よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

誇りをもって相手に優しくできるようになるために

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 自院のスタッフ仲間や患者、患者家族に優しくできる、ということは医療従事者の永遠のテーマです。

 

ここで優しく、ということは単に礼節をもち笑顔、挨拶ができればよいという分けではありません。何かの取引を行うとき、取引の目的を達成することを相手側は求めています。

 

商品を購入するときに、丁寧な販売員がいて気持ち良くお買い物ができたものの、よく見てみたら不良品や品違いだったとき、顧客は満足しません。

 

サービス業でも同様です。返事や態度は良いのに、仕事が予定通りに進まない他部署の職員には、当初は仕方がないと思ったとしてもその思いはながく続きません。

 

礼儀は大切でビジネスの基本ですが、仕事の本質ができていなければ、顧客が納得することはあり得ません。

 

例え謝罪の仕方がうまく、一瞬は許したとしても何度も続けば、二度とその施設は利用しないでしょう。

 

いわんや命に関わる医療であれば患者や患者家族の求めるものはより高くなるのは明白です。

 

初診のとき受付が丁寧で外来に座ったものの、何時間も待たされる医療機関の印象は悪くなります。

 

診断や治療の過程で問題があれば、なおさらそれまで良い印象があったとしても、その気持ちは雲散霧消してしまうのです。

 

職員同士が同じ理念や目的を共有し、中短期の目標を掲げ、よい医療を行うための改革に着手する。

 

自分の役割を果たすための努力を怠らず、「仕事に対する思いや人間力、必要な技術技能を身に着け、その発露としての礼節をもって周りに対応する」。

 

どの業種においても同じことが言えますが、心から仲間を大切にしつつ上記プロセスにて、自分のできる最大限の仕事を行うことができる職員は、力をつけて自信をもてます

 

彼らは自分の仕事に誇りをもてるし、先も見通せ、どのような問題も解決できるため、感情的にもなることはありません。

 

なので仲間の職員にも、患者や患者家族にも優しくなれるのです。

 

組織は、本当の意味で相手に優しくできる職員を育成するために、仕組みをつくり、適正利益をあげて、彼らが育つ環境づくりや適切な評価・教育・処遇を行うことにマネジメントの軸を置かなければなりません。

 

皆がプライドと自信を持って仕事ができる組織。つくるのは難しいですけれど大事ですね。 

 

コロナの時代、誰にも負けない組織を作る機会と捉え、まずは自分から変わっていけるようにしたいものです。

 

  

 

 

問題指向型教育のツール、「教育カルテ」って何?

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 今回は、少し専門的な話もするので、一般の方には読みづらいところもあると思いますが、許して下さいね。

 

 医師のカルテはSOAP(ソープ)と呼ばれる記載の形式になっています。

 

 これは問題指向型診療録(POMR=Problem Oriented Medical Record)の一つです。

 

 問題志向型医療(POS=Problem Oriented System)の考え方によって得られたデータを内容ごとに分類・整理した上で、S(Subject)、O(Object)、A(Assessment)、P(Plan)の4つの項目に分けて考える分析手法です。

 

 患者の主訴(訴え)や状況・病歴をみて、診察や検査を行いデータを集め、評価します。その結果治療方針を決め治療に入る、という医療活動を記録するのです(看護師の記録も経時[時間軸で誰が、いつ、誰が、どうなったかを記録]やフォーカスチャ―ティング[焦点を絞った経過を系統的に書く]記録方式のほかにSOAPの形式になっているものがあります)。

 

 これは患者の治療の記録であり、治療を円滑に行うための考え方です。

 私は10年以上前、病院で看護とともにSOAPの仕組みづくりをしているとき、職員の教育体系構築の支援も行っていました。

 

 ふと気づいたのは、患者の治療に使うSOAPの考え方は、職員の教育にも使えるのではないかということでした。なんで、職員の治療をするのにカルテがないの?というノリでした。

 

 当時職務基準やマニュアルも作成しており、教育の立系をつくっていましたが、どうも今一歩日々のOJTの記録方法が確立されていないこと、プリセプティング(プリセプターシップ[プリセプター制度]で、新人[プリセプティー]を先輩[プリセプター]が現場で指導する「現場教育訓練」[OJT]をすること)のときのように、チェックシートにいろいろ記載するだけでは、新人以外の看護師には通用しないと考えたのです。

 

 病棟では、日々の看護プロセス(観察、診断、計画、実施、記録、退院要約)のながれ以外に、山のように看護業務があり、仕事の姿勢や態度を情意考課、能力を職務基準、そして業績を個々人の目標管理やBSCで管理したとしても、統括してそれらを記録しておく媒体がなかったのです。

 

 なので、職員の教育カルテを開発しました。

 

 ここではフォームを表示できませんが、「教育カルテ」は、以下の手順で作成します。

 

  1. 本人の氏名、作成日を記入する
  2. 職務基準やマニュアル等に照らし合わせ本人の課題を列挙、本人の考えや意識を評価しながっら課題選択
  3. 優先的に修正すべき問題を選択する
  4. 選択した習得目標やスキルアップの課題を記入する
  5. 現状のレベルを確定する
  6. 目標レベルを決定する
  7. 期日を決定する
  8. 教育担当者を決め、サインをしてもらう
  9. 教育を行う
  10. 到達レベルを記入する
  11. 到達した日を記入し、コメントを記載しサインをする
  12. 次の用紙を用意してレベル未達及び新規課題を抽出する

     上記を使い、OJTを開始したのです。

結果、

  1. 教育の可視化ができた(本人の問題、そして何を教育したのかを可視化できる)。
  2. 相互確認ができた(教育カルテを各部署でファイルしておくことで、誰でも、職場内スタッフの課題を理解することができる)。
  3. 相互教育(教育担当者以外でも課題を相互にみることが可能であり、自分の得意な分野についてのアドバイスができる)→これは恥ずかしいから止めて欲しいとの意見も多くあります。
  4. 教育側の教育巧拙が確認できる(教育担当者は教えることでスキルもあがるし、また教育の巧拙を確認できるため教育担当者となった職員のスキルも向上する)。
  5. 振り返り 本人が振り返りを行える(できなかったことができるようになったポイントを確認できる)→読者は「2年前に自分は、何ができず、今はできるようになった」ことが分かりますか?多分半年前のことも覚えていないことがあると思います。教育カルテがあると、組織も振り返りができるので、客観的な評価にも使えるなど結構役に立ちます。
  6. 自信が醸成される(できなかったことができるようになった用紙の分だけ成長したことが把握できるので、本人に自信が生まれる)

 という効用を得ることができました。

 

 今回はこの程度にしておきますが、教育カルテを管理することで上長も部下も常に教育の課題を掌握できるし、期日を決めた教育が行われることも含め、前回のブログで紹介した一人ひとりに光を当てたOJTが確実にできるようになります(いま教育カルテのweb化を行なっています)。

 

 教育カルテは、教育の計画、実施、チェック、修正行動を誘導するので教育のPDCAを実現するツールでもあります。

 

 自分でいうのもなんですが、以外と画期的で、さまざまな病院で使われています。

 

 もちろん、考え方は普遍的なので、どの業種でも活用できますし、使うと便利です。

 

 というか、コロナの時代にあって一般の企業においても、生産性向上のための教育が持て囃されていますが、本当に必要なのは、集合教育ではなく職場内教育です。

 

 OJTのためには、教育カルテのweb化やアプリでの活用が有効で、早期に科学的な根拠をもって、これらの構築を行うことが必要です。

 

 職務基準やマニュアルがない会社であっても、上司と部下ができないことを話し合い、本人の意見を取り入れつつ、組織の要請に応えるかたちで記録を残しながらOJTを行うと、見違えるように成果がでます。

 

 まずはOJTにおいて、教育カルテを導入する事が有益です。

 

 またいつか、どんな業種でも使える、教育カルテを活用した実際の事例研究事例をご紹介しますね。

十把ひと絡げの教育からの脱却

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 教育には職場内教育、集合教育、そして自己啓発の3つの柱があります(そんなの当たり前でしょう、というところから今日のテーマは始まります)。

 

 これらは、バラバラに行われるのではなく、職場内教育(OJT)→集合教育)(off-JT)→自己啓発(SD)といった体系的な、ながれのなかで行われることが適当です。

 

 もっとも重視されなければならないOJT(オンザジョブトレーニング)のあと、習熟できないスキルがあれば、off‐JT(オフジョブトレーニング)でそれを習得する機会をもつ。さらにSD(セルフデベロップメント)で、その内容を補完するという構造です。

 

 この順序を遵守したときの教育が最も成果を挙げやすくなります。

 

 ここでのキーワードは、「十把ひと絡げ(さまざまなものを大雑把にひとまとめにして扱うこと)」ではなく、「一人ひとりに光を当てた教育」です。

 

「いやいやうちは、きちっと一人ひとりに光を当てた教育をしているよ」というかもしれません。

 しかし、上長が自らの問題意識だけを基準として、部下に都度教育を行うことを「光を当てた教育」というのであれば、それは正確ではありません。

 

1.到達点が標準化されていない

2.現状の課題抽出が網羅的ではない、

3.上長の能力のレベル合わせが行われていない、

4.部下(本人)がやる気になるための組織的な仕掛けがない

 

等の状況があるからです。

 結果として、十把ひとからげに近い状態だと考えています。

 

 上記到達点のために、組織として教育を行うためには、「この職種においては、入職いつまでに、あるいは等級により、どの業務(課業)について、どこまで習熟しなければならないのか」を決めた職務基準をつくります(目標管理を元にした指導について、この記事では埒外としています)。

 

 職務基準により、ここまでやってねと、到達点となる標準をつくります。

 些細な職務基準により仕事のレベル(到達点)を決定した後、個人の仕事のレベル

(現状)との比較を行います。できていないことを把握し、個人別の課題を抽出し教育の対象とします。

 

 いつまでに、どこまで到達しなければならないのかという到達点と現状を比較し、そこで発見した課題をクリヤーしてもらうために教育が行われるのです。到達点−現状=ギャップ(課題)ですね。

 

 評価者の印象だけで評価をし、OJTを行う組織もありますが、明らかに客観性に欠けます。上長=評価者の経験や知見、能力はバラバラで得意領域も異なるからです。

 

 どの上長に付くのかにより教育の方法や内容が異なり、部下に均等な機会を提供することができません。当該部署の課業を職務基準に網羅的に記載し、一つひとつの課業、もしくはひとくくりにした業務をマニュアル化し評価の基準とすることが適当です。

 

 そして、発見された課題を解決するためにOJTを行います。

 

 OJTは、上長が都度部下の行動を修正するだけではなく、個々の課題を教育カルテ(教育カルテについては次回の記事で説明しますね)に書き出し、上長と部下が相互に課題を認識しつつ問題解決できるよう活動すると、なおよいと思います。

 

 そして、職場内で課題化された事項の習得を容易にするため、また、職場内で解決できない課題を解決するためにoff-JTを受講します。

 

 off-JTは年間教育カリキュラムの設定により組織内で行なわれる教育だけではなく、その時々に必要性を認識した外部研修を受けることにより成り立ちます。

 

 それでもまだ経験や知識を得ることができないのであれば、自らあらゆる手段を使い学習を行うといったSDの領域に駒を進めます。

 

 既に理解できるように、まずは、どこまで到達しなければならないという到達点と、そして現状の分析、課題の設定がなければ教育は成立しません。課題の設定は、原則的に職務基準等の組織の標準があってこそ行えるものです。

 

 ただ、職務基準に記載されていない事項を対象としはい、というわけではありません。

 職務基準やここにいうマニュアルの作成が間に合わないことや、敢えて職務基準に載せないものもあるからです。

 時代の要請、病院のニーズ、そしてどのような時代にあっても組織において、各職種に求められる経験や知識を含めて「到達点」が決定されるからです。

 

「現状」は、到達点を定義するために作成された職務基準、マニュアルさらに、場合によればチェックシート、追加的に上長の知見を活用し各個人別に評価して把握されます。

 

 さて、現状と到達点のギャップが課題化され教育の対象となることは説明しましたが、いつまでにそのギャップを埋めるのかを個々の課題ごとに検討し、期日を決めて教育を行う必要があります。

 

 期日を決めない教育は実効性に欠けます。いつまでにできないことを習得します。習得できるよう支援するよ、という関係のなかでの期日管理が必要です。

 

 なお、上長は、部下の信頼を得て、教育の意味や本人の教育を受ける意識の醸成を行いつつ、教育、育成を行い成果をあげることが使命であるということを忘れず、人材育成を行うことになります。

 

 部下をやる気にさせる上長の人間力づくりが行われることで実効性のある教育体系ができると考えています(人が力を発揮する環境づくりや、教育する側(中間管理職)の教育も必要となる所以です)。

 

 上記、教育プロセスにおいて、組織としてできる限りの対応を行い、成果を高めるよう努力しなければなりません。組織のビジョンや、本人のやりたいことを反映した具体的な組織目標が設定されていることで、教育を受ける意識向上が図れるからです。

 

 組織はそれらの整備を行う必要があります。

 

 厳しい環境を迎えた今、時代に合致した道具や教育体系を用意し、仕事の仕組み見直しと個人の能力向上による生産性向上を行えない組織は残れない可能性があります。

 

 多くの組織で「一人ひとりに光を当てた教育」を忘れず、組織の特徴に合った教育の手法を検討し、体系整備が行われることを期待しています。

 

(補足)

 実務的には、職務基準に記載された課業[一人ひとりになすべきものとして割り当てられた仕事]を常に改訂されナレッジ化されたマニュアルに展開し、マニュアルを評価の基準として活用します。

 

 マニュアルの手順や留意点、必要な能力等に合致した業務が行えるかをチェックし、判断されることが多いです。マニュアルって古!というかもしれませんが、基礎のないところに応用や創造はありません。定型業務はRPA[ロボティック・プロセス・オートメーション]にとって変わられる中、ヒトのクリエイティビティやナレッジがとても大事な時代になりました。

 

 あらゆる現場で継続的に行われるカイゼン(イノベーション)により、書き換えられる個人の創造性を集積したマニュアルは古くて新しい教育のツールなのです。

 

 

何度もいうよ。会議を見直し成果をあげよう

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会議運営が稚拙だと、会議の目的が達成できず時間がムダになります。

 

会議がうまく運営されるかどうかは開始前の準備と会議の進行、そして会議決定事項の実行の有無により決定されます。

 

この事は言い尽くされているのですが、なかなかうまく行かない永遠の課題です。

 

目的を達成するために行う会議がいつのまにか、開催することそのものに置き換わっていないかどうかを検証し続けなければなりません。

 

会議の目的は報告、懇親、決定といった区分により管理されますが、報告や懇親は別の媒体を活用すれば足ります。

 

決定会議が会議の本質であり、「〇〇を決めて実行する」ことができなければ会議を開催する意味がありません。

 

例えば(医療関係者以外の方々以外には馴染みがありませんが)リスクマネジメント委員会であれば、 

 

1.統計から抽出した重要事項への取組みや、

2.計画的に改善を行っている事故種別毎への対応、

3.当月実施しなければならない委員会運営の年次計画の遂行

などを確実に行う必要があります。

 

 医療区分3(簡単に言うと疾患や症状や処置により決まった重い区分)の寝たきり患者が多い、医療療養病院の委員会で「先月はレベル3b(要治療)検討することはありません」と報告されて終了、などといった会議が行われていないかどうかの振り返りを行う必要があります。

 初期のレベルが低くても、後にレベルが上がったり、見逃している事故がないかを発見し議論することはある筈です。

 

また、職員の手間を省くために行われる不必要な身体拘束により自己抜去(自分でルートを外してしまう)の事故や転倒転落がないからと言って「事故がありません」といってしまうことは矛盾です。

 

本来であれば身体拘束廃止委員会と連携しながら、できるだけ拘束せず適正なケアをしようとすると、どのような事故が想定されるのか、それを発生させないために何を行う必要があるかといった検討を行うことが本来です。

 

さらにヒヤリハットの集計を増加し、グルーピング化しながら組織的対応を行ったり、予防のための仕組みづくりを行うなどの検討が委員会で行われ、「誰が、〇〇をいつまでに、どのような方法で行う」といったことが決定されて、次回の委員会までに実行しよう、といったチェックをどのように行うのかをも決めるなどの、ながれができなければなりません。

 

これらはほんの一例であり、議論を深める対象はいくらでもあります。

 

ここでいう「会議のながれ」が適切につくられているのかを管理し、議長の運営技法の巧拙を評価につなげること、そして何よりも会議の目的を達成するため、参加できない職員への情報共有を行うことが大切です。

 

例えば、経営会議など守秘性があるものを除き、会議の映像を残すことも一法であり、意味があります。

 

会議録の作成を蔑ろにするものではありませんが、議事録だけでは会議の臨場感や巧拙を伝えることはできません。

議事録のみであれば、職員に伝えたい本来の情報は伝わらないこともよくあります。

映像を撮られていることで緊張感を持った、目的に合わせた会議を行おうという意識の醸成も行われるなど教育的効果も期待できます。

 

会議開催の目的や、運営方法、そして伝達のルールを整備し、会議を多様に活用することで医療の質を高め、生産性を挙げること。

 

結果、多くの地域住民に頼られ、厳しい時代に適正利益確保を行い、地域医療をながく継続できる体制を、そろそろ本気になってつくり上げていかければならないと、私は考えています。

 

今こそコロナに負けない未来を!

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コロナ患者を受け入れていない病院であっても外来患者が減少しているクリニックや、外来患者だけではなく、入院患者も減少し業績を落としている急性期病院が増加しています。

 

一般病床からの患者が減り、紹介が徐々に減っている為、療養病床等他の病床の患者を減らしている病院も出てきました。

 

医師会からも国への支援要請があったように、多くの医療機関の業績が悪化しているのです。

 

ある病院の幹部はコロナ前に出ていた利益と同額の赤が続いていると嘆いていました。余力をもたないクリニックや病院のこれからがとても心配です。

 

逆に、在宅希望の患者が増加し、訪問診療を行っている在宅療養診療所の患者が増加していると医師から聞きました。

 

コロナ前から医療制度改革では機能分化と平均在院日数短縮による病院病床削減が進んでいました。

 

少子高齢化により、マクロでみると病院の患者数は減少する傾向にあり、各病院は増患のため、しのぎを削る闘いを強いられています。そのなかでのコロナです。

 

周辺のマーケットや自院の経営資源を評価したうえで、的確かつ合理的な組織運営を行わなければ地域医療を継続できません。

 

常に内外環境を分析し、

1.自院は今どのような状況にあるのか、

2.どうすれば資源を最適化し最大限の成果を得られるのか、

3.どうすれば期待する場所に到達できるのか

を検討したうえで、柔軟かつ適切な対応を行わなければなりません。

 

経営企画室の役割がとても重要です。

 

経営企画室は、トップの指示でビジョンや戦略を立案します。

 

また現場では、医事課と連携し病床再編や加算取得について医事課と連携して方向を調査し、状況を的確に把握したうえで具体的なプランを提案。

 

指示があればそれらの実行に向けた組織行動を先導して成果を挙げなければなりません。

 

目標達成に向けた運営状況の月次報告を行うのはもとより、地域医療・介護の環境分析を継続的に行い、他病院の動向や自院の経営課題を整理して意見具申を行います。

 

もちろん月次の業績を分析し、予算との乖離の中で解決すべき課題があれば各部署に出向き対応します。

 

積極的に効率化や有効性の検証を行いながら職員教育や業務改善を支援し、現場の仕事をやりやすい方法に誘導します。

 

さらに財務・経理や人事、法務領域では、よりよい仕組みづくりを行うための研究を怠らず、その結果をトップに報告するなど、業務改革の先頭に立つ活動を行います。

 

経営企画室には、企業経営の基本的な考え方を理解し身に付けたうえで、それらを医療に置き換えた病院運営を的確に行える人材を配置することが大切です。

 

 当然ではありますが、そうはいっても病院に内外業務すべて精通し、あらゆる知識や経験をもつ万能な職員が数多くいるわけではありません。

 

 経営企画室を組成し、人を育成して経営企画室の機能を発揮するのには経験上、少なくとも3年はかかります。

 

 当初は経営企画室の機能を外注しつつ、並行して院内で人材育成を行うことが必要です。

 

外注不能な経営企画室業務があれば、それらを各部署に持たせ結果を出し、そこでの職員成長度合いをみて、職員の異動を行うことや、同時に当該業務を徐々に経営企画室に引き継いでいけばよいと考えています。

 

コロナ下において、いつまで医療機関への影響が続くかわかりません。

 

厳しい時代だからこそ地に足をつけて、今後の医療を考え、職員とともに、どのようにして自院の基盤を強化していくのか、事業活動を見直し、短期、中期、長期でどのような次の手を打つのかを考えることが大切です。

 

自院の役割を再度明確にするためにも、いまこそ経営企画業務への取り組みと、組織一丸となった戦略的活動が必要だと考えています。

 

医療のリスクマネジメントは、どのような業種でも使える

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「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」。労働災害における経験則の一つであるハインリッヒの法則はとても有名です。

 

 病院でリスクマネジメントの支援を行うときに、まず考えるのがこの法則です。

 

 私の経験から言って、病床の2倍のアクシデント(インシデントは含まない3以上)があり、そのうち300分の29がレベル3b以上、1がレベル4以上という仮説を立てて臨むと、ぴったりと数が合うことが多くあります。

 

 400床の病院であれば400×2=800 800÷300×29=77がレベル3b 以上、そしてさらに800÷300=2.6≒2がレベル4以上という計算です。

 

ここで、レベルは0…未実施、1…実施したが影響なし、2…経過観察、3a…要治療(軽微)、3b…要治療(3以外)、4…後遺症、5…死亡です。

 

 医療安全レポート(インシデント[レベル3a迄].アクシデントレポート)をの数を分母にすると、皆がすべての報告をしているかどうかにより数字が変化してしまうため、レポートを書かない(提出しない)ものも含めての、病床の2倍という仮説であると理解しています。

 

 現場からは、オペ室でこんな事故があったが出していない、という声も聞こえるので、提出されない事故もあるのは間違いありません。

 

 まずは、仮説の数字を基礎として、現場で報告されていない事例があるかどうかを発見する活動も必要です。

 

 ということで、2対8の原則(パレート法則)も何にでもあてはまるように、ハインリッヒ氏が導きだした労働災害の原理はどのような業種にもいえることだと信じています。

 

 軽微なクレームを放置している企業はハインリッヒを意識するとよいと思います。

 

 別途の2倍というのは病院の仮説ですので、業種ごとに考えると良いですね。

 

  小売りやサービスでは店舗数の何倍とか、従業員の何倍とかになります。統計をとり、仮説を立てると使えるかもしれません。

  

 で、対策のためには、ここでいう倍率を減らせばよいという結論なので、アクシデント対策にも熱が入ります。

 

 現場でいろいろな病院のレポートを見れば、予測可能なものや繰り返し発生するものが多く、それらをどれだけ抑止するのかが本来の活動となります。

 

 事故発生後に対策を取り続けるだけがリスクマネジメントではありません。抑止が必要です。

 

 例えば入院初期には抜管やルートの事故、(いまだに)針刺し事故が、中期になると与薬、転落が、そして後期には転倒といった具合に、患者さんが、どの入院段階にいるのかということから事故種別を推定して対処します。

 

 もちろん、針刺し事故のように、消耗品や仕組み自体が整備され、稀にしか発生しなくなった事故もありますが、仕事のこういう場面では、こんな事故が発生するというケースを拾い、マニュアルに記載、事前学習を通じて疑似体験を積んでもうらうなど、事故を起こさない対策が有効です。

 

 事故抑止のための仕組みづくりを進めるとともに、日々のすべての行動前に発生する可能性の高い事故が、予め複数頭に思い浮かべられるよう訓練することも重要な対策です。

 

 ここで、教育の繰り返しや事例にあたることでしか瞬間瞬間の意識喚起ができないとすれば、日々の業務のなかで、職員への思想教育や技術教育でのオンザジョブトレーニング(OJT)を繰り返すことが必要だと考えています。

 

 リスクマネジメントの取り扱う範囲はとても広いですが、一つひとつ、できることから事故発生を排除する取り組みを行うことが大切です。

 

 ハインリッヒを念頭に置いて、仕事の質を高めるため、業種ごとの特性に合わせた管理を行なっていきましょう。

 

 

 

 

時代に合った、経営資源のうまい活用とは?

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経営資源には、ヒト、時間、情報、カネ、モノがあります。

 

最近、経営資源はヒトがとても重要だという風潮があります。「いい人いませんか?」とか、「できる人さえいたらな」などと聞くことが多くなりました。

 

何をするにしても、優秀なヒトがいなければ時代を乗り越えられないとか、就業人口が徐々に減少するなかで、仕事ができるヒトがいなければ、やりたいことができない、ということだと思います。

 

確かにその考えは一理あります。現実に出来る人がいるだけで、組織の景色は一変することがあるからです。

 

しかし、いくら優れたヒトがいても、彼らがすべてを生み出すことはできません。

彼らが動くための仕組みや環境がなければならないのです。

 

まず、経営資源を最適化するための組織戦略が必要です。

 

何をしたいのか、何をしなければならないのか、そのためにはどのような活動が必要かを明確に提示し、その達成のために時間を意識し、情報を活用、そしてそれらを達成するための資金を用意し、設備投資を含めた運用を行う、といった従来のながれを、どうしても欠かすことができません。

 

 ヒトが大切であることはもちろんのこと、何をするのかを決めて、何かを成し遂げていくためには言われる経営資源すべてを活用しなければならないからです。

 

新聞(令和2年7月19日)に、「コロナで人が在宅化したいま、ヒトに代替して、AIやRPAが使われて成果を挙げている。

 

また、コロナ前から工場ではAIやIOTによる生産の自動化が進み、職人に依存していた現場の改善が進んでいる」との記事がありました。

 

人口知能[AI(artificial intelligence]やモノのインターネット化[IOT(Internet of Things]、ロボットによる業務自動化[RPARobotic Process Automation]といった言葉で示されているように、時代が大きく変わりつつあります。

 

診療報酬改定においてもAIやIOT、それを活用した遠隔医療がテーマにあがってきています。

 

ヒトが時代の変化に気付き、行なうべきことを決め、そのための手を迅速に打つことができなければなりません。

 

これらに対する造詣をもった者が、自分そして組織がやらなければならないことのために、それらのツールをどのように活用していくのかを考え、行動することになります。

 

 何かを始めるときに自分、そしてヒトは必要ですが、

(1)未来も含めた時代を俯瞰(ふかん=高いところから見る)し、

(2)具体的な手法を確立すること、

(3)効果的に行う方法を考えること、

(4)それらを実行すること、

のために経営資源をどう活用するのかを考えて行動する必要があります。

 

なお、AIにしても、IOTにしても、RPAにしても、もとの仕事のながれを複雑にしてしまえば意味がありません。

 

仕事のながれを常にシンプルに、必要十分なかたちで廻せるようにしておくことが、これらのツールを使う前提であることを忘れてはなりません。

 

重要なことが一つ。ヒトは自分の能力を高め、代替さらないような力を身につけなければ、どの業種においても、他の資源にその座を奪われて、生き残ることはできません。

 

このことを忘れず、精進し続ける必要があります。

 

先ほどの新聞記事には、ヒトから他の資源に代替できる職場での定型業務は30%求人が減少している、との記述もあったことを補足しておきます。

 

仕事においては、そこで必要とされる者しか残れない時代、力をつけて、いつまでも優位性をもった貴重な資源の一つになり続けなければなりません。頑張りましょう^_^