目標達成のためには、以下の8つの要件が必要です。

  1. 大きな需要
  2. 担当者の資質
  3. 担当者のコミットメント(約束)力の強さ
  4. 適切な支援者の探索・配置
  5. 関係者達成意欲の持続
  6. 各人の時間の捻出
  7. リーダーの執着
  8. 行動の精緻化

がそれらです。

 

 大きな需要は、組織にとってではなく組織の顧客にとってという意味です。組織目標が、顧客の大きなニーズに合致ししていなければ、いくら目標を達成したとしても組織継続の糧になりません。

 

 組織が合目的的に行動するとしても、目標自体に価値のなければ、組織活動の持続性は担保されないのです。今やっていることは間違いないと思い込んで活動していて気付かない。

 意外と疎かになりがちですが、この部分の検証をしなければなりません。

 

 担当者の資質は、価値のある目標を達成するための能力やスキルをもった者でなければならないのはいうまでもありません。

 資質のある者をどのように採用するか、育成するかといったテーマが生まれます。一人ひとりに光を当てたマネジメントが求められています。十把一絡げの対応からの脱却が必要ですね。

 

 なお、資質があったとしても、目標達成にコミット(約束)しているかどうかにより成果は異なります。

 

 我々が主張するように「個人のやりたいことと、組織目標を擦り合わせ、個人のやりたいことができれば組織目標が達成される組み立て」を行い、個人のコミットメント力を高めることがいかに重要かが理解できます。

 

 さらに、適切な支援者の探索・配置が必要です。

 組織で動く限り、1+1=2を超える相乗効果を生まなければなりません。ミッション毎にその実行に長けた者を発見し、支援者として配置することがなければ、環境変化に対し柔軟な対応を行うことができません。

 大きな需要には普遍性のあるものだけではなく、時代により変化するものもあるからです。

 

 例えば医療においては、常に進歩する環境に身を置いているので、ある時点で自院が患者ニーズに応えていたとしても、あっという間に他の競合相手に設備や技術で凌駕されることがあります。

 

 大きな需要を発見し、常にキャッチアップする支援者の獲得が求められる所以です。

 

 関係者達成意欲の持続も重要です。

 決めたことを達成するまで諦めない、組織文化に後押しされた個々の組織構成員が当該目標に対し興味を持ち続け、コミットメントを果たそうとしているか。

 適切な環境づくりのために、どのようなマネジメントを行っているのかが組織活動持続の要諦です。

 受容されるビジョンの設定、可視化やシステム化、評価や教育、ガバナンスが適切に行われるよう注意を払わなければなりません。

 

 そこで必要なことはプレイヤー各人の時間の捻出です。行うべき事に時間を割けるよう、物理的な時間をどのようにつくりだすのか。タイムマネジメントを行います。

 タイムマネジメントは単なる時間割や時間管理を意味していません。我々の言うCRISK(クリスク)が必要です。

 

 自部署・他部署とのコンフリクト(衝突)(Conflict)をなく物事を進め易くする。仕事のルールを明確(Rule)にする。仕事のルールを常に見直し(Improvement)環境変化に対応する。スタッフの技術技能(Skill)を高める。リーダーが常に親身になり気遣い(Kindness)をもって相手に対応するという、時間捻出のための環境づくりをいっています。

 

 そして言わずもがなのリーダーの執着です。リーダーたるもの組織活動の持続性を常に自分のこととして行動する必要があります。

 ドラッカーは「リーダーとは目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である」と言っていますが、その背景にはリーダーの執着が不可欠です。

 

 障害を乗り越え自分の行動を維持していくためには、これをやり切るという強い意志が必要であり、執着なしには目標を達成できる筈はありません。リーダーの意志をどのように醸成していくのか、大きな命題です。

 

 最後に、行動の精緻化です。大まかな計画ではなく当ブログで紹介したASCS(アスクス)に基づいた、適切な解に落とし込まれた行動でなければ目標の実現性が低くなるのは間違いありません。

 

 なお、入山章栄教授の「世界標準の経営理論」で紹介されている、プロソーシャルモチベーション(PSM)が上記に付け加えられると、より効果的です。

 

 PSMは他者視点のモチベーションをいいます。顧客や取引先、部下、仲間の視点に立つことが活動の動機になっているということです。

 

 人が内発的動機(例えばここでいうプレイヤーが、上記で説明してきたコミットメント力やリーダーの執着など個人が目標を達成しようする動機)をもつとき、PMSと相互に補完し合えば、人の高いパフォーマンスにつながると説明されています。

 

 入山教授は、ペンシルバニア大学のグラントの『内発的動機→クリエイティビティ」のプラス効果は、その人が高いPSMを持っているときにこそ成立する』という主張を紹介しています。

 

 人は一人では生きられない。他者との相互依存関係にあり活動していると以前書きましたが、我々にとって他者との関係性は自明の理であり所与です。しかし、相手の立場に立つというイメージでしかありませんでした。

 

 PSMを仕事のなかでどのように喚起し高めて行くのか、興味深いテーマだと思います。

 

 一気呵成に概要を書きました。組織活動の持続性について上記の考えを、これからも現場で深めていきたいと考えています。