よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

セクショナリズムと自己利益優先は、組織の性

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病院は多職種の専門職により運営される特殊な組織です。

したがって病院には多くの部署があります。医療はいくつかの部署が協力して業務を行うことが通常です。

 

部署間が協力して行う業務では、それぞれの部署が持つ事情により業務が円滑に進まないことが多くあります。部署同士がうまく協力できない状況を部署間衝突、部署間コンフリクトといいます。

 

 そもそも組織には自己利益優先とセクショナリズムという性質があります。自分の部署を大切にする、自分の部署が第一であればよいという考え方です。

それぞれの部署が責任をもって業務を行うという意味ではよい面もありますが、組織として部署間コンフリクトを放置することは不効率です。常に調整をしたり話し合ったり、仕事が遅れたりすることがあれば、組織としての成果をあげづらくなるからです。

 

部署間コンフリクトをどのように排除するのかが病院マネジメントの大きなテーマです。連絡がない、コミュニケーションがとれない、仕事が遅い、やるべき仕事をしていない、質が低い、やり直しをしなければならないなどの事例があります。

 

その結果、自部署の業務がうまく進まない、クレームを受ける、問題解決のための余計な時間が必要となる、やる気をなくすといったことが起こります。

 

部署間コンフリクトには、新人が多く生産性が低い・業務がこなせない、退職者が多く人が不足している、仕事の仕組みの不備・ルール未整備、職員の技術技能が水準に到達していない、忙しい・自分達の仕事ではないと考える、相手が嫌い、相手の立場に立てない・利己的といった原因があります。

 

結局は自部署の利益を優先するためにどうしても解決が長引くことがあります。トップが介入して現場では解決できないことに対する決定を行うことが、部署間コンフリクトを解決するためのポイントです。

 

具体的には、教育を行う、業務改善を行う、ルールをつくる、マニュアルをつくる、評価を行う、人を採用する、そして何よりも同じ目標のために組織が一丸となって前に進む状態をつくりあげることが必要です。病院幹部の改善への果敢な取り組みが期待されます。

 

 

 なお、このテーマは、どのような業種にも当てはまるので、留意が必要ですね。

 

 

 

貸借対照表と損益計算書を知る

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 社会人の三種の神器は、英語、IT、会計です。今日は会計の話をします。

 

事業活動を行う組織は、どのような形態であろうとも、少なくとも1年に1回、決算を行わなければなりません(上場会社は四半期決算をしています)。決算書を作成するとともに、監督官庁や銀行、そして税務署等に報告を行う必要があるからです。

古くは東インド会社において株主のために決算報告を行ったという記録があります。

 

決算書には、貸借対照表と損益計算書等があります。

 

貸借対照表は「期末日現在の財政状態」を表す書類であり、損益計算書は「1年間の経営成績」を表す書類です。

 

医療法人であれば、貸借対照表は、組織の資産、負債、資本を表示し、損益計算書はいくらの医業収益があったのか、それを得るために要した医業費用はいくらであったのか、そして得られた医業利益はいくらであったのかを示します。

 

貸借対照表と損益計算書は、簿記というルールを使い、会計処理を行うことで作成されます。会計の記録方法には単式簿記と複式簿記があります。貸借対照表と損益計算書は、複式簿記でつくられています。

 

イタリアの著名な数学者で、かつ世界最初の印刷された複式簿記の著者であるルカパチオリが1494年に書した書籍『ズンマ』で「計算および記録に関する詳説」に複式簿記の原型ができたといわれています。

 

さて、ここで単式簿記(たんしきぼき)は、簿記的取引をただ一つの会計表に記録・集計する方法のことをいいます。資金の収支を重視し、財産・債務については収支の結果とする簿記方法です。

身近な例でいえば、家計簿が単式簿記を利用しています。現金の動きを記載することで、資金の収支だけを記載します。単式簿記では、事業に利用しませんから、損益を出す必要はありませんし、現在どのくらい資産があり、どれほど負債があるのかについては自動的には明らかになりません。現金を何のためにいくら使ったかという記録があるだけです。

 

それに対して、複式簿記(ふくしきぼき)は、すべての簿記的取引を、資産、負債、資本、費用又は収益のいずれかに属する勘定科目を用いて借方(左側)と貸方(右側)に同じ金額を記入する仕訳(しわけ)と呼ばれる手法により、貸借平均の原理に基づいて組織的に記録・計算・整理する方法のことをいいます。

 

 少し難しい話になりましたが、先ずは、貸借対照表の借方(左側)には資産があり、貸方(右側)には負債と資本が表示されていること、そして損益計算書は上から、医業収益、医業原価、医業利益、医業外収益、医業外費用、そして通常は税金を控除したのち当期利益が表示されることを理解しておくと便利だと思います。

 

 組織の貸借対照表と損益計算書を理解していれば、キャッシュフローの考え方もわかりますし、そもそも、調達(貸借対照表の貸方)した資金を運用(貸借対照表の借方)し、事業活動を行い利益(損益計算書の貸方−借方)やキャッシュ(簡易的には税引き後当期利益プラス減価償却費)を生み出す事業の流れをすべて証跡を以って明らかにできます。

 なお、短期利益計画(損益分岐点分析由来)のためには直接損益計算(変動費と固定費への分解)が必要になります。決算書は、事業評価はできますが、将来損益予測には弱い事を付け加えておきます。

 

 

クリティカルパスというもの

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 今日は、一般の方には少し専門的な話です。この記事は、2013年にある媒体に投稿した記事ですが、内容は、今でも考え方は変わっていません。

 

   ただ、爾後にメルボルンの病院視察したとき、現地で働く日本人看護師のNさんが、今はオペ後3日で退院するので、パスをゆっくり使うという状況ではない、との話をされていました。医療は機能強化し、どんどん進化しているのだと思います。

 

   そうはいっても日本では、依然急性期を軸としてパスを使った医療の質向上が行われているし、パスの考え方は、医療に限らず、業務を標準化し、実際との乖離を分析し改善する、ということからしてマネジメントの基本です。

 業務を可視化し、標準化し、さらに改善し続けることにより、質を上げ、生産性を向上させることができます。まさに、働き方改革の軸の一つだと思います。ということで、どのようなことにも応用できると考えたので、アップします。

 

「クリティカルパス(以下パス)(注1)は、医療における診療計画表です。

 1980年代に米国の医療制度改革があったときに、看護師のカレン・ザンダーが工場の工程表を模して、最も重要(クリティカル)な経路(パス)(=早く治療が完了する計画)として考案したといわれています。

 

 パスは診療を標準化し、診療活動のPDCAを行うとともに在院日数を短縮するツール(道具)として今や広く世界中に展開されています。

 

 パスから逸脱した医療行為は、マイナスの評価をされることがあるとともに、パス通りに治療を行なえば責任を追及されないといったことから、米国ではパスを活用する医療が進捗してきた経緯があります。

 

 日本でも、多くの研究が行われ、限られた在院日数のなかで一定の医療の質を担保するために現場で活用されています。

 

 また、単なる標準化ツール、あるいはコスト削減という目的だけではなく、多職種のスタッフ全員で治療のスケジュール管理ができることから、チーム医療の象徴ともなっています。パス通りに治療が行われることで、期待した在院日数での退院ができるようになります。

 但し、患者さんには個体差があるし、また種々の理由から退院が日程通りに進まないこともあり、それらは逸脱(負のバリアンス)として管理され、原因分析(注2)が行われ改善が行われます。

 

 なお、早期に退院したケースでも逸脱(正のバリアンス)となり、当該ケースを材料に、より早期に治療を完了させるために、どこまでの在院日数を短縮できるかが検討され、パスがリメイクされます。

 ここにパスは業務改革のツールでもあるということができます。

 

 外科系のパスは作成や適用が容易であるのに対し、内科系とりわけ高齢者に対する疾患の治療はなかなかパス化しづらいといわれます。しかし一時期から地域連携においても大腿骨頸部骨折や脳卒中のパスが作成されるなど、あらゆる場面でパスが活用されるようになってきました。

 

 日本の医療は機能分化と在院日数短縮により医療制度改革が進捗していますが、パスをうまく活用し、よりよい医療を行なう病院こそが、時代を乗り越え次に進んでいけると私は考えます」

 

(注1)日本ではクリニカルパスと呼ばれることが多いようです

(注2)医療従事者要因、システム要因、患者要因、社会的要因の4つが基本となり、さらに詳細に要因分析が実施されます

 

小さいけれどビジョンがあること

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 人は、ビジョンで動くところがあります。

ビジョン(Vision=将来の構想、展望)は戦略の前提となる、あるいは戦略を包含する概念です。ただの夢とは異なります。ここで戦略とは闘いに勝つ計画のことをいいます。

 

 こうしたい、ああしたい、ということはただの夢となりがちですが、ビジョンは、ある程度の実現性を以て語られる必要があります。

 

 よく、ビジョンは職員にとれば夢であり、経営者にとれば戦略の方向であると言われます。しかし、社会活動において夢でも達成可能なものでなければ誰も執着しません。

 

 また、ビジョンは戦略により具体的な成果にならなければ設定した意味がありません。

 

 ビジョンは戦略や成果と影響し合い、ここに行けたね、という場所に収斂(しゅうれん)するという考えが適当です。

 ビジョン通りにはいかないとしても、ビジョンにより計画を立てて行動している間に、ある程度のところには到達できます。

 「こうしたい」→マーケティングやSWOT分析により現状把握→実効性のある計画立案→目標化(アクションプラン化)→行動、というプロセスを経て「こうしたい」ということが「できる範囲でこうなればよい(ある時点では、できた範囲で納得する)」という領域に落ち着くという考えです。

 

 それでも、ビジョンがないときと比較すれば成果は雲泥の差です。

明らかに達成できない夢をもたせて日々の活動の基礎とするのではなく、現実に近い、実施可能性の高い領域で職員にビジョンを伝え、行動を通じて具体化していかなければなりません。

 職員が「自分のやりたいこと」と擦り合わせたうえで、ビジョンや戦略を受容れ、計画的行動をとることで戦略、そしてビジョンが達成されます。

 

 より具体的にいえば、日々の多くのル―チンにより成り立つ組織自体が常に方向をもち、進化しようと努力することで組織は変革します。

 しかし、病院トップや病院幹部にこれをやるんだという強い思い(ビジョン)がなければ、本当の意味で職員は能動的に行動できず、成果を最大化できません。

 患者に対する職員の使命感だけに依存し続けることはトップマネジメントの役割を放棄することと同義です。

 

 なお、大きなビジョンは、組織を大きく飛躍させる可能性があります。しかし、日本の医療制度からすると、医療機関に海外のような成長戦略は描けないこともあります。

 なので、病院トップや幹部はまずは小さくてもいい、これをやりたい、これをやっていこうという思いをもち、具体化できる範囲で計画し、それらを徹底的に実行していくなかで、組織の活力を増加させ成果をあげる、というシステムをつくりあげなければなりません。100%でなくても80%達成できれば大成功と考え、未来が不確実な日本だからこそビジョンを掲げ続けることが必要です。

 

 医療だけではなく、多くの事業において、対峙している環境を乗り越えるために、いまこそトップは職員(社員)に受容されるビジョンを掲げ、果敢に前に進んでいかなければなりません。

 

 

病院が職員アンケートから読み取る課題

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ヤンゴン、パラミ病院受付


 病院は、常に職員が働き易い環境をつくらなければなりません。それが職員の力を引き出し、ひいては患者への対応につながるからです。

 

 課題を発見し目的を達成するために組織はマネジメントを行います。課題発見の手法の一つとして職員アンケートを使うことが一般的です。

 

 以下はある病院で使われるアンケート項目です。

・あなたは、病院の理念・使命・目標などを理解していますか

・当院は、病院の理念や使命に沿った活動をしていると思いますか

・当院は、職員の意見に積極的に耳を傾けようとする姿勢が感じられますか

・姿勢が感じられない理由は何ですか

・あなたは、職務遂行にふさわしい環境を与えられていますか

・当院は、あなたの能力開発を支援してくれていますか

・当院は、職員の安全に配慮していると思いますか

・残業や夜勤などを含めた労働時間はあなたにとって無理のない範囲ですか

・あなたは、現在の福利厚生制度に満足していますか

・自由に提案でき、みんなが協力し合うなど、職場の雰囲気は良いと思いますか

・あなたは、過度に精神的不安を感じることなく仕事ができていますか

・あなたが「精神的不安」を感じる原因は何ですか

・部署内の連携、他部署との連携はスムーズですか

・あなたは、今の仕事が自分の能力に合っていると思いますか

・あなたは、仕事の成果が正当に評価されていると思いますか

・評価が正当でないと感じる理由は何ですか

・あなたの報酬は、仕事内容やキャリアに見合ったものであると思いますか

・あなたは自分のやりたいことが当院でできている、あるいはできると思いますか

・やいたいことでできていないと思えない理由は何ですか

・あなたは、今の仕事にやりがいを感じていますか

・やりがいを感じられない、また感じられる理由は何ですか

・あなたは、家族や親せきにこの病院にこの病院をすすめますか

・あなたは、この病院を「職場として」知人にすすめますか

 

 病院の考え方への理解や仕事の環境、そこでの印象、評価や処遇、さらに自分の将来を病院に託せるかどうかといったことを聞いていきます。

 少ない質問項目ではありますが、個々の質問には背景があり、その背景には多様な課題がちりばめられています。

 

 例えば「今の仕事にやりがいを感じているか」といった質問には、病院の方針、環境、能力、職場環境、対人関係、リーダーシップ、自らの役割、承認、達成感、教育、評価、処遇、報酬などさまざまなテーマが隠されていて、これらを他の質問と併せ探ることで、価値観が異なる職員の個々の課題を抽出します。

 

 組織全体として意見が多いものを把握し、全体として課題を解決することで障害を取り除くことも行います。

 

 これからの時代において、明確な方向性をもち、そのための具体的な活動を行っていること、各職員の役割を明確にしたうえでその達成の支援を行い、プロセスや結果を評価し、適切な教育を施しながら、職員の力を引き出していること、モニタリングを行い常に問題を修正できること、が病院存続・発展の条件になると、私は考えます。

 

 ここに記載した項目の整備を行うことが必要であり、確かに分析には時間がかかりますが、課題や問題を発見したり、課題を抽出するためにアンケートを効果的に活用することが期待されています。

 

 

人を育てる、情意考課というもの

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 人事考課により昇給昇格昇進が決定されます。

情意考課は、職能等級制度における人事考課の一部です。

人事考課は情意考課と能力考課、そして賞与支給時の評価基準となる業績評価を横滑りさせた業績考課から成り立っています。

 

情意考課は、「規律性、協調性、積極性、責任性の4つの観点で日常の服務規律を観察し評価するもの」と定義されますが、服務規律(決められたルール)というよりはもう少し幅を広げて、仕事の姿勢や態度を評価するものです。

なお、能力考課は発揮能力を、そして業績考課は決めた目標を達成できたかどうかを評価するものです。

 

 さて、ある病院で職員にこうあって欲しいと考える仕事の姿勢や態度を規定した情意考課シートの内容は、以下のようになっています。

・病院における将来ビジョンにむけた活動をしている

・自らの権限を理解している

・業務に新しい手法を取り入れている

・病院において必要な制度がどのようなものであるか説明できる

・指導は的確である

・論理的に整合性のある意見を職場内で出している

・病院理念の実践

・積極的に物事に取り組んでいる

・自分としてのキャリアプランを持っている

・社会人として適切な挨拶ができる

・職場の規律を守っている

・仕事の仕方や仕事の提案をしている

・任された仕事は責任を持って遂行している

・他人の意見を尊重している

・期限を守れる

・言葉づかいや所作は相手の立場にたって選んでいる

・何事も学習し、仕事に役立たせている

情意考課は、組織として職員たるもの、こうあってほしいという考え方を示すものであり、事前に示すことにより、職員の日常行動に大きく影響を与えます。

 

組織が求めている人材像ですよ、このようになってくださいということを上記により示し、それをベースとして自分の仕事に対する姿勢や態度を見直すことができる職員は、その思いを行動に反映する可能性があるからです。

 

本来であれば、職場内教育において組織と同じ方向性をもつ優れたリーダーが、一人ひとり手作りで人を育てていくこと大切ですが、期待する管理者をもつ組織でない場合、職員に覚醒を促す手段を欠きます。

組織は、職員に対して「こうあるべきだ」という思いを、しっかりと伝えていく仕組みを用意しなければなりません。その役割を負うのが情意考課です。

 

もちろん、評価期日迄には、実際に評価を行い、職員自らの行動が喚起され、実現されているかを判断します。評価により発見された課題をどのように翌年解決してくのか、考課者(評価者)と被評価者の間で議論が誘導され、教育計画や行動目標が設定されることはいうまでもありません。

情意考課そのものは人事考課制度体系のなかで能力考課や業績考課と共に実施されるべきものですが、情意考課制度だけの導入でも成果があると考えています。

 

柔軟な組織のクレーム対応

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 クレームを根絶するためには、まずは、すべてのクレームを掌握することが大切です。

 

 一般的に、投書箱やアンケート、直接文句を聴くことによりクレームを集計しますが、実はクレームとして顕在化しないクレームが何倍もあります。

 

 医療機関には、体調が悪い、気分が滅入っている患者が来院します。普段ならあまり気にならないことでも気になる状態に置かれています。

 

 個人の性格にも依存しますが、周りに敏感になる患者が気分を害するのはよくわかります。

 

 待ち時間や、座る場所のあるナシや、待合室への呼び込み方や順番をめぐり、話し方や対応、すべてに対し気に食わなければ、表情や態度に表すのです。ただ、

 顕在クレームのみならず、潜在クレームを徹底的に収集し、解決する方法を考えなければなりません。

 

 まずは、表に現れたものであれ潜在であれ、クレームはその場で解消する必要があります。

 予めケースや重要度に応じて決めたルールに従い適切な処理を行うのです。

  

 ただ、潜在クレームは紙や口頭では表現されないので発見が困難です。

 

 なので、常に周りを観察し、クレームを言われなくとも、嫌な顔をしていたり、何もいわずに怒っているような患者を見つけたときには、直ちに声かけて話を聴き、問題を解決する必要があります。

 本人が大丈夫と言ったとしても、その時の状況を潜在クレームとして捉え、メモ書きに残さなければなりません。

 

 なぜそうなったかの分析を瞬時に行いながら仮説を立て、解決の方向に向けて組織的な対応をしていくのです。

 

 露見しない潜在クレームが多ければ、気付かぬうちに自然に評判は悪くなり、今後の運営の大きな障害になるのは明らかです。

 

 職員は一人残らずポケットにフォームが印刷されたメモ用紙を忍ばせておき、顕在化したものでも潜在クレームでも、クレームがあった(若しくはクレームの事由が想定される)ときには、内容、理由、コメントを簡単に記載します。

 

 よく発生するクレームについては予め、待ち時間、順番、呼び込み、説明不足といった項目を印刷しておき、○をつけられる方法にすれば早く処理できます。

 コメント覧に簡単な状況を書き、自分の客観的な意見を沿えればより分析が容易です。

 

 1件当たり30秒でも記載できますので、昼休みや休憩時間、ちょっとしたミーティングの合間に5分の時間をとれば、毎日のクレームを網羅的に収集できるでしょう。

 職場にクレーム箱を用意してメモを投げ込んでおけば、容易に集計でき便利です。

 

 スラック(Slack=コミュニケーションツール)や他のソフトを使うことで簡便にデータ収集を行うことも有効です。

 

 システムの未成熟、組織対応の不行き届き、個人的な不注意・技術不足、個人の不適切な性格でクレームは発生します。

 

 集めたクレームがどの理由によるのかを区分し、それぞれ、システム導入や改善、組織での業務改革による仕事の見直し、個人の教育に結びつけることになります。

 

 なお、患者が不満を表す前に、ラウンドを行い状況を把握した上で、クレームになるだろうと想定した状況に事前に対処することが本来のあり方ですね。

 

 上記の考え方はどの業種にも該当します。商品やサービスのプロモーションをうまく行えば一時的な売上は上がりますが、質が良くなければ継続できません。

 

 最終的には、

1.思いをもった従業員一人ひとりが、

2.改善を重ね力をつけて、

3.持ち場、持ち場で顧客の立場に立ち、

4.行うべきことを迅速、かつ的確に行うこと

なより仕事の質を高め、クレームを撲滅させることができます。

 

 価値創造を恒常的に行うとともに、標準化や業務改善を体系化し教育を徹底するなど、顧客の動向やニーズに適時に応える仕組みを作れる組織しか残れない、厳しい時代になったいま、ここでいう対応は必須です。

 

 皆が相手を思い、何が最適なのかを常に考え行動する管理職や従業員の育成が望まれます。