よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

言い続けることの大切さ

f:id:itomoji2002:20200510184753j:plain

人はどうしても易きにながれる傾向にあります。

 

仕事では、何かをやろうとしても、新しい業務を行うことについては抵抗があります。

「いま忙しいので、今それをやるのは難しい」は常套句で、多くの組織のなかでその言葉が繰り返されています。何度も何度も、この言葉に遮られ改革がとん挫する病院が多くあります。

 

どうしても必要だということになり、しぶしぶ重い腰を上げるという経験が誰にでもあると思います。

 

何かを始めたとしても、その仕事がルーチンワーク(日課=手順や手続きが決まった作業)にまで引き上げられないと定着しないことが多くあります。

 

ある仕事をルーチンまで高めていくためには、到達点や担当を決め、期日を決めていつまでに準備をし、いつからスタートしましょう、と指示を出します。

 

しかし、一度指示を出しただけではなかなか、先に進みません。(本人にとって)あくまでも余計な事は、できるだけやりたくないとの思いがどこかに残ってしまうからです。

 

もちろん、物理的に時間を捻出できないほど忙しいこともあります。意思も意欲あるけれど、本当に時間が足りない、というケースです。何かをして欲しい上司は、担当者の仕事内容を検証し、業務が本当にタイトかどうかを確認します。

 

明らかに仕事量が多いのであれば、担当を変えるか、指示した者の業務を他に移譲する、という決定や、さらには指示した者に能力の課題があることが分ればアドバイスや教育を行い、彼らの力を引上げ、現業への取り組みに余裕を生むよう誘導する必要があります。

 

そのことにより新しい仕事を受容れる時間をつくり、新たな取組みへの布石とするのです。

言い続ける、という言葉の背景には、目的を達成するために行動し続けるという意味あいがあることに思いをもてば、自ずと何をしなければならないのかが分かります。

 

時間があるのに先に進まない者、時間がないと主張し、対応できない者に区分し、前者には文字通り「言い続ける」ことを心掛け、また後者には「新しい仕事を行う障害への対応を行う」ところまで踏み込む必要があります。

 

なお、最も大切なことは、行なうべきことの必要性、担当しなければならない理由、そのことが自分にとりどのような意味があるのかを説明し、相手に受容れてもらえるよう取り組むことです。

 

ここで説明した「言い続けることの大切さ」を皆が理解し、仕事をより質の高いものにしていくことが望まれます。

 

医療安全の課題

 f:id:itomoji2002:20200508152010j:plain

 リスクマネジメントは、水面下にある医療の質を水面に引き上げるための仕組みです。医療においては医療安全を担保するための狭義の意味で使っています。

 

 病院では、(開催が義務付けられた)法定委員会のもとで日々のアクシデント(医療事故)やインシデント(ヒヤリハット)の管理が行われます。

 

 リスクは0から5に区分されて評価されます。ここで、「0」は未実施、「1」は実施したが影響なし、「2」は計観察、「3」は要治療(a軽微な治療bそれ以外区分されます)。「4」は後遺症、「5」は死亡です。

 

 一般的に厚労省への届け出の視点から、レベル0、1、2はインシデントレポート、3以上はアクシデントレポートというように分けて管理することが通常です。

 

 これらは医療安全レポートと総称しで管理されますが、以下の課題があります。解決が望まれます。

 

(1)インシデントのうち0が他のレベルと同じように管理されている

 レベル1や2は表にでてしまうものですが、インシデントのうち0は、こんなことをしそうになった(が踏みとどまった)といった事項であり、報告をしなければ表出しません。

 したがって1や2と同じ様式ではなく、メモ程度でもよいので、どのようなことを行いそうになったのか。その原因は何か、どうすればそれを抑止できるかについて、出来るだけたくさんの情報を集めグルーピング化し分析し、事前に対策することが必要です。

 

 同じ様式だと作成が大変で億劫になりがちと聞いています。結果、提出数が抑制される可能性があります。

 多くの場合、それは個人のスキル、仕事の手順、仕事の仕組み、制度等の問題により発生しますが、教育や業務改革、戦略的決定により解決されるものです。

 

 潜在的なリスクは、事前に手を打ち医療の質を向上させることで抑止できます。リスクマネジメントの目的を達成するための合目的活動を行わなければなりません。

 

(2)経過の履歴を管理していない

 レベルを記載したレポートについて、当初は、例えば経過観察でレベルを2としても、のちに様態が変化して3に移行した場合、これを記録しない病院が大半です。移行した状態を管理しなければ、記録と実態が相違します。

 

 一度イベント(出来事)があった患者さんについては、常に経過を記録する欄をつくり継続的に管理し、その経過も統計の対象としなければなりません。

 

(3)対策と事故種別の減少の関係を明確にする

 報告を、レベル別、時間帯別、勤務年数、事故種別にとることは一般的に行われ、統計されポイントがあぶり出されていますが、組織として採用した対策を一定期間継続したときに、対策の対象となる事故がどのように変化したのかを管理する必要があります。

 

 対策を回数、件数と定量化しておくと、その結果として特定の事故が減少した、ということが認識できれば、対策の妥当性が証明されます。 

 

 やりがいにも通じ、モチベーションを高める方法としても導入が好ましいと考えています。

 

(4)個人ごとの把握

 病院によっては、個人毎に統計をとり教育の対象としたり、発見者のデータをとり、管理者登用につなげる取組みを行うところもあります。

 

 「最近アクシデントが頻発している職員にはさまざまな視点からのケアを行う」「模範的な行動をとり、インシデン、アクシデントを発見する者の姿勢や力量を組織に活かす」ことは理にかなっていると思います。この考え方が一般化すら頼り良い成果が挙がると考えています。

 

(5)その他

 マニュアルの作成やその活用、仕組み作りや教育が十分ではないために、同じ事故が複数繰り返される事があります。

 業務改善ととともに、個人別にカルテを作り個人の課題を解決するシステムを導入している病院が良い結果を生んでいます。

 

 医療は人であり、職員のやる気や達成感を生む仕組みが功を奏する、という原理原則を忘れないようにしなければなりません。

 

 日本の医療を支える環境づくりを行い、患者が安心して医療を受けられるよう、日々緊張し、医療従事者は大変な努力を重ねています。側から見ていて本当に頭が下がります。

 

 医療の現場は予想しなかったことの連続で成立しており、全てが計画通りというわけにはいきません。

 

 日々の計画の遂行と柔軟な対応。課題を発見し続けながら改革を折り込み、日々進化していこうという取り組みを行っており、他の業者でも参考になる事が満載です。

 

 医療は一般の企業にマネジメントを学べ、という流れもありますが、企業の側にも、今回のテーマだけではなく、多くの場面で、医療現場で行われている医療固有の考え方やマネジメントをベンチマークすることで、良い成果を挙げられることは沢山あると、私は考えています。

 

 今後、時期を見て「企業に役立つ病院マネジメント」を整理していきたいと思います。

 

 

評価制度は教育のためにあるという事を忘れない

f:id:itomoji2002:20200507232523j:plain


 評価制度は人事制度のひとつで、従業員の働きぶりや会社への貢献度を評価する制度を言います。

 

評価制度は、主に業績を達成できる職員であったのかを見る業績評価と、組織のなかでどう育てるのか、又どのように登用し、処遇していくのかをみる人事考課に区分されます。 

 

業績評価は、目標管理により行われます。ヴィジョンから組織目標を設定し、戦略化し当該事業年度の経営方針とします。経営方針は事業計画に落とし込まれ、各部署の目標となり、個人まで目標が降りて一年間の活動の拠り所とします。

 

その結果、成果が挙がったかどうかを半年毎に評価し、賞与支給の対象とします。

目標管理制度の代わりに、BSC(バランストスコアカード)制度を導入することもあります。日本の目標管理はどちらかというと方針管理に近く、ボトムアップの領域はあまり多くありません。組織の決めたことをどのように実行するのかが管理されます。

 

もちろん、組織目標を決定するプロセスで、組織方針をどのように達成するのかについて各部署の考えが反映される仕組みにはなっていますが、組織の方針が大きく勝ります。

 

BSCは財務の視点と非財務の視点に区分し、非財務を業務プロセスの視点、患者の視点、学習と成長の視点に区分し目標を設定するものです。BSCでは指標化して具体的に行動したうえで目標を達成する方法を採用していますが、目標管理がいいかBSCがいいかはそれぞれメリットデメリットがあるので何ともいえませんが、このどちらかを使うことで業績評価がやりやすくなることは間違いないと思います。

 

人事考課は仕事の姿勢や態度をみる情意考課と、文字通り能力を測定する能力考課、そして業績評価を行い、昇給、昇格、昇進のためにつかいます。ここで昇格は資格があがること、昇進は役職があがることをいいます。職能等級制度という資格制度を導入することが前提です。

 

一般職、監督職、管理職に分けて仕事の内容により等級を決め、評価をします。

この仕事ができるようになればこの等級です、という決め方で、小さな組織では一般職1,2等級、監督職3、4等級、管理職5、6等級という設定です。各等級には号俸があり、賃金が号俸ごとに設定されています。

 

1等級は一つの号俸と次の号俸の差が200円で、5段階あがって1000円、ただし6等級の号俸差は2000円、5つあがると10,000円といった決まり方をしていて、上の等級に進めばすすむほど昇給率は上がります。

なお、昇格のためには条件(資格要件)をクリヤーし続けることが必要です。

 

 業績評価にしても、人事考課にしても評価を行うためにはさまざまなルールをつくらなければなりませんが、最終的には、評価を行うことが教育につながるよう仕向けていく必要があり、並行して(職場内教育、集合教育、自己啓発等の)教育体系整備を行います。

 

 評価を行うことは教育を行うことと同じ意味をもつことを忘れてはなりません。一人ひとりに光を当て、できていないことを発見し、それらをワントゥワンで教育する。当然のことですね。

 

 これらの仕組みができることで、業績、働く姿勢、態度、能力の観点から、組織が求める人材が育成できることは間違いありません。

人を活かすことが組織運営の基本であるとすれば、評価制度や考課制度、そして教育制度を整備することが不可欠、という結論です。

 

 

やるべきことを示しているか

 

f:id:itomoji2002:20200506172940j:plain

人は石垣、人は城

 組織を構成する人が力を発揮しなければ、組織は成果をあげることができません。いうまでもなく組織は人の集合体であり、人により成り立っているからです。

 

 組織にヴィジョンや経営方針が提示されていないと、日々の仕事を行う目的が不明瞭になり、人(職員)のモチベーション(やる気)を引き出すことができません。毎日の仕事に時間を費やすことだけの連続は、いずれ働く者のやる気を失わせ、彼らがもつ力を発揮させられない状況をつくりだします。

 

 自分が所属する組織は、何を目指すのか、何を成し遂げたいのか、といったビジョンを提示し、さらにそのための組織活動、さらにルーチンを超えた具体的な日々の仕事のやり方手法を提示することが必要です。

 (1)ヴィジョンを示す

 (2)戦略を明確にする

 (3)経営方針を提示する

 (4)具体的な目標を明らかにする

 (5)職員一人ひとりの役割を示す(実行をコミット[約束]してもらう)

 (6)手法を示す

「やるべき理由」「やるべきこと」が提示されてはじめて職員は、未来を見て、今の自分をつくりあげることができます。

 

 日々の仕事の面白さや楽しさが必要なことは明らかですが、未来の組織の姿、そして働くものの姿を示すことが彼らの力を引き出すことを忘れてはなりません。

 

 すなわち、上記が提示されることで、人は自分が組織のなかでどんな役割をもち、どのように成果をあげていけばよいのかを具体的に理解し、受容することができます(役割は本人のやりたいことを達成できるものである必要があり、事前のヒヤリングを行います)。

 

 結果として、日常の仕事を積み重ねるだけではなく、何のために日々の仕事があるのかを納得し、主体的な行動をとることができるようになるのです。

 

 ここに組織と個人の進む方向が一体になる環境が生まれます。

 組織が、やるべきことを示すことが如何に大事であるのかがわかります。

 

 トップマネジメントは、組織がもつ課題を常に把握し、上記を活用して、どのようにそれらを解決していくのか。自らの考え方を整理したうえで、戦略立案を担う経営企画室等に伝えます。彼らを通して体系を整備し、「やるべきことを」組織に提示、各部署長が本人と面談し役割の実行を約束しその達成を支援するというフローづくりが有効です。

 

 なお、このながれをつくることが、各階層のリーダーにとって不可欠な役割であり、任務であることを理解しなければなりません。

厳しい時代、仕事のムダを排除しましょう

f:id:itomoji2002:20200505215043j:plain


 

 ムダとは、不必要なこと、いらないことを言います。やる必要のない、あるいは効果が薄い業務を行うことは避け、生産性を上げることが組織を強固にする要諦(ようてい=肝心な点)です。

 

ムダな仕事の具体例としては、その仕事をしなくても、仕事の目的が達成できることや、手順を少なくすることと考えれば分かりやすいでしょう。

 

仕事のムダをなくすためには、いま各職員がどのような仕事をしているのかを調べてみる必要があります。

 

まずは、個人個人が仕事のたな卸を行うことがよいでしょう。毎日どのような仕事をしているのかをリストに書き出してみるのです。

 

次に、たな卸をした仕事のマニュアルを作成します。少なくとも手順は書き出さなければなりません。

 (1)リストに書き出した仕事は必要な仕事かどうかを考える

 

 (2)仕事の手順を簡素化するために何をしなければならないのかをチェックする

という作業をします。

 

(1)は、他の仕事で代替したり、他の部署の業務であったり、止めても仕事に滞りがないことを確認します。

 

 書類作成でいえば転記や、そもそもその書類が必要あるのかを検討します。

 

 手書きの書類をなくし、作業時間を短くすることや、転記作業をなくすし書類をコピーして添付すること、書類のフォームを簡素化し、チェックマークを入れるだけで書類作成が完了するなどのやり方を導入することがその事例です。

 

 なお、ある病院では入院時の受付を外来で行い、患者が病棟にあがってからまた同じようなアナムネをとっていましたが、明らかに外来で行ったものを病棟に渡すことで、病棟の業務をなくしていました。

 

 また、他の病院では経理の経費支払いを随時から週2回に変更し、効率をあげていました。

 

(2)では、もっとはやく処理できる方法や、書類のフォームを考えます。

 

 または作業を自分達ではなく、外部に委託することによりコストが削減されたり他のより付加価値の高い業務に自分達の時間を移行できるかどうかを検討します(業務委託は既に、医事業務や検査、リネン、電話交換でよく行われており、なじみがありますね)。

 

さらに検品検収作業を書類にチェックを入れることからバーコードに変更し、時間の短縮を図ることや、在庫をもたないでよいようにSPD化することも該当するかもしれません。

 

なお、(2)についていえば、消耗品を常に同じ棚で定数管理することや、調剤を行い易いように薬局の棚や作業台の場所を移動する、自動分包機を入れる、自動アンプルピッカーを導入するなども行われています。鉗子(物を掴んだり牽引するのに使用する器具)にQRコードを入れ、オペ前の準備や、オペ後の確認を容易にして、驚く時間を削減した病院もあります。

 

 ここであげた事例以外に多くのムダとりがあります。まずは自院の分析を始めるところからスタートし、また、業務改善提案制度を導入することも含め、職員ができるだけ付加価値の高い業務に従事できるようマネジメントしていくことが大切です。

 

これらの業務は病院だけではなく、どのような業種においても実施可能です。自分の身近なところからの見直しをしてみることも有益ですね。

診療所の地域浸透大作戦

診療所の収益は単価×患者数×リピート率で決定されます。

単価を無秩序にあげられませんから、新患を増やし、リピート率を上げることで患者が増えないかぎり収益は頭打ちになります。ただ患者を待つのではなく、地域にどんどん展開し、自ら地域に染みるように入り込むこと(地域浸透)が必要です。

 地域浸透を具体的に説明すると、次のようになります。

 

(1)情報提供を怠らない

 患者は自分なりの情報を収集し、コミュニケーションし、体験を積み重ねることにより診療所のイメージをつくりあげます。

であれば、待つ対応ではなく、できるだけ早期に情報を提供することがポイントです。医療情報、得意な分野、職員の情報、その時点で行う取り組みなどが対象となります。

 

(2)コミュニケーションをとる

 患者と受付や診察時にしっかり話を聞き対応する、といったコミュニケーションをとることが大切です。しかし、限られた診察時間のなかだけでは患者との接点が少なく十分なコミュニケーションをとれない可能性があります。

他の機会を設けることを考えなければなりません。患者や地域住民と診療所の間に接点を増やし、コミュニケーションの機会をつくるのかが増患の重要なテーマになります。

 

 院内での告知やチラシの配布、医療セミナーを行うことで生活習慣を変えたり、 予防活動の情報提供を行うことがそれらです。

 さらに、自院のことを知ってもらうための診療活動以外での音楽会、お祭りに参加、学校での運動会へのボランティア参加、近隣のレストランと提携し栄養セミナー開催などさまざまな機会もあります。

 

 あらゆる場面で自院の活動に触れ、自院の理解をしてもらうことがその事例です。地域に自院が浸透することで、多くの患者を救えるのであれば敢えて待つのではなく先んじて地域に出て地域の患者にさまざまなメリットを提供していくのです。

 

(3)良い体験を積み重ねる

 来院しなければ診療所のことが判らないことが多く、来院して初めて理解してもらえることがあります。逆に来院してから患者の思いが変わる要素は沢山あります。何も印象を持たず来院したが、来て良かった、というのは合格として、良い評判を聞いたが来院したら酷かったということのないように取り組まなければなりません。

 適切な対応や接遇をしっかり行うこと、医療質向上への日々の努力が大切です。

 

(4)信頼され他に話してもらう

 当院に来院し、積み重ねたよい体験を信頼につなげ、その内容を第三者に話してもらえるようにならなければなりません。最終的には患者の立場にたち、ニーズに的確に応えるなかで適切な診療活動を続けていくことが必要です。

 診療所運営に王道はなし、ということなのでしょう。どの業者でも同じことが言えますね。

たな卸の実務

f:id:itomoji2002:20200503232420j:plain


会計的にいうと、たな卸は在庫の実在性を確定し、貸借対照表の棚卸資産の簿価を確定する行為です。しかし、医療機関にとってみれば、それは薬剤や医療材料、消耗品の管理の巧拙をみることであり、またキャッシュがいかに無駄になっているのかを確認する機会でもあります。

 

そもそも棚卸資産は収益獲得を行うための材料であり、欠かすことはできないものの、できるだけ発注量を少なく、在庫を少なく、使うときに使うだけ用意されていることが理想です。

 

できれば在庫をもちたくない、というのが本音だと思います。

トヨタで有名になったJIT(ジャストインタイム=かんばん方式)はまさに自社では在庫をもたず、使うときに在庫を使い、使ったときに費用となるという方法であり、在庫管理の究極であるといわれています。

 

もちろん、病院でも一部のインプラントやカテーテル等には、消化仕入れが行われていて、滅菌袋をやぶりタグをとった瞬間に仕入になる方法も採用されています。普段は預かり在庫として病院ではたな卸の対象から除外されるものです。SPD(サプライプロセッシングアンドディストリビュ―ティング=物流管理)を入れている病院で、在庫は業者負担というところもあります。

 

しかし、多くの在庫は、誤解を恐れずにいえば、職員の思うがままに仕入れられ、管理され、ムダが発生し、キャッシュが寝る(在庫は現金と同じという考えから来ています)可能性があります。

 

基準在庫を決め、これ以上はもたないとか、発注から納品までのリードタイムをみて使用量からの在庫量を決める(経済発注点分析)を行う、といったことが行われなければなりません。

その場合、現場のスタッフに対する教育や、経費に対する意識を徹底する必要があります。

 

日常から在庫とは何か、どんな意味がある資産なのか、どう使えばよいのかを考えて、大切に在庫を取り扱い、結果、どのような管理がなされているのかを確認する手段として、たな卸を行うことができれば、病院の経営はより良いものになる、と考えています。