よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ネガティブからポジティブに

 

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 意図しない方向にことが進み、自分にとって、よくない結果が二回あったとき、あなたは、「二度あることは三度ある」と考えますか?それとも、「三度目の正直」と考えますか?

 

 今日、ある人からそう問われ、はっとしました。

 

 二度あることは三度あるとは、物事は繰り返し起こる傾向があるものだから、失敗を重ねないようにという戒めをいいます。

 

 本来は、三度目は気を付けようね、という意味なのに、二度あると絶対に三度あるから、いやだな、という風に、三度目の失敗が確実にあると思ってしまうことがないか。それは、まさにネガティブの極みですね。

 

 一方、三度目の正直とは、物事は一度目と二度目はうまくいくかどうかあてにならないけれど、三度目なら絶対にうまくいくということや、二度の失敗の後には確実に成功することをいいます。

 

 何かうまくいかないことがあったとしても、三度目は必ずうまくいく、と信じて行動することといっています。とてもポジティブです。

 

 七転び八起きは、多くの失敗にもめげないで、失敗するたびに思いなおし、奮起して立ち直ることをいうので、もっとポジティブですが、二度あることは三度ある派(N派)か、三度目の正直派(P派)であるかが、まずはネガティブかポジティブ化を見極める試金石であると、今日思いました。

 

 うまくいくから頑張ろうという状態から生まれる「よい緊張」はアドレナリン出まくりの状況をつくりあげ、物事を進めるうえでプラスになることが多いと思います。

 

 しかし、上手くいかないかもしれないという思いから生まれる「よくない緊張」は、思考や筋肉を硬直させ、本来もっている力を発揮できずに、本当にうまくいかない結果を生むだろうということは容易に想像できます。

 

 思考の傾向は、ちょっとしたことから分かるので、説明した試金石により、自分を見直してみることが必要と気づいたのです。

  

 自分を振返ると、二度あることは三度あると考えるときにやはり、二度失敗したから三度目は注意して頑張ろうという使いかたではなく、二度あったから三度あるなと考えている節がありました。

 

 もちろん、気分や体調、環境により、失敗を微塵も考えずにワーっという勢いで、寝食を忘れて仕事をして上手くいくことも多いのですが、時に気分や体調、環境が逆に回転すると、よくないことにN派に所属してしまうことが稀にあるようです。

 

 悪循環、負の連鎖という言葉があるように、自分を客観視できなければマイナス思考になり、うまくいくこともうまくいかなくなることが増えてしまうのですね。

 

 そこまではひどくないとしても、自分がN派に属したことがある、と気づいたのはショックでした。

 

 ポジティブは、積極的、肯定的、楽観的に、良い方向に物事を考える明るいイメージであり、ネガティブはポジティブとは反対に、消極的、否定的、悲観的で何をするにしても悪い方向に物事を捉える暗めのイメージをいいますが、自分をネガティブとは思いもしなかったからです。

 

 ということで、これから常に、自分は二度あることは三度あると考えたとき、N派には所属しない、自分はP派なんだと思い直すようにしようと思います。

 

 マーティン・セリグマンは、「オプティミストはなぜ成功するのか」という著書で、悲観主義者はうまくいかない。

 

 なので、

1.困った状況、

2.思い込み、

3.結果を書き出し、

4.それに反論し、

5.元気付ける

ことで楽観主義者に転向できる。

   ネガティブな思い込みが、実はただの解釈でしか過ぎないことが分かるからだ、と説明しています。

 

 私達は、常にネガティブな状況を発見し、ネガティブからポジティブに、どうしたら変われるのかを常に考えなければなりません。

 

 今回は、ポジティブのなかに潜むネガティブの種を根絶するために、小さな気持ちの揺らぎも見逃さない、というきっかけを持てたのは良かったと思います。

 

 自分に自信をつけ、P派に所属できる人の要件は、まだまだ自分はできていない

・絶え間ない努力であり

・成果の蓄積

だと思います。

 

 日々の仕事に情熱をもち、決めたことを必ずやるという決意で、仲間と一緒に前に進んでいけるP派でいられるよう懸命に行動しようと、再度確認することができました。

 

 あなたはN派ですか?P派ですか?

 

 輝かしい未来をつくるため、P派として共に前に進んで行きましょう。

 

 

 

 

 

自分に勝つことで後悔しない

 

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 厳しい環境を迎え、企業においてはトップマネジメントや従業員一人ひとりが意識・行動を変えなければ、組織のみならず自分達自身も生きていけないことは明らかです。

 

 組織構成員の姿勢は、2つのグループ(以下G)に分かれます。

 

 一つは、現状に満足している人や、満足していないけれども現状から変われないという、「現状容認G」の人々です。

 

 ここで、満足していないけれども現状から変われない人には、今ある仕事をクリアーすることで精一杯の人が多いことを知っています。

 

 これを成し遂げたい、何かをやりたいという思いをもてない人達です。

 

 たとえ今の仕事に対する不満があっても、そこからどう動けばよいのか分からない層に属しているのです。結果として現状を容認している人々です。

 

 一方で、現状に満足していないので変えたいと思い、行動する人がいます。

 

 活動しても、やろうと思ったことの一部しか達成できない人もいるし、活動して思い通りに事を進める人もいますが、一部であろうと全部であろうと、現状から少しでも前に進みたいとして行動する、という意味で「現状打開G」の人々です。

 

 現状容認Gの「満足していないけれど何からやればよいのか分からない人」のなかには、外部から刺激を受ければ、現状から脱却できる人がいます。他律的な目標を達成するために、努力することへのモチベーションをもつ人です。

 

 自分は何から手を付ければよいのか分からないけれど、意識は前向きで、言われたことを実行することのなかに活路を見出すことができます。

 

 他律的な目標の達成が、深層でもつ自分のやりたいことを達成できる機会であればなおさらです。

 

 ただ、刺激を受けても組織に依存し、安住することで、「現状容認G」からどうしても抜け出せない人もいます。

 

 たぶん、彼らはこれからの時代を生き延びることはできません。提示された目標を達成しなくても、何とも思わない、低い評価をされても意に介さない人々です。

 

 現状を打開できない人々を支配しているものは、

  • 怠惰、
  • 意欲、
  • 価値観、
  • 性格、
  • 知識や経験、
  • 健康

といったものですが、どこに自分の課題があるのかを発見し、積極的に課題を解決していかなければなりません。

 

 皆さんがご承知のように、後悔先に立たずという諺(ことわざ)があります。いうまでもなく、すでに終わったことを、いくら後で悔やんでも取り返しがつかないことを言います。

 

 ヴォーン・ベルは、著書Mind Hacksのなかで、人の後悔には2通りあり、それは、「やらなければよかったと思うこと」と、「やっておけばよかったと思うこと」だと説明しています。

 

 私は、やらなければよかったと思うことよりも、やっておけばよかったと思うほうが後悔すると考えています。

 

 もちろん、未熟な自分にとって、あんなことを言わなければ、あんなことをしなければ、あんな態度をとらなければと後悔の日々が続きますが、それはいろいろなことをやった結果であり、学習すれば徐々に少なくなります。

 

 しかし、あのときやっておけばよかったという後悔は、二度とやり直せないこともあり、自分の心の中に重く、長く残っています。

 

 ヴォーン・ベルは、『行動を起こしたことに対する後悔の念は、行動を起こさなかったことに対する後悔よりも一般的で、より強いものである。しかし、行動を起こさなかったことに対する後悔の念は、長く続く傾向にある』と説明しています。

 

 今、何かをしないことは、自分にとり後悔を引きずることになるんですね。

 

 人は常に「現状容認G」であり続けることや、「現状打開G」にいることはありません。時代や環境、人生のいつの時期にいるのか、また、調子の良いときも良くないときもあり軸足が変わることもありえるからです。

 

 しかし、今は違います。どうしても「現状打開G」に身を置かなければならない時代が到来したからです。

 

 組織においては自分だけが変わっても思うように事が進みませんが、他人を変えることはとても難しく骨が折れます。最も変わり易いのは自分であることは間違いありません。

 

 私も含め、多くの人がまずは自分に打ち勝ち、自分や組織を変える。そして、ターゲットを明確にしたうえで「現状打開G」に所属し、やっておけばよかったと後悔しないで済む人生を送ることができれば、きっと大きな達成感を得られると、いま考えています。

 

 

コロナ後のためにすべきこと

 

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 混沌とした社会において、私たちが行うべきことは、

  1. 今を乗り越えること
  2. 未来に向けて今何をすべきかを考え行動すること

だと思います。

 

 今を乗り越えるために、普段から行うことは、ビジネスモデルが適切なのかを確認するとともに顧客を増やすために何をすればよいのか、単価を上げる、コストを逓減するためにどのような工夫を行うかを考え行動することです。

 

 当たり前のことですが、社会性や戦略、ガバナンスやマネジメントの多岐にわたる見直しを行わなければ成果を得られません。

 

 未来に向けて今何をすべきかを考え行動することは、今できていないけれども、やってみたい何かを検討し、行動することですよね。

 

 ここで、今を乗り越えることと、未来に向けて今何をすべきかということには重なり合うものがあらことに気付きます。

 

 今を乗り越えるために行うことのなかには、今のやり方をより強化する局面と、新しいことを追加的に行うことがあり、後者は未来に向けて何をすべきかの一部である可能性があるからです。

 

 しかし、本来の未来に向けて行うべきことは、ゲイリーハメルとプラハラードの、未来への競争戦略、コアコンピタンス経営にいうように、従来のプロダクト・サービスの何を強みとするか、何を役に立たない過去の遺物を見極めることです。

 

 ここでコアコンピタンスは、「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」と定義されています。

 平易にいえば比較優位、強みですね。

 

企業は、

  1. 未来の視点から過去(現在)を振り返る
  2. 未来からみた従来の機能の新しい活用を考える
  3. 未来に対する優れた仮説や産業発展の在り方から付加価値、企業力、顧客との接点を視点として会社の方向をイメージする

必要があり、そのうえでコアコンピタンスの再評価を行うとともに、それをどのようにつくりあげていくのかを考える必要があると説明しています。

 

 自社の強みは何かを見極めるプロセスです。

 

 飲食業界を例にとり考えてみましょう。

 

 現在は飲食店に人がこない、来店できない理由は他の客との接しないこと。そこには、時間的、物理的制約があります。

 

 であれば、デリバリーをしよう、ネットでオーダーできるようにしよう、テイクアウト、無人販売、ケイタリング、出張料理人ビジネスに、という流れがあります。

 

 また、自宅で料理をすることが盛んになり冷凍食品が売れたり、調理機器の販売や、レシピ付食材の宅配、レシピに関わるビジネス、といった新しいビジネスが生まれています。

 強みを活かす個人や企業の活躍がみてとれますね。

 

 これは現状の環境や顧客ニーズに対応した現在の機能への付加価値です。

 

 店舗で食事をすることには高い効用があり、選択された店舗が存続することは間違いがないとしても、環境変化により従来にはなかった価値を消費者が感じているとすれば、元には戻らないと考えるのが適当です。

 

 未来からみて、環境が元に戻ったときに、飲食業界はどのように変化するのかを考えなければなりません。

 

 店舗の形状や機能が変化したり、デリバリーの質が向上する、革新的な調理機器が生まれる、オンライン料理スクールや出張調理人の増加や資格制度が生まれる、冷凍食品のレベルが向上する、健康志向がより強化されるなどの仮説が設定できます。

 

 自社の強みを特定したうえで、未来から過去(現在)をみて、未来を到達点(A)とした、現状(S)とのギャップを確認(C)し、何をすべきかの解決策(S)を立てることが必要です(またまた計画を適切に立案するときのフレームワーク、ASCS[アスクス]の登場ですね)。

 

 そのうえで、これから自社は何をすべきなのかを考え仮説の検証を行なっていくのです。

 

 とはいっても、どのような業種でも、まずは自らの強みを意識しながら、経験したことのない危機である今を乗り越えるために、できる限りのことを行うことから始めるのが大事ですね。

 

 付加価値、企業力、顧客との接点を視点として工夫し、改善しながら行動し、顧客を増やし、リピート率を向上するとともに、単価を上げる(需要の価格弾力性が高い場合には単価を下げることが有効なケースがあります)、コストを逓減することへの取組みを行うことが、未来をつくる第一歩であることは間違いありません。

 

 新しい年を迎え、各人それぞれが、未来を見据えつつ、しかし今を乗り越えるために,

強みを活用した闘いをただちに開始する必要があります。

 

一年の計は年内にあり

 

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 あっという間の1年でした。早いですね。

 

 今年はいろいろあり、やらなければならないことで、できなかったことがありますが、それ以上に多くの皆さんと仕事ができたことにはとても感謝しています。

 

 ありがとうございました。

 

 さて、毎年年末になると考えることがあります。一年の計は元旦にあり、です。

 

 中国の明代に憑慶京が中国の伝統的な年中行事やしきたりをまとめた「月令広義」に、「一日の計は晨にあり、一年の計は春にあり」という一文があります。

 

 晨(あした)は=朝、春は正月で、1日の初めである朝や一年の初めである正月にこそ計画を立てるべきであると解説しています。

 

 これが、「一年の計は元旦にあり」の由来です。

 

 ただ、憑慶京の気持ちは分かりますが、一年を振り返り、何をするのかを考えるのは、新しい年が始まってからではなく、もっと前でなければならないと私は考えています。

 

 仕事納めが終ると家の用事で、あっという間に年末を迎え、そのまま寝て「おめでとうございます」と新年の挨拶をしている間に一日が過ぎてしまいます。

 結局は落ち着いて、元旦に計画を立てることができずに終わる可能性があるからです。

 

 なので、計画は年内に立てることが有効です。

 

 ここで、計画を立て、実行。チェックしながら修正して、成果を挙げるためにはPDCAサイクルを回すことが必要です。

 

 皆さんもそうして活動してきたと思います。

 

 私もうまくいかないこともありますが、そうやって今まで過ごしてきました。人生ってその繰り返しですよね。

 

 ところで、PDCAは随分前にデミングにより、品質管理の領域で考えられた製造業のフレームワークであり、なので変化のスピードが速い環境では、古くて使えない、これからはPDRだという意見が喧伝されています。

 

 しかし、そのことに私なりの意見があるので、今回はPDCAとPDRをテーマにします。

 

 PDCAの問題として、主にP(計画)が取り上げられます。

  1. 期間がながい
  2. 保守的になりやすい
  3. 前回を踏襲する傾向
  4. 設定した目標までの工程が描けていない
  5. 現状の把握ができていない

といったものです。

 

 そこで、ハーバードビジネススクールのリンダ・ヒルが考案したPDR(prep-do-review)が提示されます。

 

 PDRは、Prep(実行に向けた準備)、Do(実行)、Review(結果の見直しと学習)の3つを回し成果を挙げようという考え方です。

 

 日々のマネジメントは随時起こったことに反応すること。予想外のことも多く、その出来事にどのように対処するのか。

 年間計画ではなく、出来事を機会とみなして、随時改善を行おうというものです。

 

 PDCAを年間で立てているのでは遅すぎる、だからPDRだ、という至極当たり前のことを説明しています。

 

 しかし、PDRは無目的に、その場限りで行われるわけではなく、組織目標を達成するための適時の改善を行うものです。

 

 大きな目的を達成するPDCAのなかでのPDRであることを忘れてはなりません。 

 なので、PDCAとPDRを比較してPDCAは古い、ということは当りません。

 

 そもそも、PDCAのサイクルがながいというのは間違いで、1週間のPDCAもあるし、1日での設定もできます。

 期間は自分で決めればよく、瞬時の対応ができないという風潮(解釈)があるのはナンセンスです。

 

 目標も長期的に対応しなければならないものもあるし、短期間や超短期で達成可能なものもあり、説明したように随時生まれる課題を解決しなければならないこともあります。

 

 私の場合、例えばマネジメントソフトを開発するというときには半年、1年単位ですし、会社の決算は1年ですから少なくとも来期の目標を決めたら1ヶ月の振り返りをしながら戦略や戦術を変えたり行動を変えます。

 

 1年のPDCAのなかに小さなPDCAがあり、さらにそのプロセスのなかに日々のPDCAがあるので、多様なPDCAを扱いながら対応しているのです。

 

 今日これをやろうと決め、実行したらこんなことになった、それはこんな風に解決しよう。学んだ事は次に活かそうね、と仕事を進めます。

 

 PDRは、小さな日々のPDCAと同様であり、「結果の見直しと学習」というRが、チェックと修正のCとAに置き換わっただけと理解できます。

 

 ところでPDCAのP=plan(計画)の意味は「何らかのものごとを行うために、方法や手順を考え、企てること」を言います。

 

 preparation(準備)の意味「物事をする前に、あらかじめ必要なものをそろえたり態勢を整えたりして用意をすること」と比較すると、どうみても計画のほうが準備を尽くしている印象があります。

 

 概念的深さは、計画>準備でありPDCAのほうが大きいということが分かりますよね。

 

 ただ、現場で問題解決をするときには、仮説検証を、より頻回に速度を上げて、トライアンドエラーを繰り返しながら経験を積みましょう。

 そして、そこからできるだけ多くの知見を得て次に進んでいこう、という意味で、小さなPDCAを背景にもちつつPDRを意識して行動する、という考えも容認できます。

 

 意味は同じだけど、PDRとしたほうが成果を挙げやすいイメージをもてるのであれば活用する、ということです。PDRで説明されているように、細やかに問題対応を行うのです。

 

 例えば、ネガティブな出来事が起こったときに、何をしたいのか、誰が関与するのか、なぜそれが起こったのか、どうすればよいのかを考え実行する、といった具合です。

 

 チェックして修正するという大まかに感じるPDCAのCAよりはイメージ的に使い易いかもしれません。

 

 さて、他の指摘についても検証します。

  • Pは保守的になりやすい、とか
  • 前回を踏襲する傾向がある、
  • 設定した目標までの工程が描けていない

といったことは、運用の問題の最たる課題で、Pの設定をどのようにするのかの本質の問題です。経験上、あらゆる事態を想定して些細にPが設定されていれば、なんとか成果を挙げられるからです。

 

 また、現状の把握ができていない、という指摘については、私たちはPDCAがうまく運用できるようにASCS(アスクス)の概念を明らかにしています。

 

 到達点(Attainment)と現状(Staite)の明確化、ギャップの確認(Confirmation)、解決策(Solution)の検討を行いPにつなげましょう、と説明しているのです。

 

 何かをしようという到達点が曖昧でも、現状把握ができなくても、ギャップが明確にならないので解決策を適切に設定できません。

 

 また、多くの意見にあるように、仮説である解決策が肝であり、これがずさんだったり間違えているとPが不適格で、無駄なPDCAサイクルを回さなければなりません。

 

 ASCSを使ってPを決定し大きなPDCAと小さなPDCA、ときには比較的長いPDCAと短いPDCAを組み合わせて回すことが必要です。

 

 いずれにしても、PDCAは物事を達成するための原理原則であり、どのように運用するのかは使い手の問題だということが分かります。

 

 PDRについても、フレームワークとして利用するとき、結局のところ運用がうまくいかなければPDCAがうまく使えないというこたと同じ結果になります。

 

 PDCAにしてもPDRにしても、そのほかPDCAに代わるものとして提示されている、OODAやCAPD等についても同じ視点での検証が必要です。

 

 ここでは簡単な議論しかできませんでしたが、以上から理解できることは、次のことです。

 

  1. 来年の計画は年内に立てる
  2. PDCAのPのためのASCSを忘れない
  3. とりわけ、ASCSのSを熟考してPを決定する
  4. 大きなPDCAとそれを落し込んだ小さなPDCAを十分に回す
  5. PDCAの運用を適切に行う

 

 しばらく続きそうな厳しい時代を乗り越えるために今年をしっかりと振り返りましょう、課題を明らかにしたうえで、やらなければならないことや、やりたいことができるよう、年内に来年の計画を立てましょう、ということに落ち着きます。

 

 私もさっそく机に向かいたいと思います。

 

 

コロナをチャンスにする

 

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 新型コロナウィルスにより、社会生活や仕事が大きな制約を受けています。

 

 また、いくつかの業種は想像を絶する状況に直面し、多くの方々が塗炭の苦しみを味わっています。

 

 ただ、この時期に業容を拡大している事業もあり、悲喜こもごもではありますが、私たちは環境の変化に翻弄されることなく、前を向いて進み続けなければなりません。

 

 この時期、私たちは何をすればよいのでしょうか。

 

 ある意味、当然のことかもしれませんが、以下を検討します。 

  1. 自分や自社を分析する
  2. 突然の環境の変化への対策や準備ができてたかを反芻する
  3. 今行うべきことは何かを列挙する
  4. 優先順位をつけて3を開始する

  私たちは、この時期いくつもの悩みを抱えながら日々仕事や生活をしています。

 

 場合によれば、環境の制約のなかで、その日を乗り越えるのが精一杯という毎日もあります。

 

 ただ、実際のところ環境には大きな影響を受けていないにもかかわらず、何かをしようと決めても、時間がないと言い訳をしたり、コミュニケーションがとれないのは相手のせいと自分を慰めたり、一生懸命やっているんだから、との思いを免罪符にして行動しがちです。

 

 もちろん、そうではない人もたくさんいるでしょう。

 

 私は、前者をトラベラー(旅人)、後者をファーマーズ(農園主)と呼んでいます。

 

 トラベラーは、本当はここに行ってみたい、こんな旅をしたいという夢がありながら、他律的かつ、孤独で他者との関係性が薄いこともあり、どうしても自分の思いを実現できないでいる人です。

 

 実現できない何かが常態になり、自分には夢があることさえ忘れてしまい、今の位置に安住している可能性があります。

 

 ファーマーズは季節に合わせて作物をつくるだけではなく、次はこんなものをつくろう、こんな農法を使ってみよう、作物の売り先はここに、加工してみよう、直接消費者に販売してみようという日々が未来志向です。

 農家の信頼を集めて協力を得ながら、彼等へのメリットを提供し、自分のやりたいことを実現してきた人です。

 

 農業自体が常に環境との闘いである、という場に身を置いています。環境変化に敏感で新しいことへの取組みに躊躇していません。

 

 人はこの両面を持ち合わせて生活しています。完璧にトラベラー(T)、ファーマーズ(F)の片方に身を置く人はいないと思います。

 

 TとFの合計を100とした場合、トラベラーとファーマーズのどちらの割合が大きいかにより、環境変化に対する対応が異なります。

 

 これをFT指標と名付けています。FT指標=F÷Tで示されます。自分はいま、どこにいるのかを分析してみる必要があります。F50、T50としても指標は1。少なくとも1以上は欲しいですよね。

 

   FT指標をどのように高めていくのかは、未来志向か現状満足かの選択というテーマでもあります。

 

 ファーマーズでいえば、未来志向は地に足の着いた未来。文字通り地面に足がついています。土を触り、気候を知り、空気や水を肌で感じつつ、さらに先進的な農業のようにITやAIも活用し、ビジネスモデルも堅実です。

 

   なお、トラベラーの現状満足は、満足していないけれど自分の壁を乗り越えられないという意味での現状妥協=消極的満足も含めての満足をいっています。

 

 次に、2の検討です。

 

 突然の環境の変化への対策や準備ができていたかを反芻することは容易です。ほとんどの人はコロナにより、こうなることを予想できていなかったと思います。

 

 それさえできていない人や組織もたくさんありますが、地震や風水害、地域によれば噴火に備え、BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)を設定することが精一杯でした。

 

   WHOのテドロス事務局長が新型コロナウイルス感染症大流行は、「100年に1度の衛生上の危機」だと言いましたが、このような常軌を逸する状況を誰が予測できたでしょう。なので、これは仕方がないと考えなければなりません。

 

 ただ、少なくとも、何かの仕事をしていたときに、将来のリスクに対し自分に力をつける、組織にを強くする、そして自分自身や組織自体が常にトライしてきたのか、については反省しなければなりません。

 

   トラベラーは言うに及ばず、例えファーマーズであっても、行動や戦略が十分であったのかを振り返る必要があるのです。

 

  そして3つ目に、今行うべきことは何かを列挙します。

 既に、飲食でもネットでのオーダーによるデリバリーに力を入れたり、昼夜営業の二毛作に切り替える、冷凍食品として自動販売する、デリバリー専門の多店舗を配達機能を付けて開設するという活動が盛んです。

 

 また、その他の業種でも、EC強化、研究開発、設備投資、異業種への出向や、物流センターや量販での雇用、時間単位の副業への移行が行われています。

 

 もちろん人が移動しないことでの産業対策や、重要課題としてコロナ感染症患者の治療を行う医療機関の支援への徹底が渇望されているなど、個人や組織での対応が困難な事例も山積みです。

 

 しかし、そのなかでも少しでも前にという動きを個人や組織が行っていることも事実であり、皆が懸命な努力をしています。

 

 影響は受けつつも、コロナにダイレクトに接してはいない業種であっても、今のうちに、自分は

  • 個人の能力を高め、
  • 仕事に精通する
  • 工夫や創造を重ねる

とともに、組織としては、

  • 戦略を再構築し、
  • 業務改善を活用し、
  • システム化し、
  • 従業員を鼓舞しコミットメントを得て、
  • ガバナンス等、内部体制強化を図る

必要があります。

 

 闘いを伴う臥薪嘗胆の時期を越えれば間違いなく、明るい未来が来る、いや明るい未来をつくらなければ、ここから先の時代を描くことはできません。

 

 コロナが終息するのを、ただ、身をかがめ息をひそめてじっと待つだけでよいのか、トラベラーでい続けることで良いのかを熟考しなければなりません。

 

 再考しこれをしようと決めた、あるいは以前から決めていて実行できていなかったことを掘り起こし、FT指標をどれだけ高めていけるのかに果敢に挑戦する必要があります。

 

 優先順位をつけて、一つ一つの実効性を高める活動を開始しなければならないのです。

 

 コロナを奇貨として、自分自身のFT指標を高め、自分も組織も前に進む力を引き出すことが、今私たちが行わなければならない最大の事項であると考えています。

 

 私の周りには、それぞれの思いにより高いFT指標をもって日々挑戦し、今だからこそ行なうべきことに焦点を絞った活動をしている人達が数多くいます。

 

 現状を慮りながら、自分達が出来ることは何かを考え、未来を見据えて次のステップに進もうという気概をもった多くの人々により、必ず明日に続く道がつくられると、私は固く信じています。

大胆と繊細の共存

 

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 内心は分かりませんが、平気な顔をして、大きなことを何げなくやり通す人がいます。

 

 私自身は、何か壁にぶつかると気持ちが一瞬立ち止まってしまうことがよくあります。その後思い直し、何とか壁を乗り越えるよう最大の努力をもって取り組みは行うものの、大きなことを何げなくはやり通せない、という意味で大胆ではないと思っています。

 

 なので、大胆な人をとてもうらやましく感じます。

 

 とはいっても、大胆な人は、いくつかの類型に分れると考えています。

 

  1. 大胆なだけの人
  2. ときに大胆になれる人
  3. 繊細だけれども大胆に行動できる人

 

 大胆なだけの人は、相手のことを考えず、自分勝手に見えることもあるどちらかというと図太い人、図々しい人といわれる部類の人です。

 

 少なくとも社会では、こういう図々しいだけの、図太いタイプの人は生きていけません。

 

 次に、ときに大胆になれる人です。

 大胆には、度胸がすわっていること。思い切りよくやってのけることという意味もあり、こちらのタイプです。

 

 図々しいというのが性格というか、その人の属性に起因する態度であるとすれば、思いっきりよくやってのけることは、その人の思いによる行動だという印象があります。

 

 何か行動しなければならないときに、意図してこの場面では思いっきりよくやろうという具合です。

 

 思いっきりやることにより高い成果があがる、だからここはひとつやってみよう、という意識により動くという姿勢です。

 

 自分の性格がどうであれ、その場面場面でどう行動するのかを考えて行動するタイプといえます。

 

 その意味では一部繊細さ=細かいところに気を遣ううえで繊細さ=細かいところに気を遣うという気持ちも一部持ち合わせているかもしれません。

 

 3は、繊細だけれども大胆に行動できる人です。

 この人は2のタイプのように、場合により大胆にということではなく、いつも思いっきりよくことをすすめるタイプですが、常に繊細=こまやか、というスタンスをもっている人です。

 

 何をしたいのか、何が目的なのか、どうすれば最大の成果を挙げられるのかを考え、解法や代替案を策定し、最も有利なものを選択する姿勢があります。注意を払いこれだ、と決めたことに自信をもって、大胆に徹底して行動するのです。

 

 こうして考えると、大胆と繊細は対語ではなく、姿勢を表す言葉として共存することができます。

 

 こまやかに捉える領域と、そのうえで、やれることをやったという結果をもって思いっきり行動することは可能だという結論です。

 

 前提を整備せず、いつも大胆、ではうまくいくことも行かないこともあると思うし、ときには繊細というのもどこかにリスクがある。結局は、繊細かつ大胆に行動することがベストであると考えています。

 

 まさに「平気な顔をして、大きなことを何げなくやり通す人」は、たぶんこのタイプなのだと思います。

 

 ビジョナリーカンパニーの中で、著者のジムコリンズが「謙虚だが意思が強く、控えめだが大胆」という成功する、第五水準のリーダーを紹介していますが、通じるものがありそうです。

 

 判断を求められる職位や立場にある者は、経験や学習を通じて知恵を出し切れる自分づくりに励むとともに、常に情報を集め判断できるよう準備をしなければなりません。

 

 何かに直面し判断をしなければならないとき、当りに気を配り情報を分析し知恵を絞り最適解を得て、繊細だけれども大胆に行動できる人を目指し、これからも積極的に行動したいと考えています。

ネットワークの大切さ

 

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 ネットワークとは「網状につくられたもの」ですが、そこから「人と人のつながり」、すなわち人脈の意味で使われることがあります。

 

 そのネットワークは、社内と社外のつながりに区分されます。社内でも社外でも年齢や役職の上下に関係なく人脈が必要です。

 

 ここで、人脈は単なる「知り合い」ではなく、「つながり合い」を示しています。

 

 人脈を語るときの文脈は、人脈があることで仕事がうまく進むことに重きを置いているので、必然的に単なる知り合いだけでは足りない、と考えているのです。

 

 情報網の一つとして知り合っていて、何かを行うときに相互にメリットがあるので話しが進む、という事例もありますので、知り合いのレベルから何も生まれないということではありません。

 

 大企業で社内の知り合いであれば、「以前に関係したことがあり知っている」ことは、挨拶をしてこれから仕事を一緒に始めるよりは親近感が湧くというのは間違いありません。

 

 しかし、社外において名刺交換をしてアプリに登録をしているからといって、彼らに支援してもらいたい、というのはなかなか難しいと考えています。

 

 以前流行っていた異業種交流会の挨拶だけで、爾後一緒に仕事をするというケースは、実際のところ「先ほど説明した相互メリットがなければ)あまり多くはないのではないでしょうか。

 

 ということで、社内でも社外でも本当のつながり合いをつくろう、というテーマに辿り着きます。

 

 ネットワークを語るときは、「本当のつながり」をどれだけもっているかが対象になるのです。本当のつながりは相互信頼関係です。その裏側にはお世話になっているという感覚があります。

 

 ある企業の年間表彰で、いつもニコニコして控えめな経営企画室長が社長賞をとりました。

 実践力のある彼は、現場の社員が働き易いように、いつも問題を発見し、現場に入り支援をしていました。

 

 頼まれたことは自分のミッションの範囲ではないと考えても、徹底してやったし、頼まれていないことも現場から情報収集を行い、積極的に課題解決を行いました。

 

 結果、多くの社員から、彼にはお世話になり本当に感謝していると評価されたし、そのプロセスで働き易くなった社内は大いに盛り上がったのです。

 

 このケースは、単なるパフォーマンスではなく、その人の仕事に対する姿勢に起因するできごとであり、小さな組織でも同じ関係性はつくれます。

 

 社内のどんな仕事でも、依頼があったり気付きがあれば能動的に取り組み解決する、という姿勢や態度は、自らの成長を促し、信頼やその次のステージである信用、安心を得て、本当の「つながり合い」をもたらします。

 

 社外でも同じです。

 ただ、社外からの依頼であれば、自分にとっての本業があり、なんでもかんでも相談に乗ることは組織目的から逸脱する可能性もあります。

 

 しかし、許容される範囲で自分のできることは引き受けて支援する。その繰り返しが相手の心に響き、こちらに解決すべき課題があったときに、自分のために骨を折ってくれる背景をつくり出すのです。

 

 このような対応ができるためには、

  1. 本業に精通し比較優位をつくり評価される
  2. 仕事から得た知見を更にブラッシュアップし、どのようなことにも対応できる自分をつくる
  3. 何よりも誠実に生きる
  4. 人間力を磨く

ことが必要なのかもしれません。

 

 自分独りでできる仕事には限界があります。

 

 人は、社内であれ社外であれ、常に誰かに支援してもらい、また支援を行い仕事をしています。それぞれの特色を持ちながら協力し合い、人生や仕事の絵を描き続けているのです。

 

 その事実を深く心に刻み、経験を積み、自分ができることを増やしながら、相手のために行動する。そのことが、仕事を進めるうえで大切なことの重要な一つであることが分ります。

 

 益々厳しい時代を迎え、それぞれが自己鍛練した上で皆で助け合いながら新しい価値をつくりだせなければ、これから先の自分を思い描くことはできないと考えています。

 

 仕事を進める上で、社会人としてもっと言えば人として、ネットワークの大切さを認識し、決して手を抜かず、いまこそ億劫になりがちな自分の殻を破ることに、注意を振り向けなければなりません。